GIGAスクール構想における課題、家庭で必要なサポートや事前準備とは?
家族の協力が不可欠な、小学生のオンライン授業。まだ始まったばかりの取り組みですから、うまくいかせるためには、「パーフェクトを目指さない」のも大切です
けれども、残る3.9%は「端末の需給状況の逼迫」や「必要な台数を整備する予算の確保ができなかった」などを理由に整備が遅れています。また、学校と自宅等を結んだオンライン授業等のための環境整備についても、「必ずしも十分ではない地域や学校があることもわかっている」(※2)など、課題は少なくありません。すでに経験したオンライン授業に不安や不満のあった保護者の方もいらっしゃるでしょう。
ICTをどう活用するかは、自治体や学校、さらには先生によっても大きな差がありますが、家庭でもオンライン授業について事前に知識を得ることで、いつ、どんなフォローが必要なのかがわかり、見通しが立てやすくなります。
この記事では、少しでもスムーズに気持ちよくオンライン授業に取り組めるよう、知っておきたいことや家庭でできる準備、小学生のサポートなどについてご説明していきます。
リアルタイム、オンデマンド…… オンライン授業にも種類がある
オンライン授業にも、いろいろな種類があります。たとえば、ZoomやGoogle Meetなどを使った、リアルタイムで子どもも参加できる「同時双方向型授業」、動画コンテンツを配信し、子どもがそれを視聴する「オンデマンド授業」など。また、自宅や保健室などから授業を受けることができる、教室での対面授業とオンライン同時双方向のハイブリッド型に取り組んでいる学校もあります。
さらに、授業支援システム「ロイロノート」やタブレット学習ソフト「ミライシード」などを利用して、課題の配布・提出などを中心に行うことも、オンライン授業に含まれます。
最初に確認、インターネットに関すること
1. Wi-Fiオンライン授業(特に同時双方向型)は通信量が多いため、安定したインターネット環境が必要です。同時に複数の端末を使うことで、映像が止まったり接続が切れたりすることもありますから、注意しましょう。モバイルWi-Fiルーターを貸し出してくれる学校もあります。
2. セキュリティ対策
子ども本人が、ICTの仕組みやインターネットを使用するときのルールを、最低限でも理解することが必要です。
『ネットのルール』(学校では教えてくれない大切なことシリーズ、旺文社)など、マンガが多いものは気軽に読めますし、話題の『まんが こども六法 開廷! こども裁判』(講談社)でも、インターネットに関する問題が取り上げられています。 2021年9月に明らかになった、東京都町田市の小学校6年生の女の子がいじめを受けたという内容の遺書を残して命を絶った事件(2020年11月)で、タブレットがいじめに使われたという疑いが指摘され、心配になった保護者も多いのではないでしょうか。
貸与される端末の使用制限は、学校や自治体によって異なりますから、家庭での注意も必要です。ルールで禁止されていても、設定上制限されていなければ、子どもが自分の好きなように使ってしまうこともあるでしょう。モラルやリスクについて、家庭でもしっかりと教えていきたいものです。
また、大人が使っている端末を共用するなら、個人情報の流出や不正サイトへのアクセスを防げるよう、フィルタリングの設定を見直しましょう。
3. オンライン授業で使用する端末(購入するとき)
学校から端末の貸与がなく新たに購入するなら、どんなものがいいのか学校に確認してみるのがおすすめです。授業支援システムは、タッチ操作を前提としていることが多く、パソコンでは使いづらいことがあるからです。
事前の練習は、家族そろって
オンライン授業の練習は、家族全員で! 同時接続や生活音の問題などを見つけやすいからです
また、練習のメリットには「慣れ」もあります。子どもがオンラインの雰囲気に委縮してしまうことも減りますし、相手の声が聞こえない、画面の映像が静止するなど、よくあるトラブルにも落ち着いて対処できるようになります。そういう意味では、学校で使っている端末を持ち帰れない場合も、自宅にある端末で操作方法に慣れておくと安心です。
家族みんなが在宅に! 場所がないときはどうする?
オンライン授業は、「集中できる別室で」「教科書・ノート・端末を置ける大きな机で」「余計なものが目に入らないように」といわれますが、実際には、幼児や低学年の小学生の場合、リビングで親が操作をフォローしたり、専用スペースがとれなかったりすることもあるでしょう。パーフェクトを目指さず、家庭、個人それぞれの事情や好みを考慮して、できる範囲でよりよい環境を作っていけばいいと思います。
在宅の家族が多く、1人1台・1部屋が難しい場合、家族の予定を共有するのがおすすめです。会議や同時双方向型授業などの動かせない予定の有無、どの端末でどこで視聴するのか、サポートが必要な場合は誰がするのか、を事前に確認しておきます。
「会議・同時双方向型授業」「集中したいとき」用の優先スペースを作ったり、パーテーションや区切るタイプのデスクを使ったりしてもよいですね。家族の声や生活音を拾いにくいマイク、イヤホンなども便利です。
小学校の先生方によると、きょうだいが同室・同時刻で授業を受けるときは、ダイニングテーブルとローテーブルなど高低差を付けたり、お互いが見えないよう背中合わせにしたりすると集中しやすいそうです。学校によっては、在学中のきょうだいで双方向の授業が重ならないように時間割を組んでくれることもあるので、相談してみてもよいでしょう。
オンライン授業あるある! お悩み別Q&A
ここからは、オンライン授業についてのお悩みにお答えしていきます。Q. 授業を聞きません。
A. 頭ごなしにしからず、まずは理由を聞いてみてください。そもそも小学生にとって「自宅で、一人で、意欲や集中力を切らさず学ぶ」のは、とても難しいもの。少しでもできたことは、ぜひほめてください。
授業と生活とをうまく切り替えられないときは、授業開始の少し前にアラームをセットしたり、軽く体を動かしておいたりするのも、おすすめです。
Q. オンデマンドの授業動画に飽きてしまいます。
A. 授業の内容・雰囲気・レベルによっては、最後まで見続けられないこともあるようです。塾などのオンライン授業やYouTubeを見慣れていると、単調に感じてしまうのかもしれません。
その場合は、一旦動画を止めて問題を解く時間を入れるなど、自分でペースを作ってみてください(もし質問したいのに、質問できる環境が用意されていない場合は、先生に相談してみましょう)。
ちなみに、動画配信のための授業は通常の対面授業とは異なりますから、先生方は、進め方や説明、質問の仕方など全てを工夫しているはずです。録画も編集も必要です。少しでもよい授業を届けようと、熱心に取り組んでいる先生も多くいらっしゃるのです。
一本の動画が配信されるまでの背景について親子で話したり、子どもに先生として習ったことを活かした授業をしてもらい、それを録画してみたりすると、学びが深まるだけでなく、動画を見る目も変わるかもしれません。
Q. 子どもに付きっきりになれません。
A. 簡易的なものでも時間割を作ると、一日の流れが可視化されてメリハリがつけやすくなります。学校の授業や課題が少ないときは、時間割に図工や書写など手を動かす科目や、家庭内係活動、子どもが好きな遊びなどを入れると、子どもにも喜ばれます。テレビの教育番組や学習マンガなども上手に活用しましょう。
保護者が在宅でないなどなんらかの事情がある場合は、学校で受け入れてもらえる場合もあります。「学童が始まる時間まで」「低学年のみ」などの条件があることもありますが、学校や自治体に確認してみてください。
Q. 子ども部屋や机などの環境を整えたのに、ソファなどそのとき好きな場所でやりたがります。
オンライン授業は勉強机やダイニングテーブルで受けるのが理想ですが、場所を変えるのは気分転換にもなります。朝の会や健康観察など、条件付きでお子さんの好きな場所でさせてあげても
ただし、画面に余計なものを映り込ませないようにすることは、教えましょう。子ども本人だけでなく、家族のプライバシーを守る必要がありますし、参加している他の子の気が散るのを防ぐこともできます。
Q. ICTやオンライン授業に心理的な抵抗があります。
A. 何についてもメリット・デメリットはあるものですが、今後も教育のデジタル化は進んでいくでしょう。オンライン授業には、学級閉鎖、不登校、家庭の事情などに対応できるという利点もあります。
今は、多くのメディアでICTを活用した授業が紹介されているため、そういったものを見てみてはいかがでしょうか? たとえば長野県では「GIGAスクール 長野県ポータルサイト」で、さまざまな事例を公開しています。ICTの可能性を知ることで、前向きに考えられるようになるかもしれません。
Q. 身体への負担が心配です。
A. 基本的なことですが、適度に休憩をとる、遠くを見るのは大切です。軽く身体を動かすのは、負担を減らせるだけではなく、気分転換になり、集中力維持にも役立ちます。また、ブルーライトカットメガネや、PCやタブレット用のスタンドも、身体への負担を減らしてくれます。
【参考情報】
※1:「GIGAスクール構想の実現に向けた端末の利活用等に関する状況(令和3年7月末時点)(速報値)」(文部科学省、2021年8月)
※2:「(事務連絡)やむを得ず学校に登校できない児童生徒等へのICTを活用した学習指導等について」(文部科学省、2021年8月)