誰にも言えない「20年の不倫愛」と「家庭」
20年の不倫愛
誰にも言えない、でも自分の思いを誰かに伝えたい。そんな秘密を抱えている人は少なくない。まして話が「不倫」という特別にプライベートなことであればなおさらだろう。20年来の不倫について話してくれる女性がいた。
結婚と同時に始まってしまった不倫の恋
断続的ではあるが、家庭の外に20年以上つきあっている人がいる、と秘密を話してくれたのはアキさん(47歳)だ。結婚して20年、そして不倫を始めて20年になる。
アキさんには18歳を頭に4人の子がいる。男、女、男、女でそのうち女の子ふたりは恋人の子だ。
「夫はとにかく出張の多い仕事で、今も海外にいます。今年の初めに行ったきり、コロナの影響もあって帰ってこられなくなって。毎日、オンラインで話していますけどね」
3歳年上の夫とは職場結婚だった。誠実で存在感のある男性で、まっすぐな性格に惹かれたという。だが結婚直後、アキさんは自分とつきあっているときに会社の後輩と夫が関係をもったことを知る。
「結婚式の晩に、会社の後輩から写真が送られてきたんです。夫の全裸だの寝顔だの。頭に血が上って夫に見せたら、『申し訳ない。だけどオレ、ほとんど記憶がないんだよ』って。同僚たちに相談したら、彼女は夫のことがずっと好きで、私とつきあっていることを知って誘惑したらしい、とわかりました。夫は彼女に酔わされて、ホテルに連れ込まれた、自分は何かしたつもりはない、彼女が勝手に言ってるだけだとも。彼女は私たちの結婚式の前日に会社を辞めているんです。問いつめることはできるけど、それもバカバカしいと思って放置しました。ただ、何かしていようがいまいが、私とつきあっているのに夫が誘惑に乗ったのは事実。今度やったら離婚だからねと釘を刺しました。夫はすっかりしょげていたので、とりあえず水に流したんですが」
アキさんは自分が思うより、ショックを受けていたようだ。気持ちを整理しきれず、仕事帰りにひとりで飲むことが増えていく。そんなとき再会したのが、大学時代の同級生・マサトさん。彼は同僚と一緒に来ていたのだが、同僚が先に帰り、ふたりで飲むことにした。話してみると会社の所在地が近く、ふたりともときどきその店に来ていたことが判明。
「卒業して5年ほどたっていたし、当時は特に仲良くしていたわけでもないんですが、やはり同級生ってすぐに昔に戻れて楽しいんですよね。私が結婚したばかりだと話すと、彼は自分も3ヶ月後には結婚する、と。夫の浮気の話もついしちゃいました。彼は『ああ、でもそれって災害みたいなものじゃないかな、男にとっては』と言ってくれて。その言葉に救われました」
夫を許そうと思った瞬間、目の前のマサトさんが愛しくなった。結婚直後の女性と、結婚直前の男性の気持ちが一致してしまった。それぞれ生涯をともにするパートナーの存在がありながら、「違う関係」が始まってしまったのだ。
子どもを産むことは悩んだけれど
夫の浮気疑惑を水に流すと決めて1年後、アキさんは妊娠。それでも臨月近くまでマサトさんに会っていた。「長男は夫の子です。ただ、マサトの子もほしいなあと漠然と思っていました」
長男が生まれると、夫は子どものかわいさに目覚めたのか、家事も積極的にこなすようになった。
それでも出張の多さは変わらない。近所に住む実母が手伝ってくれるのをいいことに、アキさんはまたマサトさんと会うようになっていく。
「別れるという発想はふたりともありませんでした。長男が生後半年のころ、夫がまた長期出張となって。その間にマサトの子がほしいという気持ちがつよくなっていったんです。マサトを何度も説得しました。最初は聞く耳をもたなかったけど、だんだん彼もその気になってきて。私とマサトの子がこの世に生を受けるなんて、なんだかとっても素敵なことだと思ったんです。おかしいですか」
アキさんは不安そうに、最後の言葉をつぶやいた。いや、そう考える人がいても不思議はないと思う。夫の一時帰国に合わせるようにして、アキさんはうまく妊娠した。本当は微妙に時期がずれているのだが、夫には「適当に」話した。出産時に夫がいないことは明らかだったからだ。
「産まれた長女を見て、マサトに似てると思いました。こっそり来てくれた本人も似てるなと苦笑していました。1ヶ月後に帰ってきた夫は、オレに似てると大喜び」
アキさんに葛藤がなかったわけではない。世間一般の価値観からいえば「とんでもないこと」だとは重々承知していた。それでもあえて、彼女はマサトさんの子がほしかったし、夫との子と区別する気などまったくなかった。
「そうやって4人の子をもうけて、私は本当に幸せだと思っています。今はマサトに会えないんですが、それでもなんとか連絡だけはとっています」
実はマサトさんは今、深刻な病気で闘病中なのだという。ふたりの娘たちの顔を見ながら、アキさんは毎日、マサトさんの無事を祈っているという。
「いつか子どもたちにわかってしまうときが来るのか、話すべきなのか、まだわかりません。私の決断が正しいかどうかもわからない。親のエゴだと思われるということもわかっています。だからこそ、子どもたちにはたくさんの選択肢を提示しながら、自分で決断ができる子になってほしい。私、自分で決断してよかったと思っていますから」
以前、産婦人科医に聞いたところによると、配偶者の子ではないとわかっていながら出産する女性は決して珍しくないそうだ。夫を裏切っていると責めるのは簡単だが、そこには「どうしてもあの人の子がほしい」という女性たちの切なる願いがあるのかもしれない。
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