折半主義世代だから? デート代はきっちり割り勘
2年ほど前からマッチングアプリを使っているシノブさん(33歳)。コロナ禍になってからはさらに頻繁に利用するようになった。「この2年でつきあった人が3人います。いずれも長続きはしなかったんですが、原因は金銭感覚の違いですね」
シノブさんは、食品関係の会社で企画を担当している。同業者は避け、できれば手に職がある人をとエンジニアや士業などを「狙って」きた。
実際に男性に会ったのは、一昨年の12月初め。2歳年下のエンジニアだった。メッセージをやりとりしているうちに、好きな音楽や映画が似通っていることで意気投合、会って話したいと思うようになった。
「会って話しても印象は変わらず、彼から『つきあってほしい』と言われて即座にOK。次のデートではライブに行き、その次はクリスマスを一緒に過ごすなど順調につきあいが進んでいきました」
デート代は限りなく折半に近い状態だった。それはよしとしても、クリスマスディナーも折半、その夜に初めて行ったホテルも折半。これにシノブさんは少しクビをかしげた。
「記念のディナーとか、初ホテルとかが折半って、なんだか寂しい話じゃないですか? 私の上の世代なら男性が出して当然だと言うでしょうね。私は折半世代だけど、ここぞというときはやはり男性に出してほしい。それなりのお返しは別途するから。ロマンティックな気持ちになりたいときが女性にはあるのだから」
さりげなく彼の収入を探ると、どうやらシノブさんの1.5倍はありそう。だが彼には「奢る」「自分が全額支払う」という意識は皆無のよう。もしかしたら他にも女性がいるのかもしれないとシノブさんは疑った。だがカマをかけても彼は乗ってこない。
「シノブさんしかいない。本気だ、と言うばかり。だけど彼はひとり暮らしなのに部屋には招いてくれない。どうしてと聞いたら、汚くて恥ずかしいと。それでもいいと言ったら、ようやく部屋に入れてくれました。私はいろいろ食材を買っていって料理をしたんですが、彼はとうとうその食材については『いくらだった?』と聞いてくれなかった。
折半主義なら最後まで折半を貫いてほしかったですよね。なんだかばかばかしくなって連絡しなくなったら、彼からも来なくなった。その程度の関係だったんでしょうね」
マッチングアプリには恋のわくわく感が乏しいので、冷静なまま終わってしまったとシノブさんは振り返る。
士業の彼が取り出した財布に絶句!
コロナ禍に突入し、アプリで知り合ってもなかなかリアルで会おうという気になれなかったこの1年半。それでも今年の春頃に何度か会った人がいるとシノブさん。「メッセージだけのやりとりが2カ月ほど続いてようやく会った彼は、3歳年上の士業の方でした。この方とは奢ったり奢られたりがうまくいっていたんです。あるとき彼が買い物につきあってほしいと言い出して。セミナーの講師をするのでネクタイを買いたいんだけど自分のセンスに自信がないからと。
私はデパートにでも行くのかなと思ったら、なんと彼、激安量販店へ。いや、いいネクタイがほしいって言ってたじゃんと言ったら、ここで十分でしょって。勝負ネクタイだと言いながら、そういう感覚なのかと。しかもそのとき気づいたんですが、彼の財布、面ファスナーの安物だった」
高級なものを持てばいいというわけではないが、彼女いわく「財布やネクタイ、靴などはある程度のお金をかけたほうがいい。見栄ではなく社会人として」とのこと。
それでいて彼は、ゲームの課金が数万円になったなどと平然と言う。そのお金で財布を買えばいいのにと彼女は心の中でつぶやいたという。
「こういう人とも続かないですよね。どこにお金をかけるかは、そのまま価値観につながりますから」
そしてこの秋、また新たな出会いがあって、同い年の男性とつきあっている。
「私とのつきあいでケチらない、かといって盛らない、ごく自然体でいてくれる人がいいですよね。お金のかけどころも、今の彼は私とかけ離れていない。先日は『給料前で厳しいから、うちでパスタでも食べない?』と。食材は一緒に買いに行って彼が出してくれました。料理も上手だし、一緒にいてすごく気が楽な人。こういう人と自然に結婚まで結びつけばいいなあと思っています。まあ、今後、何があるかわかりませんが」
1カ月前にそう言っていた彼女だが、その2週間後、破局したと連絡があった。原因は「不明」。ある日突然連絡がなくなり、電話もメッセージも無視されているという。
「何か失礼なことでも言ったのかもしれませんが、私には思い当たることがなくて。言えばいいのに逃げるなんて卑怯ですよね。こういうのも本当に面倒。また新たな人を探します」
マッチングアプリで出会って結婚するカップルも多いが、一方でなかなか「マッチする」相手にめぐり会えないという声もよく聞く。恋愛のありようが、今、劇的に変化しているのかもしれない。