人間関係

夫との関係が苦しい… DV被害を受けている女性に避けてもらいたい3つの行動

配偶者や恋人など、親密な関係性の中で起きる暴力のことをDVといいます。DV被害の苦しみの中、助けや癒しを求める行動を取るのは自然なことです。しかし、さらに状況が悪化したり、自分を窮地に追い込んでしまうものもあります。DV被害を受けている時に避けた方がよい行動について知っておきましょう。

福田 由紀子

執筆者:福田 由紀子

臨床心理士/メンタルケア・子育てガイド

DV被害を受けている女性に避けてもらいたい行動がある

子犬と女性

つらさから逃れるために取る行動が、DVを悪化させてしまうこともあります。自分を追い込まないための、適切な対処法を選びましょう。

配偶者や恋人など、親密な関係性の中で起きる暴力のことをDVといいます。自分のことをいちばん大切にしてほしい人からの暴力は、体にも心にも大きなダメージを与えます。自分の状態を客観的に見られなくなったり、自己評価が低下してしまったり、判断力が低下するのも被害による症状です。
 
DVとは、力の差を背景に、相手を支配し思い通りにコントロールすることです。身体的な暴力がなくても「夫の顔色を見てしまう」「夫が帰ってくる時間になると動悸がする」という場合はDVである可能性が高いと考えてください。
 
そうした中、助けを求める行動によって、さらに状況が悪化したり、自分を窮地に追い込んでしまうこともあります。DV被害を受けている時に避けた方がよい行動と、自分や子どもを守るための適切な対処法について知っておきましょう。
 

1. 知人男性への相談は、百害あって一利なし

夫のDVについて身近な男性に相談すると、DVを悪化させるおそれがあります。
 
夫の暴力や暴言に傷つき、混乱し、男性の心理を知りたいと、友人や同僚に相談する人もいれば、他の男性につい頼りたくなってしまう人もいるでしょう。
 
しかし、男性だからといって、妻や恋人に暴力を振るわない男性には、DV加害者の気持ちはわかりません。加害者要素のある男性なら、夫の肩を持ったり、夫と同じように被害者の落ち度を指摘して、自分の言うとおりにさせようとするでしょう。悩みを聞いてもらってほっとすることはあるかもしれませんが、DVの専門知識を持っていない身近な男性に相談するメリットはほとんどありません。
 
DVの多くは、実家や友人との関わりを制限したり、監視したりする「社会的DV」を伴っています。加害者は自分に自信がなく嫉妬深いので、男性との関係を疑って逆上し、束縛がエスカレートすることも、しばしば起こります。
 
相談していた男性と恋愛関係になってしまうと、妻としての立場は更に弱くなってしまいます。不貞行為の慰謝料を請求されたり、離婚の際に子どもの親権を取れなかったり、子どもの信頼を失ってしまうことにもなりかねません。
 
「もとはと言えば、夫のDVが原因」と思うでしょうし、愛されたい大切にされたいと思う気持ちは自然なものです。しかし、DV被害を相談した相手と恋愛するのはおすすめできません。DVの相談に乗っているうちに性的な関係になってしまう男性は、弱みにつけこんでいるか、浅はかかのどちらかだからです。
 
弱っている時には、優しい言葉をかけられるだけで魅力的に見えたりします。DV男からようやく逃げられたと思ったら、次もまたDV男だった、という悲劇はとてもよく起こります。弱っている時に「運命の出会い」はやってこないということは心に刻んでおきましょう。

DV夫にふたりで慰謝料を払って離婚するという方法もありますが、おそらく困難を極めます。本当にあなたを愛しているなら、見切り発車の恋愛関係で状況を悪化させたり、子どもを手放すリスクを負わせたりすることなく、離婚が成立するのを待てるはずです。
 

2. DV被害を受けている身近な女性に相談しても、解決策は浮かばない

では、女性に相談すればいいのか、というと、女性なら誰でもいいというわけでもありません。同じような境遇にある女性、つまり、今現在DV被害を受けている身近な女性に相談するのはやめましょう。
 
DVは加害者の問題であり、被害者は悪くないのですが、DVを受けていることを「恥ずかしい」と感じる被害者は少なくありません。加害者から「お前が至らないからだ」「お前が俺を怒らせた」と言われ続けてきているからです。
 
DV被害を「恥ずかしい」と思っていると、自分と同じようにパートナーから暴力を受けて、傷ついている女性のほうが相談しやすいと感じてしまいます。しかし、そこでの共感は、傷を舐め合い、お互いに我慢をし続ける方向に向かいがちです。「それくらいたいしたことない」「男とはそういうもの」「離婚したら子どもがかわいそう」など、第三者から言われたら二次被害と感じるような言葉も、同じ経験をしている女性からだと、励ましに聞こえたりするのです。
 
同じような経験をした人に話をしたい、話を聞きたい場合には、DV被害者の「自助グループ」に参加しましょう。そこには、同じように悩みながら自分の人生を切り開きつつある、先行く仲間がいますので、たくさんのヒントを得られるはずです。
 
また、DVから逃れ、自分の生活を立て直し、生き生きと暮らしている女性が身近にいるなら、建設的なアドバイスをもらえるでしょう。
 
なお、夫の親に相談して、夫のDVを止めてもらおうとする人は多いですが、多くの場合、一時しのぎにしかなりません。なぜなら、夫の両親はわが子である夫がかわいいし、息子の面倒を見てくれる嫁がいなくなるのは困るからです。DV加害者の多くは、DV家庭で育っています。DVの背景にある「妻は夫を立てるべき」「妻は夫に従うべき」といった価値観は、夫が義両親の関係性から学んだものである可能性が高いということを頭に入れておきましょう。
 
最も頼りになるのは、DVに詳しい、地域の女性相談員です。相談員には守秘義務がありますので、相談した内容が他に漏れることはありませんし、支援の経験も、知識も豊富です。また地域の様々な支援機関とのつながりも持っています。
 
DV相談ナビ「#8008(はれれば)」に電話すると、近くの「配偶者暴力相談支援センター」につながります。また、市区町村や都道府県の男女共同参画センターなどにも「DV相談」や「女性相談」が設置されていますので、一度相談してみましょう。自分がこれからどうしたいのかが見えてくると思います。相談=離婚ではありません。
 

3. 新しくペットを飼うのは慎重に

夫からのDVがつらすぎて、癒しを求めてペットを飼い始める人がいます。ペットを飼うことで夫婦関係が好転するのではないかという期待をこめて、あるいは、わが子が少しでも安らげるようにという思いからペットを迎える人もいるでしょう。しかし、ペットがいるためにDV夫から離れるのが難しくなってしまうことが少なくありません。
 
悔しい話ですが、日本では未だ、DV加害者が家を出るのではなく、被害者が家を出ることが大半です。離婚調停を申し立てるにしても、DVは別れ話の時に最も危険な状態になるため、別居してから調停という順番が安全です。
 
ペットは飼い始めると大切な家族になります。ですから、家を出る時にはペットも一緒に、と思われることでしょう。しかし、ペット可の賃貸物件は少なく、猫だとかなり物件数が絞られます。家賃も高めに設定されているため、別居のハードルが上がります。また、命に関わるような身体的暴力を受けている場合、警察や配偶者暴力相談支援センターを通じて、一時保護の支援が受けられますが、ペットと一緒に入れるシェルターはごく一部ですので、他の方法を考える必要が出てきます。
 
夫の元に残していけば十分に世話をしてもらえないんじゃないか、虐待されるかもという不安があり、「ペットがいるから離婚できない」と悩む人は少なくないのです。
 
ですから、DV被害を受けている人が、新しくペットを飼うのはお勧めできません。既にペットがいて、連れて行きたいと思っている人は、離婚の手続きについて調べるとともに、ペットをしばらく預けられるところの目星をつけておくことが必要です。
 

最後に……自分を責めないで

ここまで、DV被害がある時のおすすめできない対処法についてお話ししてきました。DVが悪化する危険のある行動は、できれば事前に避けてほしいと、祈るような気持ちで。
 
しかし、苦しいときに身近な人に相談したり、癒しを求める行動は、人として自然なものです。もしも、ご自分がDV被害を受けていて、上記3つの行動に心当たりがあったとしても、決してご自分を責めないでください。そして、絶望しないでください。

 
DV相談+

チャットやメールでも相談できます。

DVから逃れる方法は、どんな状況になっていたとしても、必ずあります。DVは徐々にエスカレートしていきますので、これ以上悪化する前に、地域のDV専門相談員の力を借りてください。相談してもうまくいかなかった、ということもあるかもしれません。しかし、気持ちに寄り添い、一緒に考えてくれる相談員は必ずいますので、あきらめずに探してください。暴力や暴言におびえることのない、自分らしい人生を取り戻しましょう。
 

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