松茸は秋の味覚の代表格? 9~10月が旬の松茸
秋の味覚の王様とも言える「松茸」。そのカロリー、栄養価は?
松茸のカロリーと主な栄養素・健康効果
松茸も「キノコ」の一種なので、100gあたり23kcalと低カロリー。食物繊維は4.7gですので、食物繊維源として名高いバナナ(1.1g)よりもはるかに多いです。もっともキノコは全般的に食物繊維量が多く、この後で触れる「(ぶな)しめじ」も3.7g/100gです。ビタミンDは1.04μgで、1日に必要な量(1.8μg)の1/2強を摂取できます。しかしこれ以外は栄養価的には際立った特徴はなく、値段から想像されるほどには栄養源としての価値は実は高くありません。値段が高い分、高い健康効果を期待したくなるところですが、栄養価としての価値というよりも、希少な香りや味わいを贅沢に楽しむ旬の食品と考えた方がよいかもしれません。
松茸はなぜ高い? キノコ類の中で松茸だけ高額な理由
同じキノコ類である「ぶなしめじ」「えのきだけ」「ひらたけ」「なめこ」「まいたけ」などは、年中100円前後で販売されています。これらの値段が安定しているのは人工栽培が可能だからです。天候に左右されやすい屋外だけでなく、温室のような室内でも栽培できるため、台風や大雪などの天変地異が起こっても比較的安定した価格が維持されています。一方で、松茸は人工栽培が難しく、アカマツの近くに自生しているものを「探し出して」食用としています。アカマツ自体が減っていたり、手入れが行き届いていないアカマツの山では自生する数も減っていたりするため、松茸は収穫量が少なく、貴重品なのです。とは言え世界的にみると松茸の香りを好むのはほぼ日本人だけのようで、中国や韓国、アメリカやカナダなどから輸入されることも多くなりました。
ちなみに「しめじ」は、「ほんしめじ」と「ぶなしめじ」の2種類があります。スーパーで100円前後で出ている「ぶなしめじ」は前述の通り、人工栽培が可能なので安価で手に入りますが、「ほんしめじ」は人工栽培ができません。実は、松茸以上にレアなキノコでスーパーに出回ることはほぼないのです。東北地方でわずかに自生しているようですが、うまく探し出せれば百貨店かネットなどで入手することもできるかもしれません。
「香り松茸、味しめじ」……日常使いか特別感かで使い分けを
「香り松茸、味しめじ」という言葉がありますが、個人的にはこれも納得できるフレーズです。安価なぶなしめじの方が調理もしやすく、煮ても炒めても美味しく仕上がるので、日常的な使い勝手がよいと感じます。松茸はやはり価格的にも日常向けの食材ではないので、頻繁に自分で買うものではありませんが、大学での実習で使う「松茸の土瓶蒸し」や「松茸ご飯」のために、準備室に松茸が置かれていると、いい香りだなと思います。病院で勤務していた頃は「秋の味覚御膳」と称し、松茸の香りがする炊き込みご飯の素なども使っていました。この場合の松茸の香りは人工のものでしたが、風味だけでも松茸のご飯とサンマなどをセットにした献立を提供すると、患者様の食も進み、スタッフ全員で嬉しく思っていました。
松茸のおすすめの食べ方……香りを逃がさない調理法で
松茸は香りが魅力ですので、最も香りを逃さない土瓶蒸しが一番の調理法だと思います。ただ、「土瓶」が一般家庭にはないので、家庭料理ではあまり現実的ではないかもしれません。土瓶がなくても、要は「すまし汁」と考えて鍋で作ってもいいのかもしれませんが、少しでも香りを生かしたいならアルミホイルで包み焼きにしてもよいでしょう。よくレトルトで見かける「お吸い物」などは安価なのに高級感があり、気分を味わうには最高です。「土瓶蒸し(すまし汁)」がおいしいと記した通り、お吸い物は香りが立ちますので、松茸を味わうには最高だと思います。本物の松茸は先述の通り人工栽培ができませんが、香りだけは人工的に「作る」ことができます。レトルトのお吸い物は人工的に作った松茸の香りである「マツタケオール」というものなので、香りや雰囲気だけなら安価に食を楽しめてよいと思います。市販の「松茸のお吸い物」は湯を入れて普通に「お吸い物」として飲んでもいいですが、炊き込みご飯や茶わん蒸しの出汁や、ゆでたパスタに絡めるだけの簡単な味付けなどにも使え、とても便利です。さまざまなアレンジをぜひ楽しんでみてください。
松茸の香りも秋の食卓の楽しみに
9月、10月と徐々に気温が下がり、おいしい実りも増えてきます。松茸は、残念ながら栄養面ではさほど優秀ではありませんが、「香り」も含めて季節の食を味わうことも、食べる楽しみの一つです。松茸そのものはもちろん、松茸の香りの市販品なども上手く活用して、秋の食卓を楽しむと良いと思います。■参考サイト
松茸/マツタケ/まつたけ:特徴と主な産地や旬の時期(旬の食材百科)