家計の金融資産額はアメリカの6分の1
日本銀行が四半期ごとに公表する資金循環統計によれば、2021年3月末時点の家計が保有する金融資産額は1946兆円と前年同期比7.1%増えました。比較可能な2005年以降で過去最高額を更新しています。昨年3月末は新型コロナの影響で株価下落の直撃を受けましたが、1年を待たずに株価はコロナ前に回復。家計の金融資産額も1年で130兆円もの大幅増となったのです。大幅増になった背景は、株価上昇により株式や投資信託の評価益が膨らんだことに加え、新型コロナ禍で個人消費が抑制されたこと、一律10万円の特別定額給付金などにより現預金が多く増えたことがその要因です。通常、家計の金融資産はボーナスが支給される12月末と比較すると3月末は減少する傾向があるのですが、今回の資金循環統計では昨年の12月末より13兆円も金融資産額が増えたのは、2回目の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響により消費が想定以上に抑制されたことが大きいようです。
家計の金融資産額は過去最高を更新しましたが、アメリカの家計が保有する金融資産額は桁違いです 。アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が6月10日に公表した資金循環統計によれば、アメリカの家計が保有する金融資産額は1京2000兆円(109兆ドル)で、日本と同じく過去最高額を更新しています。
新型コロナ対策で国民に1月と3月に現金給付を実施したことにより、日本の普通預金にあたる決済性預金(含む現金)が急増。株高により株式と投資信託の合計額が大幅に増えたことがその背景のようです。日本の3倍強の人口で、金融資産額は6倍ですからアメリカの富裕層は桁違いということもうなずけます。
日米ともに株高の効果はすさまじい
それでは一部アメリカの状況も踏まえながら、日本の家計の金融資産額の内訳を見ていくことにしましょう。家計が保有する現金・預金は前年比5.5%増の1056兆円です。2020年12月末からは減少となりましたが、前年比では既に12年前後も増加が続いています。 昨年の9月末以降、増加率は5%前後が続いていることから、消費の抑制が現金・預金の大幅増にかなりの影響を与えていることがわかります。アメリカの現金・預金は大幅に増えたとはいえ約360兆円に過ぎません。日本人の現金・預金好きがよくわかります。
株式の残高は株価の大幅な上昇により前年比32.1%増の195兆円、投資信託も同33.9%増の84兆円となりました。あわせて279兆円と個人の金融資産額の14.3%を占めるに過ぎません。30%を超える増加となりましたが、アメリカの増え方は日本の倍近い増加です。
株式と投資信託の合計は約4400兆円(40兆ドル)と、1年前と比較して64%も急増しているのです。しかも、株式、投資信託の合計で日本の全金融資産額の2倍超の規模ですから、アメリカは株高による資産効果がより大きいことがわかります。
債務証券(債券)の残高は前年同月と横ばいとなり、残高は26兆円です。減少こそ止まっているものの、金利に魅力がないことから残高が目に見えて増える状況にはありません。
保険・年金・定額保証の残高も久しぶりに対前年比で1%を超える増加率となり、その残高は533兆円になっています。うち保険は同1.1%増の377兆円です。保険の増加率はこのところ低迷していたのですが、1%超えは2019年6月末以来となっています。
家計の金融資産額の2000兆円乗せが気になるところですが、収入が増えにくい状況を考えると2021年中は難しいかもしれません。たとえ株価が上昇したとしても、家計が保有する株式・投資信託は全金融資産の14.3%しかないため、株高の効果もアメリカなどと比較すると小さいからです。しかし、経済の正常化に伴うリベンジ消費があれば、近そうで遠い2000兆円台に乗ることになりそうです。
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