亀山早苗の恋愛コラム

「卒婚」より「離婚」を選択したい?“赤の他人”になって後半生をすっきり生きたい女性たち

離婚より卒婚を選ぶ人もいれば、卒婚より離婚を選ぶ人もいる。いずれもそれまでの夫婦関係、現在や将来の関係をにらんでのこと。どちらが正しいわけでもないが、「卒婚より離婚」を選んだ女性は何を感じているのだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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女優の鈴木保奈美さんは離婚を選んだ

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女優の鈴木保奈美さん(54歳)が、夫でタレントの石橋貴明さん(59歳)とふたりでYouTubeに出て離婚を発表した。ふたりとも再婚、23年の結婚生活で3人の娘を育て上げ、「子育てが一段落した」ことを理由にあげ、離婚後は所属事務所の社長と所属俳優として関係を築くという。ビジネスパートナーに徹するということなのだろう。

それならわざわざ離婚しなくても、別居して卒婚という手もあった。だがおそらく、鈴木さんとしてはプライベートでは関わりをもちたくなかったのではないだろうか。昨年夏には個人事務所を設立しているというから、移籍する日も近いのかもしれない。

離婚より卒婚を選ぶ人もいれば、卒婚より離婚を選ぶ人もいる。いずれもそれまでの夫婦関係、現在や将来の関係をにらんでのこと。どちらが正しいわけでもないが、「卒婚より離婚」を選んだ女性は何を感じているのだろうか。

 

「いつかは離婚」と思っていた

つい最近、27年間の結婚生活を解消したリエさん(53歳)。長男は3年前に就職、長女はこの春、社会人となり、ふたりとも家を出た。

「それほど広くないと思っていた一軒家が、急にだだっ広く感じられましたね。食事を作る張り合いもなくなりました。そもそも、いつかは離婚したいと思っていたんです。夫とは“協力しあって家庭を築いてきた実感”がまったくなかったから」

塾講師として活躍していたリエさんは、ふたりの子が小さいころは専業主婦として家にいた。それは夫の要求でもあった。

「下の子が小学校に入ってから徐々に仕事を再開、講師仲間と一念発起して塾を立ち上げました。エリート志向の子たちに向けた受験のための塾ではなく、勉強って楽しいものだとわかってもらうための塾です」

これがそこそこ成功したが、リエさんたちは事業を拡大しようとはしなかった。儲けは二の次だったのだ。

「夫は塾がうまくいっていると知ると、『オレがもっと儲けさせてやる』と言い出して。彼、金融関係なので事業の見直し計画とか勝手に作り始めたんです。それだけはやめてと阻止しましたが、それがおもしろくなかったんでしょう。『たかが主婦の遊び仕事なんだな』と悪口を言うようになっていきました」

夫自身、出世街道からはずれていたから、巻き返しを図りたかったのだろうが、リエさんは自分の仕事には口出ししないでほしいと訴えた。

 

ずっと険悪な雰囲気に

家庭はずっといい雰囲気ではなかった。夫はときに子どもたちの前でも妻を罵ったという。

「子どもの成績が悪いと、『お母さんが家にいないから、おまえたちだって落ち着いて勉強できないんだろ』と言うんです。子どもがかわいそうですよね。ふたりとも私に悪いと思って勉強する。そんなんじゃ身につきません。いつかは離婚、いつかは離婚。いつもそうやって心の中で唱えていました」

その時点で離婚しなかったのは、経済的な不安もあったが、やはり「離婚家庭」だと世間に思われるのが心苦しかったからだ。「私自身が世間体に縛られていたんです」とリエさんはうなだれる。

リエさんが50歳のとき、4歳年上の夫が交通事故にあって大けがをした。リハビリを嫌がる夫をなだめたりすかしたりして励まし、半年後に夫はようやく職場復帰した。仕事をセーブして夫に尽くしたのだが、夫からは一言のお礼もなかった。

「そのとき、老後の風景が浮かんだんです。何もかも私にやらせて当たり前だと思っている夫、私が出かけようとすると『オレの飯は?』と言う夫……。それが目に見えていました。実際、事故後のリハビリ時期、夫は私を縛り付けようとしていましたから。このままだと私は一生、自分の時間をもてない。自分のために生きることができない。そう感じました」

離婚するなら子どもたちが巣立ったタイミングだと決めた。そして長女が家を出たとき、リエさんは夫に離婚届を突きつけた。

「出ていけ、一銭もやらないからなと夫は叫びました。私は家を出て、前から用意していたアパートに荷物を運びました。その後は弁護士を立てて協議、1年後にようやく離婚が成立したんです。いくばくかの財産分与もあったけど、今までの私の貢献度を考えると少ないなと思います。それでも、今後30年生きるとしたら、夫からの束縛を逃れただけよしとしようと決めたんです」

別居だけしての卒婚は、彼女には考えられなかった。卒婚は、お互いに相手を尊重し、人間同士としての信頼関係がなければむしろできないのではないかと彼女は言う。

「赤の他人になりたかったんですよ、私は(笑)。今までの結婚生活を否定はしたくないけど、夫を引きずって生きていくのは嫌だった」

もう一度、ひとりになって自由に生きたい。アラフィフ女性たちの本音なのかもしれない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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