首都圏の約95%がデルタ株に……増える新型コロナウイルス変異株
変異種が増え続ける新型コロナウイルス。感染力の強い変異種に対抗する方法は?
デルタ株とは? 症状・感染力・従来の株との違い
新型コロナウイルスの変異株は、最初に発見された国名ではなく、発見された順にギリシア文字で示されます。アルファ株はイギリスで、ベータ株は南アフリカで、ガンマ株はブラジルで見つかりました。現在日本で流行しているデルタ株は、2020年10月にインドで初めて報告された変異株で、2021年4月にインド国内で大流行し、世界に感染が拡大しました。少し専門的になりますが、デルタ株はウイルスの突起部分であるスパイクタンパク質の遺伝子の452番目と681番目に変異があり、「L452R」「P681R」と表現される変異によって感染力が高まったと考えられています。
デルタ株の症状は、基本的に従来の新型コロナウイルス感染症の症状と同様で、発熱、咳、鼻水、嘔気、嘔吐、下痢、呼吸困難、全身倦怠感、味覚、嗅覚障害などです。感染力は強く、従来の株より1.87~2倍、アルファ株より1.3~1.5倍強くなっています。デルタ株に感染した場合、体内のウイルス量が従来の株より1200倍も多くなっているという報告もありますので、これもデルタ株の感染力が強い一因かもしれません。
カナダの調査によると、デルタ株は従来のウイルスなどに比べて入院するリスクが2.2倍、ICUが必要になるリスクが3.87倍、死亡するリスクが2.37倍と報告されています。デルタ株は、感染するとウイルスが体内で増殖しやすく、その分重症化も多く、感染力も高くなっているといえます。
ラムダ株とは? 症状・感染力・従来の株との違い
デルタ株と同じく、国内で最近不安視されているのがラムダ株です。ラムダ株は2020年12月にペルーで最初に報告され、現在、南米を中心に感染が拡大しています。7月には国内の検疫所で初めてラムダ株の感染が確認されました。ラムダ株については、今までの中和抗体の効果が悪いとされ、ワクチンの効果が悪くなるのではないかと指摘されていますが、まだ不明な点が多いです。
症状は、デルタ株と同様、基本的には従来の新型コロナウイルス感染症と同様で、発熱、咳、鼻水、嘔気、嘔吐、下痢、呼吸困難、全身倦怠感、味覚、嗅覚障害などです。懸念されているワクチンの効果については今後の課題ですが、もし効果が悪いとすれば、警戒すべき変異株といえます。今の日本ができることは、できるだけ水際対策を強化し、流行の時期を遅らせることでしょう。
変異株に効果的なワクチンはあるのか……モデルナ、ファイザー、アストラゼネカ
変異株が流行すると、気になるのは、現在受けているワクチンでも感染や重症化が防げるのかという点でしょう。米国ミネソタ州による、70%以上がデルタ株になった時点での調査によると、入院予防効果はモデルナ社製ワクチンが81%、ファイザー社製ワクチンが75%で、感染予防効果はモデルナ社製ワクチンが76%、ファイザー社製ワクチンが42%だったと報告されています。
イギリスの今年に入ってからの調査によると、発症予防効果は、アルファ株においてはファイザー社製ワクチンで93.7%、アストラゼネカ社製ワクチンで74.5%。デルタ株においては、ファイザー社製ワクチンで88.0%、アストラゼネカ社製ワクチンで67.0%でした。入院予防効果はデルタ株において、ファイザー社製ワクチンで96%、アストラゼネカ社製のワクチンで92%と報告されています。
これらのデータからは、ワクチンによって変異種への効果にやや開きがあるように見えますが、実際には接種時期などの影響もあるため、一概に有効性の差を断定できる段階ではありません。接種しても100%予防できるわけではありませんが、重症化を防ぐためにはいずれのワクチンも効果があることが分かってきていますので、変異種の拡大が進む中、少しでも速やかにワクチン接種を進めていくことが重要といえます。
続く変異株発生への対抗策は? ワクチンによる集団免疫が重要
新たな変異株の発生は、コロナウイルスの感染が流行している限り続きます。そして、ウイルスは変異することで、感染力がより強いものが残っていきます。今、これだけ感染拡大が続いている状況では、いつどこで感染しても不思議はありません。一刻も早い集団免疫によって感染拡大を減らし、変異株の発生も減らすことが重要です。ワクチンの副反応が心配な方もいるかもしれませんが、新型コロナウイルス感染症に感染してしまった場合の重症化リスク、後遺症リスクと、どちらが危険かを考えて冷静に判断されるとよいのではないかと思います。ワクチンにより少しでも免疫をつけておくことと、あわせて接種率の低い状況では感染予防を引き続き行っていくことが大切です。変異株になるほど、より感染対策が重要になります。
変異種感染拡大が続く中、「今まで大丈夫だった」というレベルの対策では感染する可能性がありますので、より人との接触を避け、個々人が注意して対策を行っていくようにしましょう。