血中酸素濃度(SpO2)とは……動脈血に含まれる酸素量
血中酸素濃度が下がる原因は? 体の中で何が起き、どのような対処・処置が必要になるのでしょうか
酸素を運搬するのは、赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質ですが、濃度というのは、「100個のヘモグロビンのうち、いくつが酸素とくっついているか」といった意味合いで使われています。より正確に言えば「飽和度」ということになり、医療の現場では「SpO2」と記載されています。
<目次>
- 血中酸素濃度の正常値・異常値……低い場合に考えられる原因は?
- 血中酸素濃度が低いとどうなる? 全身の臓器に障害が起こり命にかかわることも
- 血中酸素濃度が下がった時の対処法・「上げる方法」はあるのか
- 血中酸素濃度の考え方……自己計測するときの3つの心がけ
血中酸素濃度の正常値・異常値……低い場合に考えられる原因は?
基礎疾患がない場合、血中酸素濃度は通常のルームエア(医療処置として酸素を吸わない状態)で94~95%以上はあるはずです。飽和度ですので、理論上100を超えることはありません。基礎疾患や症状がないのに92%を下回る場合は、異常と言えると思います。SpO2が下がる場合、大きく分けて2つの理由が考えられます。
1つは、肺の中に空気が入らない状態。医学的には「きちんと換気ができない状態」と言いますが、窒息もそうですし、ぜんそくや肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患がある場合も、これに該当します。
もう1つは、肺胞から酸素が取り込めない状態。本来であれば、取り込んだ空気は肺の中にある肺胞という末端の組織に届けられ、そこから血液に酸素が渡されます。しかし痰が詰まって気道が閉塞していたり、気胸などで肺がしぼんでしまっていたりすると、せっかく外から取り込んだ空気が肺胞に行かず、酸素化が進まなくなってしまいます。
ウイルスや細菌などの感染症によって肺炎が起こった場合、痰が詰まってしまうなどし、酸素が十分に血液に取り込めないことが原因と言えます。
血中酸素濃度が低いとどうなる? 全身の臓器に障害が起こり命にかかわることも
血中酸素濃度が下がると、全身の臓器に酸素が十分に行き届かなくなります。ぼんやりした状態になるだけでなく、程度がひどかったり長時間に及んだりすると、臓器障害が引き起こされます。脳や心臓に重篤な障害が起こると命にかかわりますので、血中酸素濃度の低下には十分な注意が必要なのです。
血中酸素濃度が下がった時の対処法・「上げる方法」はあるのか
血中酸素濃度が低い場合、正常な状態まで上げて戻す必要があります。程度によりますが、医療行為と自分でできることをあわせ、対処法は主に次の3つです。1つは、吸入する酸素の濃度を上げることです。ルームエア、いわゆる私たちが普通に吸っている空気の酸素濃度は21%です。酸素マスクの種類や酸素の流量を調整すれば50%程度まで引き上げることができます。酸素濃度が高くなれば、時間あたりの酸素の取り組みを増やすことができ、SpO2を上げることができます。自宅療養中でも酸素吸入器を使用するケースが増えていますが、タバコなどの火は引火の恐れがあるため厳禁です。また、スポーツなどで使われる携帯型酸素も無意味ではありませんが、あくまでも限りなく一時的なものにすぎず、限定的な使用にとどまると思います。
もう1つは主に服薬による方法です。服薬によって痰をクリアにし、気道を広げ、末梢の肺胞まできちんと酸素が届きやすいようにします。痰が出やすい姿勢をとる体位ドレナージとあわせ、医師の診察によって処方された去痰剤の投与、気管支拡張剤の吸入など、様々な薬物治療があります。
最後の1つは、意識的に深呼吸をしたり身体を動かしたりすることです。肺をへこませたり、痰が特定の場所にたまらないようにしたりすることで、空気が肺胞までしっかり送り込まれるようサポートすることができます。ちょっとしたことですが意外に大切ですので、ぜひ覚えておいて下さい。
血中酸素濃度の考え方……自己計測するときの3つの心がけ
新型コロナウイルス感染症が拡大し、自宅療養者が増えた時期には、血中酸素濃度の正常値・異常値についての報道もよく見かけましたが、大事なこととして以下の3点をぜひ覚えておいてください。1.血中酸素濃度だけを見て大騒ぎしないこと……臨床症状や、他の検査データなどをあわせて、総合的に判断することが大切です。新型コロナウイルス感染症の療養中の場合は、病院などの指示に従ってください。
2. 一回の値に一喜一憂しないこと……92と93の間に決定的な違いがあるわけではありません。重要なのはどのような傾向になっているかという点です。症状とあわせて、数字が改善傾向にあるのか、悪化傾向にあるのかという推移を見るための指標と考えましょう。
3. 自分の正常値を知っておくこと……標準値はありますが、もともとの疾患や生活習慣、職業歴によっても個人差があります。健康管理目的ですでに持っておられる方は、自分のいつもの値がどれぐらいかを時折チェックされるのも良いと思います。