夫婦関係

50代女性の「性生活」は10年前と比較して変化した?いまこそ「性の意識改革」に取り組むべき理由

令和を生きるミドルエイジ女性の性生活は変化したのでしょうか。夫婦の関係性を「性」を通して考えるセックスレス改善専門家が最新の調査結果を読み解きながら、50代の男女に必要な「性の意識改革」の重要性についてお伝えします。

三松 真由美

執筆者:三松 真由美

夫婦関係ガイド

10年前と変わった? 50代ミドルエイジ女性の「性生活」  

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セックスレス改善カウンセリングを専門とする筆者は10年ほど前に、二極化する40代からの性欲をテーマにした記事を執筆し、膨大なアクセス数を得ました。

記事のなかでは、当時出版された『婦人公論別冊 快楽(けらく)白書2012』(中央公論社 ※当時)が40・50代のミドルエイジ女性を対象にした読者アンケートにも触れましたが、「人生にセックス、または性的な快感は必要ですか」というストレートな問いかけに対して8割が「YES / 必要」と回答していました。

あれから10年、令和を生きるミドルエイジ女性の性生活は変化したのでしょうか。株式会社TENGAが35~79歳までの男女500人に実施した「エイジングと性に関する調査」(2021年8月26日~8月27日、n=500人 ※男女250人ずつ)を読み解きながら、女性たちの意識の変化を考察します。
 

50代で「年に数回セックス」する男性は58%、女性は34%

まず注目したいのは、セックスの頻度に関する男女それぞれのアンケート結果です。

Q. セックスの平均的な回数をおしえてください(男性)
出典:月刊TENGA第40号

「セックスの平均的な回数をおしえてください」(n=男性250人)出典:月刊TENGA第40号

50代男性に着目すると「年に数回」以上する男性が58%、加齢とともに頻度は下がるものの60代で40%、70代でも20%にのぼります。続いて女性はどうでしょう。

Q. セックスの平均的な回数をおしえてください(女性)
出典:月刊TENGA第40号

「セックスの平均的な回数をおしえてください」(n=女性250人)出典:月刊TENGA第40号

男性と比較して全体的に頻度は低く、50代女性では「年に数回」以上セックスすると答えた女性は34%にとどまります。なぜ女性の方が2割も少ないのでしょう⁉

過去に「ED診療ガイドライン」の制作委員を経験したこともある筆者は、男性のED(勃起障害)によるセックスレスはED治療薬の普及で改善する(夫婦仲が安定している場合の話ですが……)と力説してきました。さらに近年の健康意識の高まりでタバコをやめ、ジムやジョギングなどの運動習慣が定着した50代男性も増え、EDのリスクも結果的に軽減したのではないでしょうか。

一方で妻側の本音はこうです。

「とんでもない。5年以上いたしてないのに今さら無理よ」
「夫の気持ちはうれしいけれど、自分のカラダに自信がない」
「最近、痛くてできなくなった」
「まったく濡れないので、1センチも入りません」

(「恋人・夫婦仲相談所」に寄せられた50代女性の声より)

もちろん、夫の浮気やモラハラ、仮面夫婦といった類の声もあるのですが、それは置いておくとして、50代ミドルエイジ女性のセックス回数が男性と比較して少ないのは、閉経、更年期障害、尿もれという身体の変化真っ最中世代ゆえの数値と推測できます。何度も言いますが、あくまでも夫婦仲が安定している場合の話です。
 

性欲減退は「性器官の衰え」だけが原因じゃない?

性器官の衰えを自覚すると、男女問わず「性の欲求」も減少します。

>>10年前と比較したミドルエイジ男女の「体の変化・症状」

女性はエストロゲン(女性らしさをつくるホルモン)の減少、男性はテストステロン(男らしさをつくるホルモン)の減少です。女性はエイジングを意識するこの時期、テストステロンが高くなり「性欲が増す」という説もありましたが、令和の今現在は忙しく働く女性が増え、恒常的に疲れていてそれどころではないようです。こうした“社会環境の変化”も、性欲に大いに関与するということです。

器質面では、女性の場合「セックスがしたくない、行為自体がつらい」という主訴で専門病院を受診すると、女性性機能障害(FSD)、閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)を告げられるかもしれません。

男性の場合は、早朝勃起しない、性交時に勃起しないという目に見える症状がEDと診断されますが、ここ数年、それに加えて男性更年期障害(LOH症候群)と診断する医師も増えています。

このように「○○症候群」という診断名を告げられる局面にいるミドルエイジのみなさん、ガッカリしている場合ではありません。
 

「激しい」だけがセックスではない

身体と性器官のエイジングを自然に受け入れるのも人生の選択です。

長年セックスレス問題に向き合ってきた筆者の持論は、一緒にいるパートナーに対して「男」「女」を意識してお互いに「素敵だ」と思いながら暮らすことで、より愛情深いものになるというものです。

今どきの若者言葉で表現すれば「胸キュン」のまま年を重ねる夫婦は、活力に満ちて、見た目も若々しい。これはなにも、ずっと挿入、オルガズム、射精ありきの「激しいセックス」があるという意味ではありません。セックスの定義を、自分たちで決めているのです。

男と女を意識した性的アクションで充分なのです。

例えば、おっぱいにキスする。太ももを撫でるだけ。行為はないが、お風呂でじゃれ合う。週に1回全裸で抱き合う……。互いを「異性」と認識できない夫婦にはハードルが高いともいえるこれらのアクションを通して、日常的に相手の心と体をいたわる気持ちが出てくるのです。

日々妻の(夫の)身体を触ることで愛着が湧き、そしてエロスの好循環が生まれます。

なにより、会話のときはちゃんと目を見る。自然と「ありがとう」と言える。どちらともなく率先して家事をする。理想的な夫婦のありかたです。
 

性生活の理想は「生涯ずっと」が最多

なお、今回の調査では「性生活は何歳までできるのが理想か」という問いに対して、「50代後半まで」が15%で2位、「生涯ずっと」が23%で1位。

>>詳細な調査データを見る

今や日本のセックスレス夫婦は51.9%(ジェクス ジャパンセックスサーベイ2020 / 日本家族計画協会)、半数以上におよびます。当然ながらミドルエイジになるにつれ比率は上がりますから、セックスを継続したくても「しない」カップルが増加しているのです。

40代までセックスがあったのに、ある日突然、妻に(夫に)「疲れてるから」と拒否されるようになる……。明日は我が身ととらえて、40代のうちから“性の意識改革”をする必要があります。

具体的になにが必要かといえば「パートナーとのコミュニケーション」が大事だという声が1位なのです。ありふれた日々の愛情は、寝室事情とつながっています。また調査結果ではコミュニケーションと同時に「無理しないこと」を女性の20%が挙げています。

Q. 性生活が満足度の高いものとなるため不可欠なことは何だと思いますか?​​​​
出典:月刊TENGA第40号

「セックスやマスターベーション等を含めた性生活が満足度の高いものとなるためには、どのようなことが不可欠だと思いますか?」(n=男女376人)出典:月刊TENGA第40号

まさに「痛い、濡れない、更年期障害の症状でやる気がない」、エイジングの現れです。妻がそういう世代だと知っているなら、夫は「挿入、オルガズム、射精」にこだわってはいけません。二人だけの持続可能なセックスを作り出せばいいのです。

SDGsの18個目の目標は「愛とセックス」を標語に、アフターコロナは意識高い系セックスを推進していきましょう。

>>その他の詳細な調査データを見る
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