団信の疾病特約のデメリット、メリット
まず、団信とは、正式名称を「団体信用生命保険」といい、住宅ローンの債務者が、死亡や高度障害になった場合に備えた保険のことをいいます。万一の場合、その時点の住宅ローン残高が保険金として、住宅ローンの債権者である金融機関に支払われることになります。そのため、債務者の家族は、住宅ローンの返済を免れ、安心して、マイホームに住み続けられる仕組みになっています。最近では、死亡や高度障害になった場合のほか、がん・急性心筋梗塞・脳卒中の3大疾病をはじめ、さまざまな病気やけがによって一定期間働けなくなった場合にも、住宅ローン残高が0円になるような疾病特約が登場しています。
疾病特約を付けた場合のデメリットとしては、たとえば、3000万円を借入期間25年、金利1%、月々11万3061円の返済となるところ、金利が0.2%上乗せされるケースでは、金利1.2%、月々11万5798円の返済となるため、約3000円の負担増となることです。
しかし、一般的な終身がん保険(診断給付金100万円、入院給付金日額1万円)の保険料が、40歳男性の場合、3000円前後必要となることから考えると、金利が上乗せされ、月々の支払いが増えた以上の保障を受けられるといったメリットがあるともいえます。
そこで、さまざまなけが・病気に対応する疾病特約を金利上乗せなしで利用できたり、わずかな負担で付けられたりするため、具体的な疾病特約の内容について、確認していきましょう。
一口に言っても、疾病特約は、さまざま
まず、注目したいのが、金利上乗せなどの保険料の負担増がなく、保障内容を広げられるパターンです。このパターンの代表的なものに、auじぶん銀行の「がん50%保障団信」があります。主な保障内容として、がんと診断された場合、就業不能状態であることを問わず、住宅ローン残高相当額の半分が保険金として支払われるといったものがあります。また、精神障害を除く、すべてのけが・病気で「入院」が継続180日以上となった場合には、住宅ローン残高相当額が保険金として支払われることになります。
次に、金利上乗せの負担増があっても注目したいのが、がんと診断された時点で、住宅ローン残高が0円になるパターンです。このパターンの代表的なものに、三井住友信託銀行の「八大疾病保障(ライトプラン)」があります。
0.2%の金利上乗せがあるものの、急性心筋梗塞、脳卒中、高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎で就業不能状態が12カ月を超えて継続したら、住宅ローン残高が0円になるほか、非自発的事由による失業状態が1カ月を超えて継続したら、毎月のローン返済分相当額の最長3カ月分を保障される失業保障まで付いてくる点で、先行き不透明感が漂うコロナ禍においては、特に、魅力的といえるでしょう。
さらに、地方銀行や信用金庫では、金利上乗せの負担増が大きいものの、それ以上の保障が提供される疾病特約もあります。このパターンの代表的なものに、静岡銀行の「しずぎん全疾病保障奥さまワイド」があります。
がんと診断された時点で、住宅ローン残高が0円になるほか、脳卒中では、言語障害、運動失調、麻痺等の他覚的な神経学的後遺症が60日以上継続した場合、急性心筋梗塞では、労働制限を必要とする状態が60日以上継続した場合、8大疾病のほか、ほぼすべての病気やけがで就業不能状態が継続12カ月以上となった場合にも、住宅ローン残高が0円になります。
これらに加え、配偶者が女性特有のがんと診断された場合には、一時金として100万円(ママの保障)があったり、家族が交通事故による傷害で入院した場合には、1日あたり2500円(家族みんなの保障)が支給されたりするため、0.4%の金利上乗せがあっても、検討に値するのではないでしょうか。
まとめ
以上より、疾病特約によって、さまざまなリスクがカバーされるため、住宅ローンを組むタイミングで、既に加入している保険の見直しなども含め、家計を見直していきましょう。史上空前の超低金利によって、金利だけでは各金融機関の住宅ローンに差がなくなりつつある今だからこそ、金利に加え、疾病特約の保障内容を把握することで、最適な住宅ローンを選択していきましょう。