子育て

サンタを信じないと心が貧しい!? 信じて欲しい親、正体に気づく子どもたち

サンタクロースの正体を子どもが知るのはいつ頃なのかという親の疑問は、「我が子には信じていてほしい」という表れなのかもしれません。サンタクロースにまつわる親の思いと子どもの理解について心理学を交えてお伝えしていきます。

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

サンタを「信じてほしい」と思う親、「いないかも」と気づく子どもたち

親の思いとは裏腹に、子どもたちはサンタさんの正体に気づいていく……?

親の思いとは裏腹に、子どもたちはサンタさんの正体に気づいていく……?

サンタクロースの正体を子どもが知るのはいつ頃までなのかという親の疑問は、「我が子には信じていてほしい」という気持ちの表れなのかもしれません。中には、自分が子ども時代にサンタクロースの正体に早く気づいてしまったので、子どもにはもう少し長い間、信じていてほしいという方もいるようです。

そんな思いのもとで、子どもたちはサンタさんの正体をどういうプロセスで認識していくのでしょうか? 親の「信じてもらいたい」という思いと子どもの「いないかも」の認知の発達について、心理学的な切り口でお伝えしていきます。
 

サンタクロースを信じた派 vs 信じなかった派

子ども時代、あなたはサンタクロースを信じていた派ですか? それとも信じていなかった派ですか? 色々な調査を見ても、だいたい8歳くらいに「サンタさんはいない」ということに気づく子が増えるのだそうです。8歳というと小学校2年生くらい。あなたはどうだったでしょうか?
 
私は小さい頃、わりとファンタジーが好きな子だったので、8歳の段階では疑いもなく信じきっていました。気づくきっかけとなったのが、たしか小学校4年頃のクリスマスショッピング。その日、両親とデパートに行った際、「お父さんとお母さんは別の売り場を見てくるから、あなたたち(妹と)はこの辺りを見て待っていなさい」と言われ、おもちゃ売り場で別れました。しかし数十分経って、オルゴール売り場の前を通ると、「食料品売り場に行っているはずじゃあ?」という、そこにはいるはずのない両親が……。 
 
その年、私はサンタさんにオルゴールをリクエストしていて、しかもちゃんとクリスマスにはオルゴールが届きました。プレゼント自体は“希望通り”のものだったのでとても嬉しかったけれど、内心は複雑で……。40年経った今でもその売り場のことを覚えているくらいですから。でも結局、その売り場での“事件”のことは両親には言わずじまいでした。
 
何で言わなかったんだろうと、今あらためて考えてみました。子どもながら、両親に対し、「信じているそぶり」を通したかったのかなという気もしています。その裏で、「サンタさんを信じてほしい」という親の思いを何らかの形で感じ取っていたのかもしれません。
 

サンタを気づくのは認知の成長でもある

今、私は子どもに関する心理学を専門にしているため、あるものを信じるか信じないかというのは、その子の認知の発達が大きく関係しているのがとてもよく分かります。「信じたい」という夢見る気持ちだけで語れるものではなく、それと並行し、日々成長する“脳”もあるからです。夢を見ていたくても、気づいてしまうのですね。
 
次にご紹介するのは、その気づき方の順序です。アメリカのペース大学のゴールドスタイン教授の研究によるもので、認知発達×サンタさんを信じる度合いをうまく表しています。
 

サンタさんは世の中にたった1人で、ショッピングモールのイベントやテレビ出演、当日はプレゼント配りを行っていると信じている時期
     ⇓
1人ですべてをこなしたり、違う場所に同時に存在するのは不可能。きっとサンタさんには、そっくりの分身のような存在が何人もいるんだと解釈する時期
     ⇓
自分が町で出会うサンタさんは、赤いコスチュームを着ている人間だと理解し始めつつも、その人たちは、サンタさんと連絡が取れる特別な存在だと認識している時期
     ⇓
町で会うサンタさんは人間、でも北極には本物のサンタさんが実在すると信じている時期
     ⇓
「北極には実在する」と確証するだけの証拠は減り、逆に矛盾の方が増え、「サンタさんは実際にはいない」という考えに至る時期

 
アフラックが2012年に行った調査によると、小学校入学前までは多くの子がサンタさんを信じていたのに、小学校の半ばまでに半数以上の子はサンタさんの正体に気づくのが分かります。子どもの認知発達の側面から見ると、小学校に入る以前と以降では、物の捉え方が大きく変わるのでこれは納得の結果。義務教育がどこの国でも7歳くらいで始まるのも、この認知発達が関係していますが、サンタさんの存在の理解についても、小学校入学前後でだいぶ違うのが分かります。
 
つまり、サンタさんの正体に気づくのは、その子の認知の発達も大きく関係しているわけです。親が完全演出をしても、成長がそれを飛び越えていってしまうのですね。
 

サンタさんは親の夢なのかもしれない

サンタさんへの気づきは客観的に物事を捉えられているという成長の証

サンタさんへの気づきは客観的に物事を捉えられているという成長の証

そもそも、「サンタさんをまだ信じていてもらいたい」という思いの背景には、「サンタさんを信じる=心が豊か」「サンタさんを信じない=心が貧しい」のようなイメージがある気がするのですが、実際には、信じていないからといって、しらけているとか、夢がないとかとは違うと思っています。サンタさんへの気づきは、角度を変えて見れば、「順調に客観的に物事を捉えられている」という成長とも取れるからです。
 
一方で、親になってからの方が、「信じていたい」という気持ちが強まる方もいるのではないでしょうか。いずれはだれもが気づくものなのに、自分が親の立場になると、我が子に対し「サンタさんを信じてくれていたらいいな」と期待を持つものです。プレゼントを渡す場面でも、かなり手の込んだイベントを計画するご家庭も多いのではないかと。振り返れば、自分の子ども時代以上に、サンタさんの存在にこだわっているかもという方、結構多いのではないかなと思います。
 
私の子どもはもう中学生ですが、子どもの方からはサンタさんの存在を話題にすることはありません。もうとっくに気づいているだろうに、あえて言わないでいるのでしょう。そう考えると、サンタさんというのは、親が楽しませてもらっている存在なのかもしれません。
 
「もう気づいているのかなぁ」「もっと信じていてほしいなぁ」と気になっている方も、クリスマスは、親の夢を子どもたちが叶えてくれているイベントだと思ったら、「よし自分が楽しんじゃおう!」と思えそうです。子どもたちだって、信じていないとクリスマスが楽しくなくなるわけではありません。信じていようがいまいが、みんなが楽しければいいのでは? もうすぐクリスマス、我が家も楽しませてもらおうと思います。
 
【参考情報】
アフラックの贈りモノ&贈りコト調査2012~贈りモノ編~ サンタクロースを長く信じていた人ほど “リア充”なクリスマスを過ごす!?

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