1:『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドとサヨナラする最後の007です!今回の敵は邪悪なサフィン(ラミ・マレック)。ボンドの恋人マドレーヌ(レア・セドゥ)の父親に恨みを持つサフィンは、憎悪を肥大させ、細菌兵器を使い、邪魔をするボンドを奈落の底へ落としていくのです。前半はアクションに次ぐアクションで度肝を抜き、後半はドラマチックに盛り上げます。
ボンド役に決まった当初、ダニエルは「背が低い」とか「金髪のボンドなんて」とコテンパンに言われていましたが、渋くて人間味あふれるジェームズ・ボンドとして人気に! 青い瞳のボンドとお別れするのが寂しいです。最後の雄姿をぜひスクリーンで!
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ(2021年10月1日公開)
2:『護られなかった者たちへ』
佐藤健と阿部寛が出演する社会派ミステリー。原作は中山七里の同名小説です。東日本大震災から10年後、仙台で全身を縛られ餓死させられる連続殺人が起こります。容疑者は出所したばかりの利根(佐藤健)。笘篠刑事(阿部寛)は彼を追い詰めますが決定的な証拠が得られません。実はこの事件には震災で傷ついた者の憎しみが潜んでいました……。
まだ完全な日常を取り戻したとはいえず、被災地に深い傷を残した大震災。家族と離れ離れになった人たちの苦しみが、事件の引き金となってしまったのです。真犯人を推理するというより、震災はまだまだ終わっていないと考えさせられる骨太なミステリーです。
監督:瀬々敬久(2021年10月1日公開)
3:『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』
『ヒミズ』『冷たい熱帯魚』などを手がけた園子温監督のハリウッドデビュー作。銀行強盗のヒーロー(ニコラス・ケイジ)がサムライタウンの銀行襲撃に失敗。悪徳な支配者に捕らえられてしまいますが、町から脱出した彼の孫娘(ソフィア・ブテラ)を連れ戻すことを条件に解放されます。しかし、ヒーローが着せられたライダースーツには仕掛けがあり、ミッションに失敗すると、大爆破してしまうのです!
時代劇と西部劇が一体化したようなぶっ飛んだ舞台で展開されるバイオレンスアクション。フツーの人がいない、濃厚なキャラの男女が次々登場し、めっちゃおもしろい悪夢を見ている気分にさせられます。園監督作『冷たい熱帯魚』みたいに怖くないので、園子温ビギナーにオススメです。
監督:園子温(2021年10月8日公開)
4:『人と仕事』
有村架純と志尊淳が、エッセンシャルワーカーと呼ばれる介護福祉士や保育士などを取材する姿を追いかけたドキュメンタリー映画。もともと有村と志尊共演で保育士の映画を撮影するはずが、コロナ禍で中止に。そこでプロデューサーは急遽、同じキャストとスタッフで本作を作ることになったのです。志尊と有村はインタビューをするだけでなく、保育士の手伝いをするなどの体験を通して、コロナ禍における不安や俳優という仕事にどう向き合っていくのかについて正直に語っています。
映画の制作が中止になっても、ドキュメンタリーとして今の時代に必要な声を集めていくという、その心意気が素晴らしい作品です。
監督:森ガキ侑大(2021年10月8日より3週間限定公開)
5:『DUNE デューン 砂の惑星』
フランク・ハーバートのSF小説の金字塔をティモシー・シャラメ主演で映画化。宇宙帝国の皇帝の命令で、砂の惑星へと旅立つことになったポール(ティモシー・シャラメ)の一家。しかし、ポールは命を狙われ続け、戦いを余儀なくされ、特殊な能力を発揮し始めると同時に過酷な運命にあらがえなくなるのです。
本作は、ポールと一家が砂の惑星へと旅立つまでの出来事をつづったパート1。未来を見る能力のあるポールがたびたび夢で見る女性・チャニ(ゼンデイヤ)が、ポールの闘いにどう関わっていくのか。それがわかるのは、パート2からでしょう。まずはパート1で、ポールが辿る過酷な運命の始まりをぜひ! ティモシー・シャラメが壮大な映像世界に負けない美と存在感を放っています。
監督:ドゥニ・ヴィルヌーブ(2021年10月15日公開)
6:『最後の決闘裁判』
14世紀のフランスで実際に起こった謎めいた事件を3つの視点で描いた、巨匠リドリー・スコット監督作。騎士のジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)は、妻のマルグリット(ジョディ・カマー)から、夫の友人ジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)に襲われたという話を聞きます。彼はグリを問いつめますが、グリは否定。そしてこの一件は、決闘で勝利した者の主張が真実という決闘裁判へともつれ込むのです。
マット・デイモンとベン・アフレックが『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』以来、再びタッグを組んで脚本を執筆した本作。黒澤明監督の名作『羅生門』に影響を受けたマットは、一つの事件を3人の視点で描くという同じ手法で物語を構築しています。この映画でひときわ輝いているのは被害者であるマルグリット。女性が抑圧されていた時代に泣き寝入りをせず、命がけで自分の正しさを主張する姿に大感動です。
監督:リドリー・スコット(2021年10月15日公開)
7:『CUBE 一度入ったら、最後』
ビンチェンゾ・ナタリ監督の密室スリラー『CUBE』を菅田将暉主演でリメイク。箱に閉じ込められた人々の脱出劇を描いています。立方体キューブに閉じ込められた6人の男女。見ず知らずの6人は、職業も年齢もバラバラでした。彼らは箱から箱へと移動しながら脱出できる場所を探していくけれど、箱には罠が仕掛けられており、下手に移動すると罠が発動し殺されてしまうのです!
閉じ込められた人々を演じるのは菅田将暉、杏、岡田将生、斎藤工、吉田鋼太郎、田代輝。オリジナルでは閉じ込められた人の人物背景は詳しく明かされていなかったと思うのですが、本作はトラウマを抱えた人々の人生も映し出して、物語に厚みを加えています。
監督:清水康彦(2021年10月22日公開)
8:『ビルド・ア・ガール』
冴えない高校生女子が、音楽雑誌の毒舌ライターとして大成功していく姿と、その後の苦い青春を描いたポジティブでリアルな実話ベースの青春映画。ジョアンナ(ビーニー・フェルドスタイン)は貧しいけれど愛情深くユニークな家族と暮らしている16歳。学校ではイケてない女子でモヤモヤしていたけど、彼女は持ち前の文才を武器に音楽雑誌のライターに応募。積極的な取材と毒舌コラムで人気ライターになっていきます。でもちょっと天狗になりすぎて、愛する人達を傷つけてしまい……。
オリヴィア・ワイルド監督作『ブックスマート 卒業前夜のパーティデビュー』の演技が好評だったビーニー・フェルドスタイン演じる女子高生が、人気ライターになっていく姿をブラックユーモアを散りばめて描いています。人生経験が浅い女子高生を勘違いさせ、祭り上げるメディアの裏側を辛辣に描いているところも良いです。
監督:コーキー・ギェドロイツ(2021年10月22日公開)
9:『そして、バトンは渡された』
瀬尾まいこの同名原作を永野芽郁、石原さとみ主演で映画化。血のつながらない家族の愛情物語を意外性のあるユニークな演出で見せていく作品です。幼い頃、実の母を亡くした優子(永野芽郁)は、実の父とも離れ離れになり、血のつながらない森宮家で、森宮(田中圭)に大切に育てられて成長していきます。一方、梨花(石原さとみ)は、シングルファーザーの水戸(大森南朋)と結婚。彼の娘のみぃたん(稲垣来泉)とも仲良く、幸せに暮らしていましたが、ある日、水戸が夢を叶えるために海外へ。梨花とみぃたんは二人暮らしになるのですが……。
家族の絆は血のつながりが必須なのかというシビアな問いの答えを、ドラマチックに温かな家族物語として見せていく本作。この物語にはミステリーのようなトリックが仕掛けられており、伏線回収もお見事。最後に明らかになる真実にも愛情が溢れています。
監督:前田哲(2021年10月29日公開)
10:『老後の資金がありません!』
垣谷美雨の同名小説を天海祐希主演で映画化。人生100年時代、生きるためにはお金が必要。でもそんなお金はありませ~ん!さあ、どうする?というホームコメディです。篤子(天海祐希)は、夫(松重豊)の給料とパートで稼いだお金をやりくりして、将来のためにせっせと貯金をしていました。ところが夫の父が亡くなり、喪主としてお葬式のお金、突然結婚宣言をした娘の結婚式のお金など大金が飛んでいくことに。加えて贅沢好きな姑(草笛光子)が同居することになってしまい、もう大変!
節約主婦のギリギリ生活を描いていますが、天海祐希のスターパワーのせいか、正直リアリティはありません。けれど、貧しさがリアルすぎると見ていてしんどくなるので、お金はなくとも、家族みんなが笑顔で健康がいちばん!と思わせてくれるのがいい。贅沢な姑を演じる草笛光子が、本作の華として君臨しています。
監督:前田哲(2021年10月30日公開)
ほかにも『燃えよ剣』(岡田准一主演)『ひらいて』(山田杏奈、作間龍斗、芋生悠出演)などがあるのですが、この2本はジャニーズアイドルが出ているのでジャニーズ特集でご紹介します!
結構バラエティに富んだラインナップになりました。万全の感染対策をして、ぜひ劇場で観てくださいね!