アドバイス1 これからは自分のことを考えて、確実に貯蓄をすること
これまで一人でよく頑張ってこられたと思います。長男は独立、長女もあと2年。家族で助け合っていくことは大切ですが、もうこれからは自分のことを考えてください。そのためには、家計の見直しをして、少しでも多く貯蓄できるように改善しましょう。今、貯めておかなければ、結果的に、お子さんの世話になってしまうことになりかねません。もうひと頑張りです。
家計データを拝見すると無駄遣いはなく食費が少ないのが、かえって気がかりになるぐらいです。しかし、ここから少しでも貯蓄をするには、娘さんの協力も必要になってきます。独立している長男の収入がわかりませんが、少なくとも医療保険の保険料は、やはり長男が負担すべきでしょう。また、車での送り迎えをする気持ちは十分に理解しています。しかしコロナ禍がいつ収束するかわからないなか、2万5000円のガソリン代を使い続けるのは、ご相談者の家計では負担が重すぎます。長男と相談して少しでも負担できないか、電車の利用は本当に無理なのか検討してみてください。通信費が高めな事情は理解しますので、大学卒業まではこのままとし、雑費も無駄はないとは思いますが、細かく予算決めして使うようにしてください。
細かいやりくりにはなりますが、支出を調整して、なんとか毎月1万5000円は貯蓄するようにしてください。給料から毎月自動で積み立てるようにし、残りのお金で支出を調整する方法がいいでしょう。ボーナスも30万円のうち20万円は先に貯蓄して残りの10万円は自由に使えるお金としてください。これで年間32万円の貯蓄になります。長女が大学を卒業するまでの2年間で64万円です。
長女が大学を卒業した段階で、通信費の見直しです。頑張れば1万円は削減できるのではないでしょうか。これで毎月の貯蓄は2万5000円に増やせます。ボーナスからは変わらず20万円の貯蓄です。年間50万円貯めることができるようになります。
2年後は、ご相談者は51歳ですから60歳までの9年間、このペースを維持していけば、450万円貯蓄できます。最初の2年で貯めた64万円と現在の貯蓄50万円を加えると、564万円になります。この間、車の買い換えがあり、予算100万円とすると、残りは464万円。これが、60歳時点で残せている貯蓄となります。
アドバイス2 60歳までに貯めたお金はキープして取り崩さない
65歳までは嘱託として働けるとのことですから、60歳から65歳までは貯蓄ができなくても構いませんので、収支プラスマイナスゼロとし、貯蓄からの取り崩しはできるだけしないように心がけてください。65歳から公的年金の受給が始まります。追納できるのであれば、追納してください。現在の見込み額は年額約74万円ですが、満額に近づけることができれば、それが生涯続くわけですから、追納金は数年で元が取れますし、少しでも年金額を増やしておくことは大切です。
ただし、それでも公的年金だけでは生活は厳しく、収支がトントンになるようにパートやアルバイトなどで収入を得る必要があります。やはり464万円は突発的な出費に備えて、できるだけ生活費の補てんで取り崩さないようにしていただきたいと思います。
いつまで働けばいいのか、となってしまいますが、細く長く働くことは避けられません。健康にだけはくれぐれも注意なさってください。
アドバイス3 ご実家と自宅のダブルコストの解消も検討して
ご実家については、今のところは現状維持で過ごしていくことになるかと思いますが、いずれは介護などなんらかの対応が必要になってきます。その時に、どのように対処するのかは、あらかじめお母さまご本人はもちろんのこと、お姉さまとも話し合われておくことをおすすめします。現在、同居は考えておられなくとも、それぞれが一人暮らしですから、生活コストは2倍かかっていることになります。ご相談者の貯蓄のペース次第でもありますが、生活コストを下げるためには同居も選択肢のひとつになります。適度な距離を保って生活していることも大切です。今すぐにどうする、ということではなく、将来のイメージとして念頭に置いておくといいでしょう。
まずは、毎月1万5000円の貯蓄。ここからはじめてみてください。
相談者「いぬ大好き」さんから寄せられた感想
お世話になっております、いぬ大好きです。深野先生、このたびはアドバイスありがとうございました。このような内容なので相談に乗っていただくのは恥ずかしかったのですが、自分1人ではどうしようもなく何より危機感のほうが強かったので思い切ってご連絡を差し上げた次第です。お叱りを覚悟しておりましたが、わたしの状況を否定なさらず温かいお言葉に涙があふれました。いただいたアドバイスはすぐに印刷し、いつでも手元に置いております。父を亡くし、今後のことについて母・姉と話し合いをする必要は分かっていたのですが気持ちがついていきませんでした。深野先生に背中を押していただいたことで話し合いをする気持ちが持てました。いただいたアドバイスはわたしの教科書として大切にして、一刻も早く1万5000円の貯蓄をするようがんばります。心より感謝いたします。また悩みができたらご相談させていただきたいと思います。ありがとうございました!●All AboutマネーがYou Tubeで『2分でお金が貯まる人になる動画』を公開開始しました。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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