亀山早苗の恋愛コラム

一回り年下彼との「10年不倫愛」が破局した。覚悟を決めて付き合いはじめたはずだけど…

既婚女性が年下彼とつきあうとき、多くは「いつか別れのときが来る」と覚悟を決めている。それでも実際に別れがやってくると、わかってはいても「一方的に断絶される」のはつらいものなのだろう。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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既婚女性が年下彼とつきあうとき、多くは「いつか別れのときが来る」と覚悟を決めている。それでも実際に別れがやってくると、心は乱れ、胸は痛く、日々が苦しい。わかっていても「一方的に断絶される」のはつらいものなのだろう。
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自然に自分らしさを見せることができた

「ひと回り下の彼とつきあい始めたのは35歳のとき。ひとり娘が小学校に上がったころでした」

サクラさん(46歳)は、遠い日を昨日のことのように話し始めた。

「仕事関係で知り合って、たまたま時間があいたときにお茶を飲みに行って。そこから音楽が好き、映画が好きと趣味が一致して、なぜかとんとんとつきあいが進んでしまったんです。私の心にブレーキをかけるものはなにもなかった」

彼女が結婚したのは27歳、夫は10歳年上だ。個人事業主の夫は時間の自由がきいたことから、子育てを一手に引き受けてくれた。料理も上手だし、娘は父親に懐いている。家族仲はよかったが、会社員のサクラさんは自分が娘と一緒にいられない時間が長いことから、「どこか夫に引け目を感じていた」という。

女性の家庭内の立場は複雑だ。夫に養われていれば経済的に負い目を感じ、自分が会社員として安定した収入を得ていても、今度は子どもと過ごす時間の少なさに引け目を覚える。万能でなければいけないと思うのは、本人のきまじめさからなのか社会の圧力なのか。

「夫の収入が不安定だから私は会社員をやめられない。そうでなくても仕事は私の支えでもありました。だけど家庭ではなんとなく寂しかったですね」

そんな彼女の心を埋めるように現れたのが、一回り年下の独身男性・テツオさんだった。娘の誕生以来、夫とはほとんど性的な関係もなくなっていたから、若い男性の肌を感じたとき、サクラさんはうれしかったという。

「私もまだ女でいていいんだ、と思いました。23歳のテツオは『大人のあなたが好き』と言ってくれた。少し背伸びしながら話を合わせてくれるテツオはかわいかった。でもときどき、男気を見せるんです。一緒に歩いていて急に自転車が飛び出してくると、ぱっと私の腕を引いて止まらせてくれたり、重そうだと思うと何も言わずに荷物を持ってくれたり。そんな彼の態度に惹かれました」

ただ、自分が彼から母親のように思われているのではないかと不安を覚えたこともある。夫が年上だから、それまで年のことなど気にしたことはなかった。いつでも夫より自分のほうが年下だから気が楽だったのだ。だがテツオさんには気を遣った。

「だからといって若作りをしたらかえっておかしいし。私が気にしているのを知って、テツオは『年齢なんてどうでもいいんです。僕はただサクラさんが好きなだけ。サクラさんが20歳でも70歳でも好きなんです』と、目に涙をためながら言いました。それからは年齢差を気にせず、彼に甘えたり逆に怒ったりと素直に自分を出せるようになった。夫には見せない面を彼には見せていたと思います」
 

別れ話を切り出されてカッコつけたけど……

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夫と娘にバレないよう、彼女は細心の注意を払いながら、彼との愛を重ねていった。彼女にとって、テツオさんはすでに日常に組み込まれていたから、彼と会えなくなる日がくることを想像できない日々もあった。

だが、彼が30歳になったころ、「結婚したい相手がいたら言ってね。私は邪魔しないから。覚悟してるから」と話した。彼の人生はまだこれからだと思ったからだ。

彼はそんなことを言わないでほしい、自分の愛は永遠だと断言した。

「そんなことはあり得ないけど、私はこれからもずっとつきあっていけたらいいなと淡い希望を抱いていました」

その3年後、彼は突然、別れを告げた。

「さらりと、本当にさらりと『ごめん、もうつきあっていけない』と。私は理由を聞きませんでした。わかった、とだけ言いました。彼は意外そうでしたが、涙ぐみながら『ありがとう』って。私は彼の手を握って『幸せな人生を歩んでね』と。それだけで10年の関係に終止符を打ちました。かっこつけたんです。プライドがずたずたになっているのを彼に見破られたくなかった。内心はボロボロでしたけど」

彼がその半年後に結婚したことを、彼女は仕事関係の知人から聞いた。そして体調を崩した。食べられない、眠れない日々が続き、受験を控えた娘に心配された。

「大丈夫と言いながら、キッチンの隅で涙を拭くこともありました。心身ともに弱っているけどとにかく家族に知られないよう、特に娘には心配させないよう気を配りました」

彼と別れて1年、今も彼のことを思い出しては胃がキリキリと痛むことがある。それでも必死に自分の足で立っている。

「本当は彼の胸ぐらをつかんで、別れたくない、あなたは私を愛していると言ったじゃない、あれは嘘だったのかと泣きたかった。わめいて暴れて彼を困らせたかった。それができればこんなに苦しくなかったと思う」

だが、彼女はそうできなかった。いや、そうしなかったのだ。自分のプライドを守るために。そして愛する彼を守るために。

サクラさんの恋愛は宝物かもしれない。誰にも知られず、彼をも困らせず、かっこよく別れたことを、彼女は誇りに思っていいのではないだろうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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