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「三つ子の魂百まで」…幼い頃の親の関わりの大切さを伝えることわざ
古くから言い伝えられてきた教訓や風刺の意味を含んだ言葉であることわざですが、「三つ子の魂百まで」という言葉を一度は耳にしたことはあるでしょう。このことわざは、乳幼児期の親の関わりの重要性を伝えており、子育てと関係が深いものです。もう少し正確に説明すると、 意味は「幼いころの性格は、年をとっても変わらない」ということです(参照:デジタル大辞典/小学館)。
「三つ子」というのは「幼い頃」「幼少期」の意味で、「百」は「年老いても」という意味を表しており、3歳や100歳と具体的な年齢を示している訳ではありません。
そして「魂」とは、性格を意味しています。
間違いやすい使われ方、「魂」はスキルや知識ではない
間違った解釈で使われがちなのは、スキルや覚えたことに対し、使われることです。例えば、
「幼い頃の習い事のスキルや、知識の習得は大人になっても忘れない」という意味ではありませんので、「三つ子の魂百までというので、早く何か習い事をさせよう」などの使い方は違うといえるでしょう。
また「三つ子」というのは、3人きょうだいではありませんので、「3人きょうだいの性格は大人になっても変わらない」というような使われ方も違いますね。
乳幼児期に形成される「愛着(アタッチメント)」
イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィが提唱した「愛着理論」(アタッチメント理論)では、乳幼児期は、人として重要な精神的発達の全ての側面と関わっているアタッチメントが形成される時期であるといわれています。
安定したアタッチメントは、道徳的に優れ、円滑な人間関係を築き、健全な脳の発達を促すなど、健やかな子どもの成長の多くに影響を及ぼしているといわれています。不安定なアタッチメントはその逆の影響を及ぼすでしょう。
このことからも3歳までの時期が、いかに重要かが分かると思います。小さな赤ちゃんは、まだ言葉も理解しておらず、自分でできることもほとんどなく、ただ寝ているだけのように思いますが、実はその頃の親の関わりが、子どもの後の性格や人格形成に影響を与え、一生を左右するほど大切なのです。
解釈は同じでも、関わり方の答えは時代とともにに異なる傾向に
では、その3歳くらいまでをどのように関わればよいのでしょうか。「三つ子の魂百まで」の解釈を尋ねると、私の親世代や年配の方は、「幼児でもダメなことはダメと教え、きちんとしつけをしなければならない」と言い、私の娘世代や若いお母さんは「子どもが幼い頃は、関わりを大切にしてしっかりスキンシップを取ること」と答える傾向にあるように思います。
その違いは、解釈や子育ての違いではなく、社会背景や女性の生活スタイルの変化から生じてきているのではないでしょうか。
例えば、昔の女性は家庭で家事をしていることが一般的でした。いつも親の目の届く所で子どもを育て、祖父母が幼子を甘やすことが多かったのに比べ、現在は、女性の社会進出も目覚ましく、保育所に預けるなど、親と関わる時間が減少している家庭も多くなってきています。このように子育ての在り方も時代とともに変化してきました。そのため、昔の人は厳しくしつけることを、今の若い人は、子どもとの温かい触れ合いが大切と答え、「三つ子の魂百まで」の解釈は同じでも、具体的な関わり方を尋ねると、時代によって差が生じることもあるでしょう。
いつの時代も、安心と信頼を与える関わりが大切
社会背景が変化し、子どもへの関わりの答え方が異なっていても、子どもの健やかな成長を促す乳幼児期の関わりは、時代に関係なく同じです。それは子どもが親を信頼し、安心を感じられるような関わりをすることです。お腹が空いたと泣けば、ミルクを飲ましてもらえ、微笑めば微笑み返してくれる。赤ちゃんの小さなサインに気づき、「何を見ているの?」「美味しいね」「キレイな音が聞こえるね」など個人の存在を認める語りかけをしていきましょう。その積み重ねで、赤ちゃんは親への信頼や安心を獲得していき、アタッチメントは形成されていきます。
幼い頃の関わりが人の生き方に大きく影響するすことを「三つ子の魂百まで」は、短い言葉で端的に伝えているといえるでしょう。
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