思春期に必要な「心理的離乳」……親の影響から離れること

背中を向きあう親子

思春期に多い親子の衝突。子どもが親を否定する理由とは?

子どもは思春期に入ると、親との関係に距離をとろうとします。親が近寄ると席を立ったり、家族の団らんや家族旅行を嫌がったりすることも……。こうした行動は「自立」の一環。親ばなれをして自分の世界を築こうとする、こころの表れなのです。
 
思春期の子が親ばなれすることを、心理学では「心理的離乳」と呼びます。親の影響から離れて物事を見たり考えたりして、自分の価値観をつくっていこうとすることです。まるで赤ちゃんの乳ばなれのように、それまで頼っていた「親」という心の支柱を必要としなくなります。
 
心理的離乳には、「父親ごろし」「母親ごろし」が必要だとされています。言葉は強烈ですが、暴力的な意味ではありません。「父親」「母親」という絶対的な存在に影響されず、自分の力と価値観にしたがって生きていこうとすることなのです。
 

映画やアニメに見る子どもの自立……「父親ごろし」「母親ごろし」

「父親ごろし」や「母親ごろし」のテーマは、青春物語の定番です。名作映画『スターウォーズ』は、主人公の青年ルーク・スカイウォーカーが父親ダースベイダーに戦いを挑む物語です。名作アニメの『銀河鉄道999』は、少年星野鉄郎が女王プロメシューム(悪い母親的存在の象徴)を滅ぼす物語です。
 
親ばなれをする子にとって、親という存在は乗り越えるべき“壁”です。乗り越えることができないと、親は“脅威”としてイメージされます。すると、子は親を乗り越えるより、親に従って生きるほうが妥当だと判断してしまいます。
 
よって、親は子にいずれ「乗り越えられる運命」だと心得ることが肝心。子が反抗したとしても、一方的にねじ伏せないことです。とはいえ、たやすく負けてあげると子どもは自分の力を過信し、成長することができません。コロリと倒せる親のことなど、尊敬もできないでしょう。
 

「通過儀礼」の乏しさが「親ばなれ」不全の原因に?

子どもが親から自立するには、「通過儀礼」が必要です。通過儀礼とは、子どもを大人社会の一員として認める儀式のこと。バンジージャンプはかつて南国で行われていた通過儀礼ですし、日本の農村にも米俵担ぎなどの通過儀礼がありました。
 
通過儀礼に挑む子は、親以外の大人に課せられた課題をクリアし、恐怖に打ち勝つ根性を見せること、一定の能力や技能があることを証明しなければなりません。そして、通過儀礼を越えた後は、もはや「子ども扱い」はされません。大人と共に義務と責任を背負い、大人社会に仲間入りするのです。
 
現代っ子は、こうした通過儀礼的な経験があいまいなまま、年齢を重ねていることが多いです。実際に、大人になっても親に身の回りの世話を受けながら生活している人は、少なくありません。しかし、そのままでいると、いずれは心のどこかに不全感を抱えやすくなってしまいます。

時代錯誤な通過儀礼を課す必要もありませんが、現代の若者にも、親という壁や試練を乗り越えて「大人になれた!」と実感する体験が必要です。若者はみな心のなかに「自立心」を抱えています。胸を張って「大人社会の仲間入り」をしたいと、心の底では願っているのです。
 
親は子どもに「親ばなれ」を促すことが必要ですが、そのためにはまず、親自身が「子ばなれ」する必要があります。しかし、「子ども中心」の考え方やライフスタイルから抜けられないでいると、その任務を果たすことができません。
 

親以外の「他者とのかかわり」で子どもは自立する

子どもが社会に巣立つには、自分で不安を乗り越え、努力で敵と戦う力を養うことが必要です。そのプロセスに、親はできるかぎり介入しないことです。大人の階段を上る子どもたちは「一人」ではないのです。
 
ルーク・スカイウォーカーのそばに「オビ=ワン・ケノービ」や「ハン・ソロ」が、星野鉄郎のそばに「メーテル」や「キャプテンハーロック」がいるように、自立する道のりでは指導者や仲間、異性との出会いがあります。つまり、子どもは親以外の「他者とのかかわり」によって自立していくのです。
 
「親」という字は「木の上に立って見る」と書きます。つまり、子どもがころんでもつまずいても、自力で立ち上がることを信じて見守るのが、親のつとめです。もちろん、子どもが危険に陥りそうなときには、すぐに木から降りて救う必要があります。そのためにも、思春期のうちは、できるかぎり目の届く場所で子どもを見守るほうが、安全でしょう。
 
子どもが思春期に入ると、親子関係に亀裂が入ったようで、寂しさやむなしさを覚えることもあるかもしれません。でも、それもいっときのこと。子どもが心身共に成熟すれば、親の恩に感謝し、親に導かれた子ども時代を肯定的に理解します。思春期は、大人になるための“旅立ち”の年代です。子ども自身に内在する力を信じて、見守っていきましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。