子育て

公園の禁止事項が「道路族」を増やす?スケートボードから考える、子どもの健全な遊び場

今注目のスケートボードから、子どもの遊び場について考えます。ボール投げや大声などが禁止されている公園、また交通事故・道路族などの問題、自治体の対策、誰も排除しないインクルーシブな公園づくりについて考えていきましょう。

高橋 真生

執筆者:高橋 真生

子育て・教育ガイド

今注目のスケートボードから考える、子どもの遊び場

東京五輪で正式種目となったスケートボード。堀米雄斗選手や西矢椛選手など日本人選手が大活躍し、注目を集めました。楽しそうでかっこいい選手たちの姿は印象的で、SNSでは体験教室や2歳から乗れるスケートボード「Ookkie」が話題となっています。
スケートボード禁止の看板

注目を集めるスケートボードですが、遊び(練習)場所の確保が難しく、騒音や路上での事故などさまざまな問題を抱えています。

一方で、練習や遊ぶ場所の確保が難しいスケートボードは、騒音や路上での事故などさまざまな問題を抱えています。そこでスケートボードやキックボードから、子どもの遊び場や公園の問題について考えていきます。
 

くり返し発生する、スケートボードの事故

スケートボード・キックボード・ローラースケートといった車輪の付いた遊具は、走行することができ、かなりのスピードも出せますが、軽車両ではないため道路での使用はできません。

警察庁では、子ども交通安全情報として「道路でやってはいけません ローラースケート・スケートボード・キックスケーターなど」(2020年8月発行)をホームページに掲載していますし、多くの自治体でも、ホームページや現地の看板などで、道路で遊ぶことの危険性について訴えています。
子ども交通安全情報(警視庁・2020年8月発行)

子ども交通安全情報「道路でやってはいけません ローラースケート・スケートボード・キックスケーターなど」(警視庁・2020年8月発行)

けれども、公共の場や公道での問題や事故は、後を絶ちません。

2020年6月には世田谷区の交差点で、幼稚園に通う男の子が、スケートボードに腹ばいで乗っていて、自動車に轢かれ亡くなりました。キックスケーターについても、10歳以下の子どもが死傷する事故がくり返し発生しています。

大人についても、スケートボードで夜間の駅前やオフィス街の歩道を滑る人も多く、騒音・禁止区域への立ち入り・路面や備品の損傷・ゴミの散らかしなど、各地で問題が相次いでいます。2021年3月には、錦帯橋(山口県岩国市)をスケートボードで傷つけたとして、当時19歳の少年が、文化財保護法違反の疑いで書類送検されています。

また、同年8月、新宿区の都道で電動キックボードを無免許で運転、人身事故を起こしたとして、23歳の女性が自動車運転処罰法違反などの疑いで書類送検されるという事件がありました。
 

子どもが安全に遊ぶために、今すぐ親ができること

現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、休園・休校になったり、公園そのものが使えなくなったりしています。それらが及ぼす、子どもの心身への悪影響は確かに心配です。

けれども、路上での遊びは、自分の命だけでなく、他人の命や大切なものも危険にさらします。スケートボードで歩行者にぶつかって怪我をさせてしまったり、投げたボールが何かを壊してしまったりしたときに、「子どもだから」は通用しないということを、まずは保護者が認識すべきです。

そして子どもには必ず、「公道・駐車場では遊ばない」「車の近くにしゃがみこまない、立ち止まらない」ということを教えておきましょう。これには、自宅前や自宅敷地内駐車場も含みます。子どもを車に乗せて、小さな子が運転手の死角に入ってしまうことを教えると効果的です。

また、スケートボードやキックスケーター、ボールなどについて、遊んでいい場所・いけない場所を確認しましょう。特にスケートボードは、ヘルメット、ひじ・ひざ・手首のプロテクターを使用すること。正式な競技でも、18歳以下は必ずヘルメットを着用します。

特に小学生になると、保護者の目の届かない場所で遊ぶことも増えますが、時々は子どもの様子を見ることをおすすめします。遊び場や遊び方について、注意した方がいいことが見つかることがあるかもしれません。
 

遊ぶ場所がない! 禁止事項と不審者の多い公園が「道路族」を増やす?

近年では、住民の迷惑を顧みずに路上で遊んだり、騒いだりすることをくり返す子どもたちとその保護者たちを指す「道路族」も関心を集めており、インターネット上に公開されている「道路族マップ」ではトラブルの情報が共有されています。

夜遅くまでの大騒ぎ、敷地内への侵入、自動車などの損傷など、日常的に行われる道路族の迷惑行為が原因により、引っ越しをしたり心身に不調をきたしたりしてしまった人の体験談は、枚挙にいとまがありません。

それらは決して許されることではありませんが、道路族とまではいかなくとも、「人も車も来ない道だから」「少しだけだから」と、子どもを遊ばせてしまったことのある保護者もいるでしょう。

では、なぜ道路で遊んでしまうのでしょうか。

今、特に都市部で、注意・禁止事項の多い公園が増えています。スケートボードやボール遊びなど、他の利用者や近隣の住民の迷惑になりがちな遊びを禁止している公園は多いでしょう。

遊具は、子どもの死傷事故をきっかけに少しずつ撤去されてきましたが、残っていたものが、新型コロナウイルス感染拡大防止を理由に、使用禁止になってしまうようなこともあります。
公園の使用禁止の遊具

子どもの死傷事故をきっかけに少しずつ撤去されてきた遊具。残っているものが、新型コロナウイルス感染拡大防止を理由に、使用禁止になることも

そして、石を拾ったり、追いかけっこをしたり、遊具や道具を使わない遊びを子どもたちが始めても、その声がうるさいと「大声」が禁止される―― つまり、公園で自由に遊ぶことが難しくなっているのです。

また、地域によりますが、子どもの入園・入学を機に地域の防犯情報メールサービスなどに登録して、不審者情報のあまりの多さに驚いたということはよく耳にします。公園や公園への往復での安全確保ができない場合、その公園は利用しづらいでしょう。

さらに、わずかな時間でも思い切り身体を動かしたいという子にとっては、公園が近くにないことが、利用の妨げになります。学校からの帰宅時間は学年が上がるほど遅くなりますし、塾や習い事も増えていきます。遠くの公園まで行くには、子どもの時間的余裕がありません。

「家の近くに」「安心して」「思い切り」遊べる公園がほしい、というのは、子どもだけでなく、子どもに関わる多くの大人の希望でもあるでしょうし、子どもが安心して遊べる場を確保するのも、大人の責任の一つだと言えます。
 

新しい公園へ、動く自治体

2013年4月に「千代田区子どもの遊び場に関する基本条例」が施行された千代田区では、ボランティアがプレイリーダーとして、遊び場の安全管理や、道具の貸し出しなどを行っています(※1)。神奈川県大和市でも、2017年4月に「大和市子どもの外遊びに関する基本条例」が施行されていますが、これらの条例では、子どもの遊びに関する「権利」が定められています。

川崎市では2018年に「若者文化の発信によるまちづくりに向けた基本方針」を策定しました(※2)。前年に実施した「スポーツに関する市民アンケート」において、利用したいと思うスポーツ施設として「スケートパーク」と回答したのは10.4%(18歳以上30歳未満に限定)、サッカー場よりも多く、野球・ソフトボール場と同じ割合でした。けれども、スケートボードについては、安全に楽しめる公の施設が市内に一つしかないため、市内の別の公園を活用し、スケートボードやBMXなどが行えるよう整備することになっています。

また、小中学生がボール遊びのできる公園を設定したり、ボール遊びのできる時間帯などをホームページで告知したりしている自治体も出てきました。
 

声をあげた小学生に続け! みんなが楽しめる「インクルーシブ」な公園へ

禁止事項の多い公園が増える一方で、年齢・性別・言語・障害の有無などに関わらず、どんな人でも利用できるユニバーサルデザインを取り入れた、インクルーシブな公園も注目され始めています。

インクルーシブとは「包括的な」「包み込む」という意味ですから、インクルーシブな公園とは、だれもが楽しく遊べる、排除しない公園ということになります。「みーんなの公園プロジェクト」のサイトでは、ユニバーサルデザインによる遊び場づくりで大切なのは、「『地域のさまざまな人が参加し“ともに/ WITH” つくる』というプロセス」だと説明されています。

何か困ったことが起きたとき、新しい公園をつくるとき、禁止事項を増やし、誰かを締め出してしまうのではなく、全ての人が楽しめるよう利用者の声を聞き、積極的に課題を解決していくことが大切なのです。

またその際は、子どもたちの声にも耳を傾けてください。2019年には、板橋区の小学生たちが、ボール遊びのできる遊び場を求めて区議会に陳情書を提出し、公園の利用時間の延長などが認められたことが、各種メディアで大きく取り上げられました(※3)。先ほどご紹介した川崎市でも、2020年、市北部へのパーク開設を求め多摩区の小学生が署名運動を行っています(※4)。

子どもたちも公園を利用する「当事者」です。園児であっても、好きな公園やお気に入りの遊具について、一生懸命話してくれます。それらはきっと公園づくりの大きなヒントになるはずです。

また、たとえば、スケートボードにしてもボール遊びにしても、「使っていいのは○時から〇時まで」「やわらかいボールは使ってもいい」「このエリアはボール遊びも可」など、その地域や公園に合った解決策が見つかるのではないでしょうか。
 

ボール遊び禁止の公園で、ボール投げをしている小学生を目撃――あなたならどうしますか?

ボール投げ禁止の公園で、わいわいドッジボールをしている小学生たちがいたら、注意する人が多いかもしれません。
公園でのボール遊び

ボールの種類や遊び方によっては、使用を禁止しなくてもいいかもしれません。公園できることを限定していくのではなく、広げていくような考え方ができるといいですね

では、乳幼児に配慮しながら、幼児の使うようなやわらかいボールで静かに投げ合っている小学生なら?―― 注意するかしないかは、状況にも人にもよると思うのです。きっと、いろいろな考え方があるのでしょう。

本来公園は、世代を超えて多くの人と交流でき、地域活性化にも貢献できる場所です。子どもは、幅広い年齢の集団で遊ぶことで、ルールを学び、協調性を身につけていきます。身近な公園こそ、多様性を尊重する場になってほしいですね。

【参考情報】
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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