新型コロナウイルス検査、市販キットの精度・結果は信頼できるのか
新型コロナウイルスの市販検査キットは安くて便利なのでしょうか? 検査の精度や意味について、正しく理解しておく必要があります
2021年3月26日、新型コロナウイルスの検査キットを不当な表示で販売したとして、消費者庁が数社に対し行政指導を行ったことを発表しました。その後、厚生労働省が医療用で使用されている抗原キットを市販化することになりました。
厚生労働省は、現在「新型コロナウイルス感染症の一般用抗原検査キット(OTC)の承認情報
」で、一般用抗原検査キット(OTC)として承認された製品を紹介しています。
これを踏まえて、現在の新型コロナ感染症検査について、わかりやすく解説します。
新型コロナ感染症「抗原検査」「抗体検査」の違い・特徴
新型コロナウイルスの検査法として、よく聞く「抗原検査」「抗体検査」。ごく簡単に言うと、- 「抗原」……ウイルスの一部
- 「抗体」……ウイルスの一部に対して体内にできるタンパク質である免疫グロブリン
体内にウイルスがあれば抗原検査で陽性になります。検査時点でウイルス感染の早期であれば「IgM抗体」が確認でき、以前感染していたもののウイルス自体は体内にほぼなくなっている状態であれば「IgG抗体」が確認できます。このウイルスに対してできた抗体が、ウイルスを中和する抗体であれば、それ以降再びウイルス感染した場合に役立つ免疫と判断されます。ただ、抗体検査の結果だけでは、抗体があっても免疫として有効な中和抗体かどうかまではわかりません。
新型コロナウイルス抗原検査は保険適用される? 検査の種類・流れ・費用
医療機関での検査で、抗原検査で陽性が出た場合、新型コロナウイルスの確定診断となります。陰性だった場合は、確定診断のために再度PCR検査が必要です。ただし、発症2~9日以内の有症状者については、抗原検査キットとPCR検査の結果の一致率が高いため、この時期に抗原検査が有用となっています。医療機関での抗原検査の費用は陽性か陰性の判定のみの定性で3000円、定量で5600円で判定料を加えて、その自己負担分になります。感染症法の2類での保険適用で行われる検査の場合、検査を受ける人自身の負担はありません。ただし、今後、感染症法の分類によっては変わってくる可能性があります。
PCR検査が抗原検査より正確な検査ではありますが、医療機関や検査する場所で行うことになり、感染症法の2類で検査自体は公費負担になっておりますが、今後、保険診療による自己負担が生じる可能性があります。
医療機関で使用されている国が承認した抗原検査キットが市販されていますので、在宅で検査できることになっています。
抗体検査は現在保険適応ではありませんので自費です。現在、日本国内で体外診断用医薬品として承認を得た抗体検査はありません。精度については、検査時期や検査方法によりますが、感度が66.0~97.8%まで、特異度が96.6~99.7%と考えられています。抗体検査可能な医療機関が限定されています。さらに保険診療ではありませんので、費用もすべて自費です。こちらも大体1~2万のようですが、税金や手技料などを含むか含まないかで違い、医療施設によって異なります。
市販の新型コロナ検査キット、知っておくべき注意点・問題点
消費者庁は、2021年3月26日に新型コロナウイルスの検査キットを不当な表示で販売したとして、数社に対し行政指導を行いました。サイト上でも「研究用抗原検査キット及び抗体検査キットについては、国が認めた体外診断用医薬品ではありません」とし、「自己判断で新型コロナウイルス感染の有無を調べる目的で使用しないようにしてください」と呼びかけてきました。現在は、抗原検査キットについては、国が承認した医療機関で使用する抗原検査キットがあり、主に薬局で購入することが可能になっています。購入する時には、厚生労働省が認可した抗原キットを使用しないと、感度の悪い検査では、新型コロナウイルス感染症になっていても陰性になったり、逆に新型コロナウイルス感染症でもなくても陽性になってしまうと、検査そのものの意味でなくなってしまいます。また、抗原検査キットを正しく使用しないといけませんので、薬局で使用方法について説明を受ける必要があります。しっかりと綿棒でこすらないと陰性になってしまう可能性があります。
抗原キットは新型コロナウイルス感染症の一般用抗原検査キット(OTC)の承認情報で確認してください。
また、抗体検査については医療機関でも保険適応になっていないため、信用性についてはまだ不明な部分が多いと考えられます。
新型コロナ感染や抗体有無が気になる人は医療機関での検査を
もし新型コロナウイルスに感染していないか不安でどうしても調べたい場合は、医療機関で検査を受けるか、自治体が推奨しているPCR検査場での検査をお勧めします。ただし、何らかの症状があって、気になる場合は、より精度の高い検査を受けるのが大切なことはもちろんですが、検査結果をどう考えるかを教えてもらうことも大事です。医療機関では検査を行う際に、精度についても説明があり、それは100%常に正確な検査はないからです。
新型コロナに感染しているか不安な人、また、抗体があるか調べたい人は、信頼のおける医療機関で検査を受けることで、検査自体の意味について正しく説明を受けられることができますので、自分の状況によって医療機関を受診することもあるかと思います。ただし、医療機関は感染症以外の疾患を診療する場でもありますので、医療機関に集中しないことが望まれます。
その意味で、在宅での検査は1つの方法になっています。
■参考
・新型コロナウイルスの研究用抗原検査キット及び抗体検査キット使用についての注意(PDF)(消費者庁)