1. 京浜東北線という正式な路線名はない!
京浜東北線という正式の路線名はない。あくまで電車の運行系統の通称であって、大宮駅~東京駅が東北本線、東京駅~横浜駅が東海道本線に属する。1964年の根岸線の部分開業(桜木町~磯子)までは、横浜駅~桜木町駅間は東海道本線の支線扱いで桜木町までが京浜東北線であった。けれども、根岸線部分開業に際し、根岸線の起点が横浜駅になったので、横浜駅~桜木町間の東海道本線の支線は消滅して根岸線に含まれるようになって現在に至る。 ところで、都内を走る東北本線の列車は現在、北限が黒磯行きで、ほとんどが宇都宮止まりだ。東北には行かないのだから東北線という名称は実態に即していないとの意見が取り入れられて「宇都宮線」との通称が幅広く用いられている。それなら、北限が大宮駅とまりの電車を『京浜「東北線」』と呼ぶのではバランスが取れていないのではと訝しく思う人もいるであろう。しかし、誰も意義を唱えず、相変わらず京浜東北線である。すっかり定着しているので、このまま変わることはないであろうが、よく考えれば妙な話ではある。2. 京浜東北線に「上り・下り」はない
列車の上り・下りというのは東京駅を起点としての命名である。これに従うと、京浜東北線の電車は大宮駅発の電車は東京駅までが上りで、東京駅を出ると下りという面倒なことになってしまう。そこで、京浜東北線では「上り・下り」という呼称は用いず、「南行」(なんこう・みなみいき)「北行」(ほっこう・きたいき)と呼んでいる。ただし、駅の表示板では、浦和・大宮方面、横浜・大船方面というように主要駅を明示の上、案内している。このほうが、わかりやすいからであろう。
3. 昼間のみ走る快速電車
大宮~横浜~大船間は乗り通すとおよそ2時間かかる。途中45駅に停車するので、耐えられない人も出てくるであろう。そこで、日中の時間帯(10時半~15時半くらい)のみではあるが、田端駅~田町間に限定して快速運転を行っている。この区間は山手線とぴったり並走していて、同じホームで乗り換えができるので、山手線の快速電車という考えであり、京浜東北線のすべての電車が快速運転となる。田町駅にしたのは、品川駅では、山手線と京浜東北線のホームは分かれていて乗り換えが不便だからだ(高輪ゲートウェイ駅も同様)。1988年運転開始当時の停車駅は、上野、秋葉原、東京の3駅だったが、モノレールとの乗り換えを考慮して浜松町駅が追加、さらに神田駅も追加、土休日には御徒町駅も追加され、それほど快速運転という感じがしなくなってしまった。
もっとも、上野東京ラインが並走しているので、急ぐ人はそちらを快速電車として利用すればよいのではないだろうか。興味深いことに、上野東京ラインは新橋駅に停車するのに、京浜東北線の快速では新橋駅は一貫して通過扱いである。新橋駅を利用する人は要注意だ。
4. 京浜東北線電車の行き先
京浜東北線の電車は利用状況に合わせて本数を調整しているため様々な行き先がある。南行の場合、根岸線の終点である大船行きの他、磯子行き、桜木町行き、東神奈川行き(レア)、鶴見行き、蒲田行き、大宮発赤羽行き(深夜のみ)と何種類もある。一方、北行きは、大宮行きの他、南浦和行き、赤羽行き(午前のみ)、東十条行き(レア)となっている。車両基地の最寄り駅や折り返し設備のある駅が行先となっているものがほとんどだ。
5. 紛らわしい駅名
京浜東北線の停車駅の中で紛らわしい駅名は、上野より北の区間にあり、日暮里、西日暮里、川口、西川口、南浦和、浦和、北浦和といったところであろうか。とくに浦和という駅は3つもあって間違えやすい。しかも、南浦和駅で交差するJR武蔵野線の東隣は東浦和駅、西に向かうと次が武蔵浦和駅、その次は西浦和駅となっているから大変ややこしい。浦和が付く駅名は他にも中浦和駅(埼京線)、浦和美園駅(埼玉高速鉄道)があり、合計すると8駅にものぼるので地元の人や鉄道に詳しい人以外は茫然としてしまうであろう。6. ユニークな駅メロ
各駅でさまざまな発車メロディーが使われている。特筆すべきは、蒲田駅の「蒲田行進曲」、大井町駅の「ヴィヴァルディの四季」から「春」と「秋」、根岸線内では、桜木町駅の「線路は続くよどこまでも」、関内駅の「熱き星たちよ」(横浜スタジアムの最寄り駅なので、ベイスターズの球団歌)といったところであろうか。7. 松本清張「砂の器」の舞台
松本清張が書いた小説「砂の器」は何度か映画化されたり、テレビドラマにもなっている作品だ。冒頭、蒲田駅近くの酒場での客の描写があり、その後、蒲田駅に隣接した「電車の操車場」で死体が発見され、事件が始まる。操車場とは長らく蒲田電車区として親しまれた京浜東北線の車両基地のひとつで、現在は大田運輸区と呼ばれている。文中に「7両編成の電車」とあり、この小説の新聞連載が始まったのが1960年5月だから、スカイブルーの103系が登場する前、おそらく焦げ茶色の旧型国電だったと思われる。
8. わが国の鉄道発祥の地、桜木町駅とポケモン
わが国最初の鉄道が新橋~横浜間に開業したときの横浜駅とは現在の桜木町駅である。それゆえ、駅構内には往時を偲ばせるモニュメントや本物の蒸気機関車が展示されている。長らく京浜東北線の南の終点だったが、根岸線の開通により中間駅となり、桜木町は根岸線の駅となった。もっとも、折り返し施設があるので、現在でも桜木町行きの電車が設定されている。 桜木町からみなとみらい地区にかけては、2014年以来、8月中旬にポケモンの大イベントを行ってきた。それにあわせ、桜木町駅の駅名標が、期間中限定でピカチュウのイラスト入りのものに取り換えられ話題となった。コロナ禍で中断しているが、また復活して賑わうことを期待したいものだ。9. 京浜東北線と根岸線に乗り入れるJR横浜線の電車
JR横浜線は、東神奈川~八王子間の路線で、その名に反して横浜駅を通らない。しかし、それでは不便なので、起終点駅の東神奈川駅から京浜東北線・根岸線に乗り入れて桜木町行きがある。朝夕には磯子行き、まれに大船行きもあり、京浜東北線と根岸線内でスカイブルーではなく横浜線カラー(黄緑と緑の2色の帯)の8両編成の電車を見ることができる。10. 特急列車が走ったことがある京浜東北線
2019年1月3日まで土休日限定で運転されていた特急「はまかいじ」はJR横浜線・中央本線・篠ノ井線経由で松本まで走る列車だった。東海道本線から横浜線に入ることは線路の配線上できなかったので、横浜駅は京浜東北線のホームに発着し、東神奈川駅までの1区間、京浜東北線を特急電車が走っていたのだ。便利な列車で愛用者もいたので廃止は惜しまれる。以上、京浜東北線と根岸線に関わるトリビアを10集めてみた。長い路線だけに、まだまだ知られざるトピックはあると思うが、スペースの都合もあるので、このあたりにしておこう。
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