他人の作ったものが食べられない辛さ

他人の作ったものが食べられない

先日、フリーアナウンサーの夏目三久さんと結婚した有吉弘行さんが、「他人の作ったおにぎりは食べられないけど、(夏目さんが作ったものは)大丈夫」と発言した。彼が言うには「心を許した人がにぎったのなら食べられる」ということらしいが、実際、他人の作ったものを食べられない人はいる。神経質すぎるのか、はたまた「珍しいことではない」のか、いずれにしてもそのために生きづらくなってしまうこともあるようだ。

 

ママ友に噂をたてられて

「私は、他人が作った料理すべてダメなんです。もちろん、プロならいいんですよ。ただ、それが原因でママ友から『変な人』とレッテルを貼られてしまいました」

そう言うのは、ユウナさん(37歳)だ。7年前に結婚、4歳になる女の子がいる。娘ができたときに今住んでいる町に越してきた。共働きなので、娘は小さいころから保育園に通っている。ママ友とのつきあいは薄かったし、休日に遊びに来ないかと誘われても、時間がなくて断らざるを得ないことがほとんど。

「ただ、休日に娘を連れて家族で公園に行ったりするうち、夫が近所にパパ友を作ったんですよ。その家にも娘がいて、うちの子より1つ年上で、保育園ではなく幼稚園に通っているということでした。『お近づきのしるしに、家族で遊びに来て』と言われて。ただ、私、もともと他人の作った料理は食べられないんです。親しい人なら正直に言って、外食で楽しむことはできる。ただ、それほど親しくない人には言えなくて。だから昼間のお茶でもと提案したんだけど、その家の奥さんが料理が得意だということで夕飯になってしまった。私は行くのをやめようかとも思ったんですが、そういうわけにもいかない。夫は、食べるふりをすればいいと言っていたけど、そういうわけにもいきませんよね。結婚前に夫の実家に行ったときは、大家族なので適当に食べたふりをして、あとでおせんべいなどを口にしていましたけど」

招かれた家で、ごく少人数なのに「食べたふり」などできるはずもない。だが、夫はとにかく夫婦で行くと決めたんだからと言うだけ。彼女も覚悟を決めて出かけた。もしかしたら、できあいのものがあって食べられるかもしれないと思ったからだ。

「ところが手作りの料理でした。サラダや煮物でも、他人の作ったものは苦手なんです。ローストビーフをソースなしで少し食べました。あとは娘の面倒をみるふりをして、ほとんど食べなかった。そうしたら翌日から保育園に行って顔見知りのママに会っても、なんだか様子がおかしいんです」

招待してくれた家の奥さんは、地域の妻たちとはかなり親しくしているようで、ユウナさんが自分の作ったものをほとんど食べなかった話を流したようだ。

しばらくすると、保育園でも保護者の集いのようなものが開かれることになった。そのとき、顔見知りのママが、「あなた、人前で食事ができないタイプなの?」と尋ねてきたという。

 

どこまで正直に言うべきか

人の作ったおにぎりが食べられないくらいなら、まだなんとかごまかせるかもしれないが、他人の作ったものはすべてダメとなると、いろいろなところで問題が生じる。

「以前、会社で持ち寄りパーティーがあったんですが、そのときは自分が持っていたものや買ってきたものをひたすら食べていました。人が作ったクッキーなどもダメなので、そのときはちゃんと説明しました。その人との親しさは関係ないんです、私の場合。大きくなったときには母の作ったおにぎりも食べられず、自分で作っていたくらいなので」

精神科に通ったりカウンセリングを受けたりしたこともあるが、他に特に症状があるわけではなく、社会生活もできているので、結局、解決には至らなかった。確かに人が作ったものを食べなくても、日常生活は送れる。

「娘は大丈夫なんです。だから友だちの家に行っても出されるものは何でも食べる。一度、娘が仲良くしている子のママに、打ち明けたことがあるんです。ただ、彼女は『そんなことってあるの? よほどの潔癖症? つきあいづらいわ』と言って去っていきました。娘までとばっちりで仲良くしていたその子とあまり遊べなくなって。娘のためにと無理して食べたこともあるんですが、気持ちが悪くなってしまうんです」

こればかりは人によるし、無理に食べる必要もない。体調のせいにして食べずに逃れるのがいいと夫に言われたと彼女は言う。

「私みたいな人間が他にもいるのかどうかわかりませんが、ママ友とのつきあいって、そういうところでいい人かどうかジャッジされがちなんですよね。おいしいと言って食べてレシピ教えてと言う人が慕われる。私は別に慕われなくてもいいけど、そのとばっちりが娘にいったらかわいそうだなと思って」

娘は今年から小学生になった。それを機会に、今後何かあったら、「私は他人の作ったものを食べられないんです」とはっきり言うしかないと、ユウナさんは最近、覚悟を決めたところだという。
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