1. 中央線とは。中央東線&西線
東京~名古屋をほぼ400kmでつなぐ中央本線。ただし、全線を通して走る列車は1本もない。現在、定期列車は東京もしくは新宿から塩尻を経て松本方面へ向かう系統と名古屋から塩尻を通り、長野方面へ向かう系統に分かれている。それゆえ、東京から塩尻までを中央東線、名古屋から塩尻までを中央西線と呼ぶこともある。ちなみに、松本駅は中央線上にはない。
塩尻駅から松本駅を経由して篠ノ井駅までは篠ノ井線、篠ノ井駅から長野駅までは信越本線である。また、中央東線、篠ノ井線、信越本線はJR東日本に、中央西線はJR東海の路線である。
2. 東京駅のゼロキロポスト
中央本線の東の起点は東京駅だ。現在、二層構造になった高架上の1番線と2番線が中央線のホームであり、赤レンガ駅舎寄りの1番線には、赤レンガの上に0(ゼロ)が載った洒落たゼロキロポストが設置されている。3. 万世橋駅跡
中央線は東京駅を発車すると神田駅で京浜東北線、山手線などと分かれ左へカーブする。そして、次の御茶ノ水駅との中間に駅の遺構が残されている。それが、かつての中央線のターミナルだった万世橋駅のものだ。1912年に開業したものの1919年に中央線が東京駅に乗り入れるとともにターミナルとしての機能を失った。追い打ちをかけるように、関東大震災で被災し、赤レンガ駅舎は消失、1943年には休止と悲運が続いた。
長らく旧駅の隣に交通博物館があったため駅跡は放置されたままだったが、2006年に交通博物館は閉鎖され、収蔵品などは大宮にできた鉄道博物館に移された。その後、跡地は再開発され、商業施設としてリニューアル。遺構も保存されている。
4. 四ツ谷の御所トンネル
中央線は四ッ谷駅を出るとトンネルに突入する。都内のトンネルはほとんどが地下トンネルだが、このトンネルは地下に潜るトンネルではない。御所トンネルという名のように、小高い丘の上にある赤坂御所(現在は迎賓館)の下を通っているのだ。新旧2つのトンネルがあり、緩行線(各駅停車、総武線直通の黄色帯の中野方面へ向かう電車)下りが旧御所トンネル(長さ317メートル)をくぐる。このトンネルはレンガ造りの由緒あるものだ。
残りの3線(緩行線上り、総武線直通の千葉方面行きおよび快速電車が走る上下線)は新御所トンネル(長さ385メートル)といって鉄筋コンクリート造りのものだ。旧御所トンネルは1894年に、新御所トンネルは1929年に完成し、いずれも歴史的な建造物として評価されている。
5. 東中野~立川の直線
中央線は東中野から立川まで西に向かって一直線に進んでいる。建設当時、賑わっていた甲州街道や青梅街道に沿って線路を敷くことが困難だったため、人家のほとんどなかった土地をルートとして選び、その結果25kmにも及ぶ直線となったのだ。途中駅にある島式ホームの前後でカーブしたり、高架化などの移設工事のため完全な直線ではなくなったが、北海道にある室蘭本線の白老~沼ノ端間の28.7kmに次ぐ直線区間といわれている。
6. 電車と列車
JR八王子駅の案内では、「次の電車は高尾行き」「次の列車は特急『あずさ〇〇号』松本行き」のように「電車」と「列車」を使い分けている。戦前から高尾駅(1961年以前は浅川駅)までの国電区間を走るものが「電車」、高尾以遠へ向かうのが「列車」(古くは「汽車」)と使い分けられ、現在もその区別を踏襲しているのだ。また、「電車」のことを中央線、「列車」のことを中央本線と呼んで区別する言い方もある。
7. スイッチバック
山岳路線である中央線には数多くのスイッチバックが存在していた。初狩、笹子、勝沼、韮崎、新府、穴山、長坂、東塩尻である。しかし、機関車牽引列車の廃止、高性能の電車列車の登場で、すべてのスイッチバックの施設は廃止となり、列車の高速化も図られた。このうち、初狩駅には今なおスイッチバックで使われた線路が現役で残り、砕石など工事列車の基地として使われている。ちなみに、名古屋発の特急「しなの」が通過するスイッチバック駅の姨捨は、篠ノ井線の駅であって、中央線の駅ではない。
8. 大八廻り&塩嶺トンネル
中央東線は、岡谷駅を出ると南下し、辰野駅発車後、北上して塩尻駅を目指すという大変な迂回を強いられていた。地元の政治家・伊藤大八がルートを捻じ曲げた「我田引鉄」の代表例としてよく取り上げられ、「大八廻り」と呼ばれる。1983年に岡谷と塩尻をショートカットする塩嶺トンネル(約6キロメートル)経由の新線が完成し、特急列車は大幅なスピードアップが可能になった。一方で、旧線上にある辰野駅は、かつては急行停車駅だったが、現在では飯田線直通の普通列車や旧線(辰野~塩尻、現在は中央本線の支線扱い)を走るローカル列車のみが発着する駅となり、広大な構内を持て余しているようだ。
9. 東線と西線が合流する塩尻駅
東京と名古屋を結ぶ中央本線の塩尻駅は中間駅ということで、そのまま線路が名古屋方面へ向かっていた。しかし、この線路配置では、名古屋方面からやってきた列車が長野方面へ向かうときは、塩尻駅で進行方向を変えなければならず、はなはだ不便だった。1982年に塩尻駅は移転し、東京、名古屋どちらからも松本、長野方面へ向かうときに進行方向を変えないで進める線路配置となった。中央東線と西線を直通する定期列車が存在しないのであれば、この線路配置が理想であろう。
もっとも、臨時列車などで中央東線と西線を直通する列車および車両留置のために旧塩尻駅の線路配置を残している。俗に「塩尻大門」と呼ばれ、この付近はデルタ状の線路配置となっている。
10. すべての特急が停車する千種駅
中央本線で特急列車のすべてが停車する中間駅は、東線が八王子、甲府、茅野(ちの)、西線は千種、多治見、中津川、木曽福島、塩尻である。このうち、千種(ちくさ)は読み方を含め、地元以外ではあまり知られていない駅だ。名古屋市内にあり、地下鉄東山線と接続している。島式ホーム1本だけの簡素な駅であるが、名古屋市東部に広がる住宅地の玄関口であると同時に地下鉄に乗り換えれば2駅で繁華街・栄(さかえ)に行けるので利便性が高く、いつの間にか特急「(ワイドビュー)しなの」の全列車が停車するようになった。
中央線については、まだまだトリビア的なトピックがあり奥が深いが、今回はこの程度にしておこう。
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