コロナをきっかけに転職理由に変化が生まれた
コロナの影響は、転職市場にも及んでいる。従来、やりがいのある仕事と自分の貢献度に見合う報酬を得ることが、転職する理由の王道であった。コロナは、全ての人の自由を奪い、仕事の計画やスケジュールにも多大な影響を与えた。自分の会社への貢献度や努力レベルが落ちたわけではないのに、報酬を大きく減らされてしまった人も多かっただろう。
コロナ以前の世の中では、正社員と非正規社員との間では、正社員のほうがある程度好待遇を担保されていた。しかし、コロナの影響が直撃した航空会社や旅行業界などの例を見れば、正社員であってもやりがいのある仕事や納得できる報酬は約束されないということを思い知った人も多いのではないだろうか。
これらのことから、今後転職先を選ぶ際は、やりがいのある仕事と納得のいく報酬だけで決めるのは不十分であるという認識が広がりつつあるようだ。
たとえば前述した副業規定と復職制度、この2つの重要性はコロナによってさらに高まった典型例である。このほかにも、在宅勤務に対応した様々な支援ツールや金銭面での補助にも注目は集まる。
社内ITをさらに高度化させて、業務の効率化やコスト削減を実現した仕事環境を提供できる会社は、理想的な転職先としてさらに注目を集めるようになるだろう。逆に、そうした環境整備が遅れる会社や、変化への理解に乏しい上司が多い会社は、優秀な人材を確保できないリスクが高まっているといえる。
コロナによって日本企業は古い慣習から脱する
2021年は、経営者側で解雇規制の緩和に関する議論や早期退職に関する議論も盛んとなっていた。コロナの影響で業績悪化が著しかった業界を中心に、給料に見合った働きをしない社員を抱え続けることはもう限界であるという声を上げたわけだが、この考え方は、他国に行けば全くの正論となる場合も少なくない。日本の慣習では、会社への貢献度が低い社員でも会社に留まることができてきたが、それも今後急速に変わっていくこともありうる。副業規定や復職制度、この2つが日本の企業社会が変化するきっかけとなる。コロナを機にした、こうした日本の就労環境や日本人の就労観の変化にはこれからも注目である。
※出典:OECD平均賃金国際比較(2020年)