預金・貯金/平均貯金額はいくら?

収入増加と株価上昇で家計の貯蓄の平均値は1721万円に?中央値が900万円

金融広報中央委員会が毎年公表する「家計の金融行動に関する世論調査」の2020年版が例年と比較して約3カ月遅れで公表されました。調査によれば2人以上世帯が保有する家計の金融資産額の平均値は1721万円と前年より184万円の増加となりました。中央値も100万円増の900万円となっています。保有金融資産の内訳と大幅に増加した背景を見ていくことにしましょう。

深野 康彦

執筆者:深野 康彦

お金の悩みに答えるマネープランクリニックガイド

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100万円超も金融資産額は増加した

新型コロナ禍(2回目の緊急事態宣言時)であることから、はたまた例年より約3ヵ月公表が遅れたからか金融広報中央委員会が毎年公表する「家計の金融行動に関する世論調査」の内容がほとんど報道されていません。筆者もやや気がついたのが遅くなり、その内容を皆さんにお伝えするのが遅れたことをお詫びしたいと思います。その結果は、新型コロナで収入が減少しているにもかかわらず大幅に増加という形となりました。

2人以上世帯が保有する家計の金融資産額の2020年の平均値は1721万円、中央値で900万円でした。前年の2019年が平均値で1537万円、中央値が800万円ですから、それぞれ10%を超える増加となっています。正確には記載の数字は金融資産を保有している家計だけの平均値等なので、金融資産を保有していない世帯を含めた平均額は1436万円、中央値は650万円でした。前年の平均値が1139万円、中央値が419万円ですから、やはり大幅に増えていることがわかります。平均値、中央値からは、保有する世帯と保有していない世帯の格差がコロナ禍でより開いてしまったといえそうです。

1つ注意したいのが、コロナ禍で調査が行われたことから例年と調査方法が変更になっていることです。この記事では前年と比較してデータを解説するものの、やや連続性が薄れている点は理解しておいていただきたいと思います。
 

家計の金融資産は株価に大きな影響を受けた

それでは、金融資産の増減の背景やその目的など子細に家計の内訳を見ていくことにしましょう。

金融資産保有世帯では、現在の金融資産残高が1年前と比較して「増えた」と回答した世帯は27.9%と前年と比較して5.5ポイント上昇しました。他方、金融資産残高が「減った」と回答した世帯は25.9%と前年より3.3ポイント低下しています。

増減の理由をみてみると「定期的な収入が増加したから」が39.9%と前年より0.9ポイントの小幅減少、「定期的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから」が29.9%と前年より2.3ポイント上昇となっています。反対に減少した世帯では「定期的な収入が減ったので金融資産を取り崩したから」が40.6%と前年より3.4ポイント上昇、「耐久消費財(自動車、家具、家電等)の購入費用の支出があったから」が30.5%と前年より2ポイント低下し、「株式、債券価格の低下により、これらの評価額が減少したから」が26.5%と前回より7.7ポイント上昇しました。調査を行ったのが2020年8月7日~9月15日であったことから、株価の下落が保有額の減少に大きな影響を与えたことがわかります。

金融資産構成の前年比較を見ていくと、「現金や流動性の高い預貯金から、長期運用型やリスク資産に振り向けた」とした世帯は7.7%と前年より1.4ポイントの上昇、反対に「長期運用型やリスク資産から、現金や流動性の高い預貯金に振り向けた」としたのは5.3%と前年より0.2ポイント低下しました。この間、有価証券(債券・株式・投資信託のいずれかの保有額が1万円以上の世帯)でみると「現金や流動性の高い預貯金から、長期運用型やリスク資産に振り向けた」とした世帯は14.5%と前年より2.8ポイント上昇しています。
 

依然として老後の生活資金が保有目的のトップ

金融資産の保有目的は「老後の生活資金」が70.0%と最も高く、前年より4.2ポイント上昇しました。次点が「病気や不時の災害への備え」が60.9%と前年より2.9ポイントの上昇です。この2つの目的がトップ2(時に順位が逆転することも)であることは10年以上も変わることはありません。

金融資産の選択の際に最も重視していることは「元本が保証されているから」が26.5%と前年より1.7ポイント低下、「少額でも預け入れや引き出しが自由にできるから」は17.2%と前回より0.4ポイント上昇しました。「利回りが良い」は12.4%で0.9ポイント上昇しました。これを「安全性」「流動性」「収益性」の3基準に分けると、「安全性を重視する」が37.2%と前年より4.7ポイントの低下、「流動性」が24.5%と1.6ポイント上昇、「収益性」が22.0%と前年より3.0ポイント上昇しました。

今後保有を希望する金融商品は「預貯金」が51.1%と前年より7.4ポイント上昇、いずれかの有価証券(債券・株式・投資信託)を希望している世帯は25.4%と前年より10ポイントの大幅上昇となっています。有価証券の中では、株式が前年より6.2ポイント上昇の15.1%、株式投資信託が同5ポイント上昇の10.3%とやや運用に積極性が見られるようになりました。
 

借入金のある世帯、借入額も共に増加

借入金のある世帯は42.9%と前年より1.1ポイント上昇しています。借入金のある世帯のみの借入金の平均額は1609万円、前年より22万円の増加、うち住宅ローンは平均額が1480万円と前年より81万円増加しています。借入金額の中央値は1200万円と前年と変わることはありませんでした。

借入の目的は「住宅(土地を含む)の取得または土地改良などの資金」が66.6%と前年より0.5ポイント低下、「耐久消費財の購入資金」が24.2%と前年より0.1ポイントの低下でしたが、「日常の生活資金」は13.0%と前年より2.7ポイント上昇でした。

コロナからの回復は「K」字型といわれていますが、家計の状況も同様に「K」字型と2極化しているように感じられた「家計の金融行動に関する世論調査(2020年)」でした。

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