<目次>
1.  中国で、「盲盒」が流行している
2.「盲盒」の愛好者は誰?
3.「盲盒」を買う行為が止められない原因
4.「盲盒×ネット」
5. 日本は中国の盲盒の流行をどう参考にできる?


1. 中国で、「盲盒」が流行している
 
中国北京にあるPOPMART店舗

中国北京にあるPOPMART店舗


中国では近年、盲盒(マンフェ゛ァ/ブラインドボックスの意味)がブームになりました。 Frost&Sullivanのレポートによると、盲盒を代表とする中国の「潮玩(チャオワン)」市場規模は2015年の63億元から、2019年の207億元を実現、2024年には763億元に達すると予測されています。
※潮玩(チャオワン):おもちゃと芸術作品の間、芸術性と設計思想が消費者の希望に沿う実体。
 
日本人がよく知っているガチャガチャや、新年の福袋と似て、中国の盲盒の中には、どんなおもちゃが入っているのか、ボックスを開ける前には誰もわからないです。盲盒を買う行為は依存性があるので、この小さいおもちゃを買う人がだんだん増えて、あっという間にこの産業が中国でビッグモンスターのように急速に発展しています。
 
日本に遅れ、中国では、1990年代「盲盒」のプロトタイプが出現し、2012年に盲盒の販売がスタート。2016年から各会社がこの市場に注力して、2019年から急上昇しました。もともとオンラインで活躍している潮玩市場は、2021年から、中国本土のコロナの封じ込めに成功した背景とともに、代表的な企業、例えば、「POP MART」、「52TOYS」、「TOPTOY」、「X11」、「ToyCity」、「酷楽潮玩」などは、中国の各大都市にチェーン店を次々とオープンして、2021年6月まで北京と上海のみで店舗数は1,300店を超えました。
POP MART SKULLPANDA シリーズ2

POP MART SKULLPANDA シリーズ2


2021年6月の大型オンライン販売バーゲン「618セール」でも、「盲盒」の存在感は強かったです。セール開始の最初の5分間、「POP MART」の限定「盲盒」商品が完売し、一時間で「POP MART」の売上は1794%増加しました。中国の物流会社「菜鳥」のデータによると、「618セール」のために流通した「盲盒」の在庫は1000%増加し、合計何百万トンの重さでした。
 
このように、小さいおもちゃの裏には、大きい市場が隠れています。「盲盒」ブームの裏では、どんな消費者が支えているのでしょうか?


2.「盲盒」の愛好者は誰?

iiMedia Researchのデータにより、盲盒のメイン消費者は「95後(ジゥウーホウ/1995年~1999年の間に生まれた人たちの意味)」、比率は38. 4%です。その中で10%の人は50個以上の盲盒のおもちゃを持っています。そして8.6%は定価1000元(約1万7100円)以上の盲盒も買います。また、「POP MART」社のレポートから、「POP MART」の消費者の中で、70%は女性です。女性消費者の職業構成について、「大都市OL」の人数が一番多く、次は「いい生活品質を追求する若いママ」と「Z世代女性」です。要するに、盲盒のお客様は若者です。
出典:data.iimedia.cn

出典:data.iimedia.cn


中国・北京在住の公務員、陳 丹さん(34歳、女性)はAll About Japanのインタビューを受け、盲盒とのストーリーを紹介してくれました。
 
陳さんは2021年8月、中国の大手オンラインモール「淘宝網(タオバオワン)」でキーホルダーを検索した時、世界名作「真珠の耳飾りの少女」の絵画デザインの飾りを偶然見つけ、その後、何回か検索してみて、それはPOP MARTの「LABUBU芸術精霊名画」という盲盒シリーズの一つということを発見しました。通常、POP MARTの盲盒は一つのシリーズの中に12種類のおもちゃがラインナップされていて、その中にはデザイン不明のシークレット種もあります。経済的に余裕があり、アート的なものが大好きな陳さんは、1種類ずつ買った場合のおもちゃの重複を避けたいと考え、このシリーズを1ボックスの形で買いました(1ボックス=12個の盲盒入り。12種、あるいは11種+シークレット1種。約1万2100円)。その日から、陳さんは盲盒の世界に没入して、各シリーズの盲盒のおもちゃを収集し始めました。
 
陳さんによると、普段彼女のように偶然に盲盒を買う人が少ないです、ほとんどのファンは友達などの紹介で購入し始めます。陳さんも自分のコレクションを各SNSで投稿して、それを見た友達も最近盲盒を買い始めました。
陳さんのコレクション(一部)

陳さんのコレクション(一部)


「毎日かわいいMollyを見て、うれしい」、盲盒を展示するため、専用棚を買ったと陳さんは言いました。大都市OLとして安定した収入をもらい、いろいろな物を買える余裕がある彼女ですが、その中でも盲盒を買うことによって何を求め始めているのでしょうか?


3.「盲盒」を買う行為が止められない原因

確かに、盲盒のおもちゃのデザインが良く、シリーズによって販売数も限っているので、かわいくてユニークな存在として、買う価値があるかもしれないですが、実際には飾る以外の実用性は特にありません。若者がたくさん買う裏には、心理的な原因が存在するかもしれません。
 
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まず、最近「悦己消費(ユェジーシァォフェイ)」という消費概念が中国で流行しています。「悦己」の意味は「自分を喜ばせる」で、特に若い女性が、ファッション、化粧品、ドラマ有料視聴、自宅用トレーニング器具、ペット用品などを購入することで、消費の快楽と満足感をもらうことを指します。美と健康はもちろん女性のメイン消費項目ですが、近年、潮玩も女性の目線に入りました。
 
精神病治療の専門家である北京大学の博士、姜思思先生は、盲盒購入行為は「悦己」の効果がある理由について、「オペラント条件づけ」(operant conditioning)という理論で解釈できると指摘しました。盲盒を開ける時にもらうのは、おもちゃだけでなく、心理的な「ご褒美」ももらいます。開けないとわからない予測不能な「ご褒美」は、購買行為を強化する作用があります。消費者は購買行為とその結果と関係を判断することができないため、購買行動は常に続く可能性があります。
POP MART SKULLPANDA シリーズ3

POP MART SKULLPANDA シリーズ3


次に、盲盒は「社交的通貨」の機能があります。POP MARTの社長、王寧さんは「盲盒を買った人たちは、自然に潮玩を中心とする社交的なグループを構築します」と言いました。確かに現在、中国のWeChat、Weibo、RedなどのSNSプラットフォームで、盲盒のために集まるユーザーたちは、購買経験の交流をしたり、重複のおもちゃを交換したり、自分のコレクションを展示したり、盲盒を開けるライブ配信を見たり、ディスカッションしたり……非常ににぎやかです。
 
特に、近年中国の「内巻(ネイジュェン)」現象が普遍になって、各業界で働いている若者はストレスや焦りがたまっています。年齢、職業と関係なく、同じ盲盒シリーズに興味を持っている人々が、仕事と家事から解放され、コミュニケーションをしながら、喜びだけでなく、新しい友達もできるかもしれないので、現実的な世界から逃げる効果もあります。
 
※内巻(ネイジュェン):非理性的な内部競争で、職場内、学校内、社会生活など、時を選ばずあらゆる所で出現し、社会経験の少ない若者たちをストレスで押しつぶそうとしているもの。(ノンフィクション作家・青樹明子)


4.「盲盒×ネット」

社交的な意義を持っている盲盒は、販売しているウェブサイトで存在しているだけではなく、各若者が集まっているSNSプラットフォームとフリマアプリなどでも活躍しています。
 Redで投稿した写真(出典:@空间摄影师赵赵、@Yokomega)

 Redで投稿した写真(出典:@空间摄影师赵赵、@Yokomega)


まず、盲盒をめぐるオンラインでの売り買いが盛んです。「開けると重複になってしまった」という場面にぶつかった人は少ないですが、重複になった時、フリマアプリでの「売り買い」活動も盛り上がっています。
 
2018年、中国版のメルカリとも呼ばれるXianYuで盲盒に関する取引は30万件以上になり、その中でも人気の盲盒キャラクター「Molly」は23万件以上を占めました。そして、様々な限定デザインやシークレット種も、フリマアプリで売る盲盒の単価を上げさせました。普段一つ59元(約1000円)の「The MONSTERS CARNIVAL SERIES」の盲盒は、そのシークレット種「マーメイド」が1899元(約3万2350円)と32倍の高値で売られました。またXianYuのニュースによると、ある取引アカウント(30代)は盲盒の「売り買い」を活用して、10万元(約170万円)の利益を得た件もあります。盲盒のファンだけでなく、フリマアプリプラットフォームやバイヤーなどもこの市場の ウォッチャーです。
シークレット種「マーメイド」(出典:Red@李式琪琪_)

シークレット種「マーメイド」(出典:Red@李式琪琪_)


次に、若い年齢層の人に影響力が大きいので、フリマアプリ以外の大手IT企業も殺到しました。
中国のインスタグラムと呼ばれるRed(小紅書)は2021年1月の一か月間に、盲盒に関連するノート(口コミ投稿)は1万8200本、それを読んで「いいね」ボタンを押した回数は191万4800回でした。
 
2021年2月、中国の春節を迎える際に、Redは「春節特別盲盒イベント——春節遊楽園」を開催しました。ユーザーがRedで友達招待など様々な活動に参加した後、オンラインで盲盒を抽選して、取集することができます。もし例の10種の盲盒を全部取集できたら、ユーザーは除夜の夜に3億元(約51億円)のお年玉を平等に分ける資格がもらえます。中国のショート動画アプリ「快手(クアイショウ)」などのネット企業でも、盲盒とコラボレーションをして、ユーザーのアクティビティを向上させる多様なイベントを開催しました。
Red「春節特別盲盒イベント――春節遊楽園」の宣伝用ポスター

Red「春節特別盲盒イベント――春節遊楽園」の宣伝用ポスター


また、潮玩産業は中国のネット技術と密着し、様々な新しい販売モデルも試行しています。以上のオンラインイベントは特例ではないかもしれないですが、潮玩市場をめぐるWeChatのミニアプリ開発は唯一無二だと言っても過言ではありません。
 
WeChatのミニアプリはWeChatの傘下にあるインストール不要の軽量アプリです。各企業はミニアプリを制作し、独自の強みを発揮することができます。例えば、「潮玩族(チャオワンズー)」は盲盒ファンが求めたい機能をすべて集約しているミニアプリです。各ブランドの盲盒の売り買い、交流フォーラムの機能はもちろん、店舗に行く必要もなく、オンラインで心理テストみたいな項目を選択して、自分が気になる盲盒シリーズを見つけることができます。ユーザーはWeChat内で簡単に「潮玩族」に訪問でき、そして「潮玩族」での個人行為を簡単にポスター制作でき、一瞬でWeChat内でシェアすることできます。
 
ほぼすべての中国人が持っている国民的なSNS——WeChatで、こういうミニアプリの影響力は小さいといえないです。また、意気投合したユーザーたちがWeChatグループを作り、グループ内でチャットや最新情報などを共有します。2021年8月のニュースによると、こういうユーザーたちが作った潮玩の同好グループは3万を超え、毎日約1万回以上の「このミニアプリをシェアする」行為が発生しています。ミニアプリを経由して、精確にターゲットユーザーに宣伝できるため、伝統的な広告手段より、各盲盒ブランドの商品情報の拡散と知名度が上がる効率性がより高いかもしれません。
WeChatのミニアプリ「潮玩族」

        WeChatのミニアプリ「潮玩族」


また、WeChatのミニアプリも盲盒の販売に新提案を提出しました。盲盒を買うことはもちろん、ユーザーはオンラインで盲盒を開けて、おもちゃ自体を確認することが可能です。オンライン決済済み後、かわいい画面と動画をみながら、盲盒をオープンするドキドキする感覚で、スマホゲームのSSRカード(ゲーム上でなかなか手に入れることができない、貴重なアイテムやキャラ)の抽選みたいに確認できます。またオンライン限定クーポン券や、何回やったら一回無料などのキャンペーンもあるので、大都市OLの陳さんは「あっという間にたくさんの盲盒を買いました」と言いました。オンラインで買った盲盒は2、3日後自宅に郵送されます。
 
POP MART社2020年の財務報表によると、POP MARTの公式WeChatミニアプリ「抽盒機(チョウフェ゛ァジー)」の売上は4億6600万元(約79億5000万円)、2019年より72%増加し、全体の売上の約20%を占めました。また、「抽盒機」で買い物をしたユーザーは、決済した後POP MART社の公式WeChatグループのQRコードを読み取ることもできます。つまり、POP MART社は「抽盒機」からユーザーを集め、非常に少ないスタッフを雇用し、WeChatグループ内で直接たくさんのお客様へ在庫情報や新商品情報を伝えることができます。現在、こういう公式グループがすでに800以上存在しています。つまり、POP MART社は10万人超えのターゲットユーザーと一瞬で連絡が取れるのです。
陳さんがオンラインで買った盲盒が届きました

陳さんがオンラインで買った盲盒が届きました


5. 日本は中国の盲盒の流行をどう参考にできる?

盲盒を買った人々は、どんなシリーズを選ぶのかには理由があります。大都市OLの陳さんのようなアート好きな女性は、「真珠の耳飾りの少女」に惹かれてから、ユニークなデザインの潮玩を収集しています。最近、「Harry Potter」シリーズの盲盒が話題になり、この小説のファンたちは、いままで買った経験がなくても、いま興味津々で買ってみたい人がたくさん現れています。潮玩市場のキーワードは、おもちゃ自体ではなく、おもちゃが代表しているIP(コンテンツ)が重要だと考えられます。
出典:Red@春田花花幼儿园园花

出典:Red@春田花花幼儿园园花


現在、中国の潮玩市場は、さらに多くの新しいキャラクターやデザインを開発することより、第三者IPを活用する傾向があります。第三者キャラクターの知名度がすでに存在するため、効率的でより多くの消費者を引き付ける可能性があります。
 
例えば、女性消費者に人気がある「Molly」のことは、男性はよくわからないですが、「ナルト」、「ワンピース」、「ウルトラマン」のことはわかります。日本のアニメ、漫画などは中国で知名度が高いため、中国の潮玩市場はこういうIP資源をおもちゃにするニーズがあります。日本企業はこういうIPを経由して中国の潮玩市場に進出することも可能です。
 
ちなみに、中国のWeChatミニアプリの様々な新発想のように、開発・宣伝コストを大きく抑えられるミニアプリ技術を日本でより普及して、特にこのコロナ禍時代により便利なサービスや、面白い機能などを提供することができれば、有意義のことだと思います。
 
要するに、「人生は、ひと箱分のチョコレートみたいなものよ、何が起こるかわからないの」のように、日本独特な「盲盒」、あるいは「潮玩」市場を開発できれば、サプライズもあるかもしれないです。
Disney シリーズ

 

執筆者:王 黛青(All About Japan 簡体字 編集リーダー)
 
【All About Japan編集部記事について】
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