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All About Japan編集部「世界のSDGs特集」とは?
現在、193か国が2016年から2030年の15年間で、SDGs(Sustainable Development Goals持続可能な開発目標)という目標が設定されています。様々な社会課題に「とも(コレクティブ)に動く(アクション)」ことを目指し、コレクティブインパクトの手法で、社会実装を実現していきたいと考え、All About Japan編集部では「世界のSDGs特集」の記事を作りました。今回のテーマは、SDGsの「食品ロスゼロ」に注目します。世界の貧困地域では食品が足りていない一方で、先進国では食品が大量に廃棄されているという現状を解消する必要があります。各国の食品ロスゼロへの取り組みを紹介することを通して、日本に生活している方へのヒントになり、目標の達成と食品ロスゼロの実現に推進することができれば幸いです。
アメリカ学校にある給食事例。(画像引用元:Upsplash. 写真家:Cristiano Pinto)
アメリカでの食品廃棄物の対策の一つ「Food Waste Warriors」
米国環境保護庁(EPA)が実施した2018年の調査によると、米国には1,800万トンの食品廃棄物があり、埋め立て地に送られる廃棄物の24%、燃焼される廃棄物の22%を占めています。そこでアメリカでは食品廃棄物の対策の一つとして、小学校から高校で実施する「Food Waste Warriors」というプログラムを実施しました。大小を問わず問題に対処するため、意識を高め、個人が行動を起こす力を与えるために重要な部分は教育です。教育の形成期に食品廃棄物への意識を作成できれば、長期的な習慣の基盤となるはずです。学校はライフスタイルや社会変化のための非常に価値のある環境なのです。それでは学校で実施する「Food Waste Warriors」について、詳しく見ていきましょう。食品ロスについて学んでいる生徒たち。(画像引用元:WWF Food Waste Warriors)
食品ロスについて意識するため、学生は「Food Waste Warriors」になる
「Food Waste Warriors」は、世界自然保護基金(World Wildlife Fund, WWF)が、2019年にKroger Co. FoundationとEPAの支援を受けて学校向けに作成した初めてのプログラムです。2018-2019学年度(アメリカでは学年は9月から翌年6月まで)の1月から6月まで、八つの州の九つの都市にある46の学校で、学生主導の食品廃棄物監査をカフェテリアで実施しました。監査とともに、学生が経験を通じて学ぶことができるように環境保全に関する数学と科学のカリキュラムの作成にも取り組みました。プロジェクトの主な目標は二つあります。- 食品、食品廃棄物、動植物およびその環境への影響の関係についての理解を深めるために、食品廃棄物を測る行為に学生を参加させること。
- プロジェクトを拡大し、複製し、全国の学校の食堂で統一された食品廃棄物削減の対策ができるように、監査とデータ収集の方法を現実化すること。
知られていない方もいると思いますが、アメリカの学校給食は日本とは結構違います。日本の学校で提供される食事は、普通にカロリーが十分あって、栄養価が高く、統一する(生徒の皆、同じ物を食べさせる)ものですが、アメリカの学校給食の形は学校によって異なります。いくつかの定食オプションがある学校もあれば、学生が様々な種類の食べ物から選択する必要があるビュッフェスタイルの選択肢がある学校もあります。学年が進むと選択肢も増える傾向があります。例えば高校では、生徒は昼食時に学校を離れて外食することさえ許されるケースもあります。
昼食時の監査では、教職員と学生の両方が協力して、様々な主要な指標を登録しました。その指標の中には、昼食時の生徒の人数、各生徒の学年、出された食品の量と種類、および様々なカテゴリー(果物と野菜、牛乳、リサイクル可能な材料など)の残り物が含まれ、測定されました。学生一人当たりの食品廃棄物をポンドで計っていました。監査の主なステップは三つです。
- 食べ終わった生徒はランチトレイを収集場所に運ぶ。
- インタビュアーは生徒に質問し、どの食べ物が食べてなかったかをマーク。
- 食品は、食品廃棄物、回収可能な食品または飲料、およびリサイクル可能な材料を測定するために、カテゴリー固有の容器に分ける。
学年が進むにつれて食品廃棄物の量が減少する傾向あり
学年による食品ロス。(画像引用元:WWF Food Waste Warriors)
想像しにくい数字なので、理解するための事例を入れたいと思います。平均的な車の重量は約2,870ポンド(約1,300kg)です。つまり、上の小さな学校でも1年間で約7台分の食料を無駄にしています。これを全国で推定すると、食品廃棄物は年間53万トンにもなる可能性があります。カテゴリーごとの食品廃棄物の内訳は、果物と野菜の廃棄物が約32%、牛乳の廃棄物が26%、その他の食品廃棄物が42%でした。
学校に依存した興味深い要因の一つは、オファーかサーブ(offer vs serve)のポリシーでした。一部の学校は同じ昼食を「serve(決まった食品を提供)」し、他の一部の学校は「offer(食品を生徒が選択)」します。この「offer」は、生徒が食べるつもりのない食品を拒否できることを意味し、おそらく全体的な食品廃棄物を削減する目的のポリシーです。
しかし、昼食を「offer」する学校は、すべての学年の生徒の間で最も高い廃棄率を示しました。考えられる理由の一つは、学生は「serve」ポリシーに慣れており、選択できるにもかかわらず、すべての食品を一つ選択するように奨励されていると感じていることです。昔から持っている習慣を破るのは難しいのかもしれません。
おそらく最も興味深い傾向は、学年が進むにつれて食品廃棄物の量が減少する傾向が見られることです。つまり、小学生の1年生は、全く同じ給食を提供されている場合、4年生よりも多くの食べ残しを生み出す可能性が高いです。いくつかの原因があるかもしれません。一つには食欲です。幼稚園生は5、6年生の食欲とだいぶ異なっています。同様に、給食の時間の長さが役割を果たしました。学生が成長するにつれて、時間管理がうまくなります。ただし、原因を明確に把握するためには、さらなる研究が必要です。
食品ロスと戦う「Food Waste Warriors」は何%削減できたか
栄養のいい食材。(画像引用元:Unsplash. 写真家: Ella Olsson)
良い結果から始めましょう。監査とカリキュラムを終了後、全部の学校の食品廃棄物、3%削減を記録しました。実際、小学校では14.5%とはるかに大きな減少が見られました。上記の数値を使用すると、この削減量は、生徒一人あたり年間1.17~5.65ポンド(約.5~2.56 kg)の範囲であり、全部の学校と合わせると大きなインパクトを見られる可能性があります。3%削減はそれほど多くないように思われるかもしれませんが、学校が全国的に廃棄物を削減できた場合(これも年間53万トンと推定されます)、1年間で12,400台の乗用車を廃棄すると同じ環境への影響があります。
また3%削減には、潜在的な埋め立てごみの削減を数えていません。この研究では、本物の銀器と再利用可能なカップを備えた再利用可能なトレイで昼食を提供することにより、他の埋め立てごみ(使い捨てトレイ、プラスチック製の銀器、牛乳パックなど)が大幅に削減されることもわかりました。
これらの変更により、学校のシステムにも大きな経済的節約がもたらされる可能性があります。学校での全国的なミルク廃棄物は、4,500万ガロン(約1億7000万リットル以上)にもなる可能性があり、これは約1,380億米ドル(約14兆円以上)の経済的損失に相当します。この調査では、ミルク廃棄物が平均12.4%削減され、年間約1,700万米ドルの節約につながる可能性があります。
このテーマについてさらに研究する必要はあります。しかし、それが行動や生活の変更につながらなければ、世界中のすべてのデータは重要ではありません。
次のステップ:個人に、社会へ
一人でも何ができますでしょうか。(画像引用元:Unsplash. 写真家:Antor Paul
WWFとEPAには、個々の貢献者と大規模な組織や会社などのために、実行可能な次のステップに関する多くのガイドラインがあります。非常に重要なことの一つは、このような研究を全国規模に拡大して、より正確なデータ収集を行うことです。これにより、より具体的な意思決定と政策決定に情報を提供できます。インセンティブプログラムを作成することは、このようの研究に従事する予算がないかもしれない学校を助けることができます。
もう一つの大きなステップは、生徒が参加して学習できるようにすることです。教育制度は、食品の再生や廃棄物の削減からコミュニティの組織やリーダーシップに至るまで、長期的な習慣を生み出すための貴重な環境です。意識を高め、環境にポジティブな影響を与えることが早めにできれば良いです。
個人として、特に親として、これらの基本は家庭でも実施されることが重要です。環境を尊重し保護するという私たちの個人的な責任を無視することはできません。より環境に優しいライフスタイルを送るための小さな一歩でも、永続的な影響を与える可能性があります。
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執筆者:リッチ・ニコラス(All About Japan 英語 編集リーダー)
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