増加額は2期連続100兆円超え
日本銀行が四半期ごとに公表している資金循環統計によれば、2021年6月末時点の家計が保有する金融資産額は1992兆円と過去最高額を4期連続更新しています。1年前の2020年6月末と比較すると119兆円の増加となっています。昨年の3月末、6月末は新型コロナの影響が大きかったことから、2期連続して100兆円を超える増加となっています。2期連続して100兆円超えの大幅な増加となった背景には、世界的な株価上昇により株式や投資信託の評価益が膨らんだことに加え、6月はボーナス支給月だったことから現金・預金も大幅に増えたことがあります。コロナ禍で消費が落ち込んでいる分、消費に回るお金が現金・預金に積みあがっていることも家計の金融資産額を大きく増やしたことに影響していると考えられます。
株式の増加率は2期連続30%以上
それでは2021年6月末の家計が保有する金融資産額の内訳を見ていくことにしましょう。家計が保有する現金・預金は1年前の2020年6月末と比較すると4.0%増加して1072兆円になりました。昨年6月末以降、増加率は4.0%以上が4期続いていることから、新型コロナの影響で消費の抑制が現金・預金の大幅増にかなりの影響を与えていることがわかります。2020年3月末まででも現金・預金はほぼ毎期増加しているのですが、増加率は2.0%前後に過ぎませんでした。ところがコロナ禍で増加率はほぼ倍、金額にすると20兆円前後も残高が余計に積みあがっていることになります。余計に積みあがった分は消費、あるいは投資などに今後まわるのか、それとも積みあがったままなのか注視したいところです。
株式の残高は世界的な株価の大幅な上昇により2020年6月末と比較すると30.0%増加して210兆円になりました。投資信託は同28.7%増加の89兆円となり、過去最高額を更新しています。合わせて299兆円とあと少しで300兆円に乗せるところでした。2年前の「老後資金2000万円問題」以降、若年層が資産形成に目覚め、かつ新型コロナで時間ができたことから証券会社の口座開設が大幅に増加していることを考えれば、次回には300兆円乗せとなっているのではないでしょうか。
それでも個人の金融資産全体に占める割合は、株式と投資信託を合わせて15%に過ぎません。株価が上昇して消費に与える影響を資産効果と呼びますが、金融資産全体の15%の割合では、その効果は日本では大したことはないといえるでしょう。
債務証券(債券)の残高は2020年6月末と比較して0.8%増加し、その残高は27兆円でした。超低金利の長期化で金利に魅力がないことから、残高が目に見えて増える状況にはありません。
保険・年金・定型保証の残高は2020年6月末と比較して1.5%増加の538兆円になっています。うち保険は同0.9%増の378兆円でした。保険の増加率は前回、2021年3月末が久し振りに1.0%超えとなったのですが、再び1.0%割れとなっています。貯蓄型保険の販売が苦戦していることが影響していると考えられます。
世界的な株高で家計の金融資産額は初の2000兆円乗せが期待されましたが、次回以降に持ち越しとなりました。ただ、9月に入り日本株が急騰している一方、金融事態宣言が一部都府県に出されていることから、消費の抑制は続いています。株式と投資信託が全資産に占める割合は低くとも、現金・預金の増加が牽引して2021年9月末には2000兆円に乗せるかもしれません。気になるのはボーナスによる上乗せ効果がないことでしょうか。
【関連記事をチェック!】
家計の金融資産は2000兆円に届かずも過去最高に?
2021年・夏のボーナスキャンペーンはメガバンクの100倍の金利!
75歳から年金を受給すると、本当にお得なの? 繰下げ受給のメリットとデメリット