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SNSは心の健康に良い? 悪い? 複数の調査から見えたSNSの使い方とメンタルへの影響

SNSの利用は心の健康にどのような影響を与えるのでしょうか。様々な研究結果から、プラスに働く場合とマイナスに働く場合があることが分かっています。サービスによる違いもあります。プラス、マイナスそれぞれにつながる理由と、適切な使い方までを解説します。

高橋 暁子

執筆者:高橋 暁子

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東京都健康長寿医療センターが2021年3月に発表したSNSの利用状況と精神的な健康(メンタルヘルス)との関連に関する調査研究結果が話題となっています。元々他者との交流が健康維持にきわめて重要なことは分かっていますが、SNSなどのオンライン上の交流であっても有効かについて調査したものです。

それによると、LINEを定期的に利用している人は精神的に良好である一方で、Twitterを定期的に利用している人は孤立感を抱いていることが多いという結果になりました。若年者ではInstagram、中年者ではFacebook、高齢者ではLINEを定期的に利用していると良好な傾向にあるといいます。
 
SNSの利用と心の健康にはどのような関連があるのでしょうか。様々な研究や調査結果から紐解いていきましょう。
 

友人知人との交流がオンオフともに大切

SNSの利用と心の健康

各SNSが心の健康に与える影響とは

先程の調査結果は、単純にLINEが心の健康によくてTwitterが悪影響ということではありません。そもそもLINEやFacebookは顔を知っている友人知人とつながるサービスです。若者はInstagram、中高年はFacebook、高齢者はLINEを友人知人とのメインのコミュニケーションツールとしていることが多いものです。
 
一方Twitterは知り合いかどうかではなく、興味関心でつながるツールであり、匿名で利用されることが多いものです。つまり、顔見知りの親しい友人知人との交流があることが、心の健康に役立つと考えられるのではないでしょうか。
 
調査結果でも、SNS以外のコミュニケーション(対面での会話や電話)頻度も全世代を通じて精神的健康に関連していました。対面とSNSをバランス良く取り入れ、親しい友人知人と交流することが大切なことが分かる結果といえるでしょう。
 

SNSの長時間利用は心に悪影響?

一方、SNS、特に長時間利用が心に悪影響を与えるという調査研究は多数あります。
 
有名なのは、2017年のイギリス王立公衆衛生協会(RSPH)による研究です。14~24歳の若者を対象に、YouTube、Instagram、Snapchat、Facebook、Twitterを比較した結果、Instagramがもっとも心の健康に悪い影響を与えることがわかりました。Instagramは不安感や孤独感、いじめ、外見への劣等感などの悪影響が一番高くなったのです。
 
Instagramに次いでマイナスの影響が大きかったのはSnapchatで、Facebook、Twitterと続きました。一方YouTubeは、不眠こそ強くなったものの、孤独感の解消などにプラスの影響があったのです。
 
2018年10月、米国ペンシルベニア州の研究者がJournal of Social and Clinical PsychologyにSNSの利用と心の健康の関係について興味深い研究を発表しています。
 
大学生を対象に、Facebook、Instagram、Snapchatの利用を合わせて30分に制限したところ、制限しないグループに比べて、落ち込みと孤独が大きく改善されたのです。友人や高校時代の知り合いの写真を見る時間を減らすことで、落ち込んだり、孤独を感じることが減少したというのです。
 
こんな研究結果もあります。2019年9月11日、米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のKira Riehm氏らが「JAMA Psychiatry」に発表しました。12~15歳の男女を対象としたこの研究では、1日3時間以上ソーシャルメディアを利用する10代の若者は、うつ病、不安、攻撃的行動、反社会的行動などの精神的健康上の問題を発症する可能性が約2.5~3倍に上るそうです。

このように、多くの研究結果でSNSの長時間利用は心に悪影響を与えるといわれています。では、なぜ長時間利用が心の健康にマイナスに働いてしまうのでしょうか。
 

使い方次第でプラスにもマイナスにもなる

SNSの適切な使い方は

SNSの良い面、悪い面

SNSの利用が精神状態に何らかの影響を与えることは、正直、多くの人が感じていることではないでしょうか。
 
「自分が不調な時にInstagramやFacebookを見ると、周りの人はみんな社会的にも成功していて、家族や恋人にも恵まれて、幸せそうに見える。それに比べると自分は……と落ち込んでしまう」という話は何度も耳にしました。「落ち込むから見たくないのに見ないではいられない」「したくない『いいね』をしてより一層落ち込んでしまう」そうです。

先程ご紹介した調査結果でも、おそらく同じような心理が働いたと推測されます。自分と友人知人を比較することで落ち込んだり、誘われていない会合を知って孤独を感じたり、自分にはしないのに別の友だちには「いいね」をする人を見て落ち込むなどです。しかし、どれもあくまで一面を切り取っただけのものであり、考えても意味のないことです。
 
また、そもそもInstagramやFacebookはいわゆるリア充写真などを中心に投稿する場であり、それ以外のことはほとんど投稿されない場です。たとえば高級レストランに行ったことは投稿しても、ファストフードに行ったことは投稿しないというだけなのです。そういう場だということを分かった上で利用するか、それができないのであれば利用は制限したほうが心の平穏につながるかもしれません。
 
SNSは、冒頭の調査結果でも分かる通り、心の健康に悪いばかりではありません。元々は、人と人とをつながりやすくするためのサービスです。例えばコロナ禍の全国一斉休校のときには、多くの若者にとって、SNSやオンラインゲームで友だちとつながれたことが救いになったそうです。「直接会えないけれど、友だちとやり取りすることで孤独ではなくなった」と多くの学生が言います。
 
このように親しい人とのつながりを感じるために使うのであれば、SNSは心の健康にプラスに働くでしょう。けれど、自分と周囲を比較したり、落ち込んでしまうような使い方をしているのであれば、利用時間を制限したほうが心の健康のために良さそうです。SNS自体が心の健康に良いとか悪いということはなく、あくまで適切な使い方ができるかどうかということなのです。

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