1. 東京駅のモニュメント
東京駅の一番東側(八重洲口)にあるのが18&19番線ホームで東海道新幹線が使っている。その南端、品川寄りに赤レンガの壁を模したモニュメントが立っている。壁にはめ込まれたレリーフの眼鏡をかけた人物は第4代国鉄総裁の十河信二氏だ。新幹線の生みの親ということで東京駅ホームに顕彰碑がつくられたのだ。右から書かれた「一花開天下春」というのは十河氏の座右の銘で、「長い苦労に耐え精進した先に一輪の花が開き、天下に春の訪れを感じる」という意味である。
2. 熱海駅と新丹那トンネル
新大阪までの駅の中で唯一、待避線がなく上下線に対し向かい合わせのホームがあるだけの簡素な構造の駅である。山が海まで迫る狭隘な地形のため、待避線を設ける余地がなかったためだ。高速で列車が通過するため安全上、1974年に日本で最初のホームドアが設置された。西に向かって走る列車は、この駅を出ると新丹那トンネルに突入する。このトンネルは戦前の弾丸列車計画にのっとり1941年に工事を開始している。戦争で中断したものの、かなり進捗していて、1959年の工事再開後4年あまりで完成できたので1964年10月の開業がスムーズに迎えられたといわれている。
3. 富士山がよく見える新富士駅
新大阪までの駅の中で、唯一他の鉄道に乗り換えられない駅である。開業当初は岐阜羽島駅も接続する鉄道がなかったけれど、1982年に名鉄羽島線が乗り入れるようになり、鉄道のみで岐阜市へ行けるようになっている。新富士駅から一番近い鉄道駅は東海道本線の富士駅で北西に向かって2kmほど離れていて車で6分くらいかかる。1964年10月の開業当初は、熱海駅の次は静岡駅とかなり距離があった。新富士駅が開業したのは1988年3月で、国鉄が民営化されJR東海になってからのことである。
4. 木造駅舎の掛川駅
1988年に新富士駅、三河安城駅と同時に開業した東海道新幹線の中では後発の駅だ。木の文化を大切にしたいとの地元の意向から在来線側の北口駅舎は木造駅舎となっていて、東海道新幹線の中では唯一の存在である。また第3セクターの天竜浜名湖鉄道も掛川駅にディーゼルカーが発着しているが、非電化路線が乗り入れているのも東海道新幹線の駅では唯一のことだ。名古屋や関西方面から大井川鐵道に向かうときは掛川駅で東海道本線に乗り換えれば2駅14分で起点の金谷駅に行ける。かように地元利用以外に乗り換え需要もあるためか、「こだま」のみ停車する駅の中では、利用者数が一番多い。
5. 地上にある豊橋駅
在来線(東海道本線と飯田線)や名鉄、少し離れたところにある豊橋鉄道との乗換駅だ。ホームに降りれば分かることだが、在来線と同一平面上にあり、しかも高架ではなく地上ホームである。これは高架が主流の新幹線駅にあっては異例のことだ。駅周辺が地上を走っているのなら分かるけれど、豊橋駅近くまで高架上を走ってきて、急に地上に下りるのである。これは、豊橋駅のすぐ名古屋側にある県道の陸橋が原因だ。諸般の事情から陸橋を建て替えることが叶わなかったので、新幹線が陸橋の下をくぐることにしたためである。くぐりぬけると新幹線は再び高架になって名古屋方面へ向かう。
6. 降りたことはないけれど駅名はみんな知っている三河安城駅
1988年に完成した後発駅のひとつだが、地元以外では何とも存在感の薄い駅で利用者も少ない。「こだま」しか停車せず、首都圏から向かうと「のぞみ」「ひかり」に何回も追い越された後に停車するので、それならいっそのこと名古屋まで「のぞみ」で向かい、折り返すなり、クルマで目的地に行くほうが精神衛生上良いと考える人が多いのであろう。「のぞみ」に乗車すると、「ただいま三河安城駅を定刻に通過しました。あと10分で名古屋に到着します」という案内放送がある。そのための目印として認識しているが、この駅に降りたことはないという人がほとんどだと言ったら三河安城駅に失礼かもしれない。
7. 名古屋駅を通過した列車
「のぞみ」「ひかり」「こだま」すべての列車が停車し、JR東海の本社がある拠点駅が名古屋だ。ところが、東海道新幹線の歴史上、定期列車で名古屋駅を通過した列車があったことをご存じだろうか?時は1992年3月14日。「ひかり」よりもワンランク上の列車として「のぞみ」が運転を開始した。当初は朝晩2往復の運転で、東京駅発6時00分の下り「のぞみ301号」は新横浜に停車した後は、名古屋駅と京都駅を通過し、終点の新大阪駅までノンストップとしたのだ。これは「名古屋飛ばし」と呼ばれ、名古屋の政財界を揺るがす大問題に発展した。
当時は、夜間工事の影響で早朝の列車を減速させる必要があった。そのため、名古屋と京都に停車させると新大阪8時30分着が不可能になり、大阪出張で「9時からの会議に間に合う」というアピールができなくなるためだった。運転初日には、「のぞみ」が名古屋駅を通過する様子がTVニュースで報道されるほどセンセーショナルな出来事として全国的にも注目を集めた。
もっとも、通過はこの列車1本のみであり、1997年には技術の進歩で名古屋・京都に停車しても新大阪着8時30分は可能になったので、「名古屋飛ばし」は解消した。その後、名古屋駅と京都駅を通過する定期列車はない。
8. 政治駅と噂された岐阜羽島駅
田圃の中の新幹線駅と揶揄され、駅前に地元の有力政治家だった大野伴睦夫妻の銅像が立っていることから政治駅といわれ続けてきた。もっとも、政治家がルートを捻じ曲げてここを通過するようになったのは事実ではない。新幹線ルートは、本来なら鈴鹿山脈をトンネルで貫いて京都に至るのが最短距離ではあるけれど、当時の技術では難工事となり10年以上かかるとされ、5年ほどで完成させるのは無理だったので却下。さらに、岐阜県側が岐阜市や大垣市を経由して駅を造るように主張して譲らなかった。それでは東京~大阪を3時間で結ぶことはできないというので、有力者の大野伴睦氏が調停に乗り出し、現ルートにしたというのが真相のようだ。関ケ原という豪雪地帯を通過することから、除雪車の待機基地を設ける必要があり、そのためには市街地ではない岐阜羽島が適していたともいわれる。
現在も街としては発展していないけれど、駅前が広く、名神高速道路のインターチェンジも近いことから、団体旅行で新幹線からバスに乗り換えて高山や郡上八幡方面へ向かうための拠点駅として機能している。
9. 遭遇したらハッピー! ドクターイエロー
「見ると幸せになれる」という都市伝説もあるのが黄色い新幹線車両、通称「ドクターイエロー」だ。正式名称は「新幹線電気軌道総合試験車」、線路や架線などの設備を点検する新幹線のお医者さんである。10日に1回程度の運行で、列車ダイヤは非公開とされているけれど、SNSやネット上では運行情報が出回っている。もっとも、正確かどうかは保証の限りではない。10. 車窓から見えるユニークなもの
意外に車窓が変化に富んでいることで知られる東海道新幹線。有名なのは、富士山、浜名湖、伊吹山であろう。しかし、かなりマニアックでユニークなものが車窓にあらわれるので、退屈しのぎに見つけてみてはいかがだろうか。 ひとつは、下り新幹線で岐阜羽島駅を過ぎ、長良川を渡ると右手に現れる巨大な太陽光発電施設「ソーラーアーク」。2002年に三洋電機が造ったものの、現在はパナソニックが所有しブランド表記も改められている。 もうひとつは、沿線各地、田畑の真ん中で見つけることができる野立て看板「727」。これは何?と気になっている人もいるだろう。実は大阪に本社を置く、美容室専売の化粧品メーカー「セブンツーセブン(727)化粧品」の広告なのだ。独自性を出すために、他の媒体ではなく、敢えて野立て看板にこだわっているという。人家の密集していないエリアで数分に1回の割合で目に留まるよう設置しているようなので、今度新幹線に乗ったら、ぜひ見つけてみよう。
東海道新幹線の話題はまだまだある。乗車すると同時にパソコンに向かったり、居眠りする時間と決めている人も少なくないようだが、時には沿線の様子にも注意を払ってみると思わぬ発見があって楽しいものだと思う。
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