鉄道

観光特急「しまかぜ」で伊勢志摩へ、カフェも車窓も「豪華」な近鉄特急の魅力

2013年に営業運転を開始した近鉄の豪華観光特急「しまかぜ」。その人気は衰えることがない。プレミアムシート、サロンや和洋2種類の個室、それに温かい食事を提供するカフェ車両からなる編成により、鉄道旅行の楽しさをたっぷり味わうことができる。

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

2013年の伊勢神宮の式年遷宮に合わせて営業運転を開始した近鉄の豪華観光特急「しまかぜ」。早いものでデビュー以来8年にもなるけれど、その人気は衰えることがない。プレミアムシート、サロンや和洋2種類の個室、それに温かい食事を提供するカフェ車両といったバラエティに富んだ編成によって、鉄道旅行の楽しさをたっぷり味わうことができる。

現在は新型コロナウイルスの影響ですぐには乗ることができない人が多い状況ではあるが、いつか乗りたい観光列車の一つとして、その魅力をあらためてご紹介しよう。
 

プレミアム感たっぷりの観光特急「しまかぜ」

賢島駅で並ぶ「しまかぜ」

賢島駅で並ぶ「しまかぜ」

観光特急「しまかぜ」(近鉄50000系電車)は、近鉄の看板車両にふさわしく大阪難波、京都、近鉄名古屋から伊勢市、宇治山田を経て賢島まで、それぞれ1日1往復(原則として週に1日運休日あり)している。伊勢志摩への観光に特化した列車なので、通常の特急停車駅である桑名、津、伊勢中川、松阪、名張などには停車しない。また、しまかぜ特別車両料金の加算といったプレミアム感たっぷりの設定がなされている。

車体は、伊勢志摩の晴れやかな空をイメージして、青を基調にカラーリング。車両によっては白が主体となったり、ゴールドのストライプが入るものの全体としては統一の取れたデザインだ。先頭車両の6枚のガラスを用いた多面体の「顔」は、シャープさと躍動感を表現している。
 

「しまかぜ」の車内をご案内

プレミアム席

プレミアム席は通路を挟んで2人掛けと1人掛け

プレミアムシート

本革を使用したプレミアムシート

「しまかぜ」は6両編成。1、2、5、6号車は、プレミアムシートの車両。通路を挟んで2人掛けと1人掛け席が並ぶゆったりとした車内だ。そのうち、両端の1、6号車はハイデッカー構造のため、眺望が優れた展望車両となっている。

シートピッチ(座席の前後間隔)は125cmもあり、東海道新幹線のグリーン車が116cm、普通車は104cmなので、そのゆとりは圧倒的だ。シートは本革を使用したふんわりと柔らかいもので電動リクライニング機能も完備、またブラインドの昇降も電動であり、もちろん電源コンセントもすべての座席に専用のものがある。
サロン席

サロン席は4人以上で利用可

4号車(名古屋発着の「しまかぜ」は3号車)はグループ席車両で、サロン席が3カ所並んでいる。ヨーロッパの国際列車の客車でお馴染みのコンパートメント風で、3席向かい合わせの6人用である。完全な個室ではなく、通路側に仕切り板があるだけで、セミコンパートメントと呼んでいる。細長く大きなテーブルが付いていて、飲食にも便利。4人以上で利用可能だ。
洋風個室の車内

洋風個室の車内

グループ席車両の半分には、洋風と和風の個室が1つずつある。洋風個室は、窓に向かってL字型のソファーとテーブルを配置、応接間のような雰囲気だ。モニター画面、身だしなみを整えるための鏡もある。
和風個室の様子

和風個室の様子

和風個室は靴を脱いでくつろげる掘りごたつ風の部屋だ。4人向かい合わせの席でゆったりとくつろげる。どちらの個室もカフェ車両からのルームサービスを受けることが可能。そのための呼び出しボタンが設置されている。
 

温かい食事を提供するカフェ車両

カフェ車両の2階席

カフェ車両の2階席

カフェ車両は、温かい食事を提供する調理室のある車両である。全国に何種類もある「レストラン列車」をのぞく一般の列車に限ると、現在では貴重な「食堂車」だ。近鉄としてはスナックカー以来の食事サービスである。

ダブルデッカー構造で、2階のみならず1階にもカウンター席がある。窓を向いたカウンター席のみでテーブル席はないのでカフェ車両と呼んでいるのであろうが、レストランカーといっても何ら遜色はない。
海の幸ピラフ

海の幸ピラフ。ミネラルウォーター付き

食事メニューとしては、海の幸ピラフ、松阪牛カレーといった沿線のご当地メニューがメインで、1400~1500円程度の価格とは良心的だ。スイーツセット、ソフトドリンク、アルコール類などメニューも豊富で楽しめる。
スイーツセット

スイーツセット
 

「しまかぜ」の車窓

海が見えるのは鳥羽付近のみ

海が見えるのは鳥羽付近のみ

走行ルートは、名古屋、大阪、京都といった大都市圏から伊勢志摩へ向かう幹線であってローカル線ではないので、過剰な絶景を期待してはいけない。それでも名古屋からのルートでは木曽川、長良川、揖斐川の三大河川を連続して渡る区間、関西エリアからは、大阪線のかなり長い山越え区間、宇治山田~鳥羽間の山岳区間と海がちらりと見える区間など要所要所に見どころはある。

名古屋からは2時間、大阪難波から2時間20分、京都からは2時間40分ほどといった所要時間なので、退屈しないうちに到着するであろう。
記念乗車証

「しまかぜ」の記念乗車証

 

「しまかぜ」の料金

アテンダントさんがご挨拶

豪華特急らしく、乗車時にはアテンダントさんがご挨拶

天皇皇后両陛下の伊勢神宮や橿原神宮訪問の際のお召列車としても使われることもあって近鉄ご自慢の豪華列車であることは間違いない。だからといって目が飛び出るほどの高額料金ではないのは良心的である。

通常の特急料金に「しまかぜ特別車両料金」1050円(京都~賢島は1160円)がプラスされるだけ。同じ距離を東海道新幹線で移動する場合、グリーン料金は2800円、東北新幹線のグランクラスB(食事サービスなし)ならば5250円なので、しまかぜ特別車両料金は極めてリーズナブルだ。
「しまかぜ」グッズの数々

「しまかぜ」グッズの数々

「しまかぜ」人気は衰えることがない。もっとも、平日の賢島発は時期によっては乗車当日でも席が残っている場合があるので、諦めずに予約状況をチェックするといいだろう。プレミアムシートの極上の快適さゆえに目的地で降りるのが嫌になる人が続出しているという。

まだ乗っていない人も、ぜひ一度乗ってみてはいかがだろうか。東日本からは、名古屋での乗り継ぎが常道ではあるけれど、大回りになることを承知で京都から乗ってみるのもおすすめである。

「しまかぜ」の公式サイト



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