思い通りにならなかった人生を振り返ってしまう

私の人生なんだったのか

他人からは幸せそうな家庭に見えても、実際、その家に入ればさまざまな問題を抱えているものだ。生きていくのは、ただそれだけでいくつになってもむずかしい。人には言えない「家庭の問題」を話してくれた女性がいる。

 

夫の浮気、義母との確執

タカコさん(52歳)は、28歳のとき、4歳年上の男性と結婚した。当時でも珍しい、親戚筋からの紹介による「お見合い」だった。彼は母ひとり子ひとりで暮らしており、最初から同居が前提だった。

「私は仕事を続けたかったので、ちょうどいいなと思って。義母もずっと仕事を続けてきて、当時、定年になったばかりだったんです。義父は夫が中学生のときに亡くなっているので、それからずっと母と息子ふたりで暮らしてきた。大変だよと友人たちに言われましたが、なんとかなるんじゃないのと思っていたんです」

ところが母子の絆は、タカコさんが思うより深く、そして彼女から見れば歪んでいた。新婚だというのに、夫が入浴すると義母があとを追う。あっけにとられているタカコさんに、「息子の背中を流すのは習慣なの」と義母は笑った。仕事が忙しく、なかなか息子との時間をとれなかったために義母が考え出したコミュニケーションだという。

「気持ち悪いなとは思ったけど、私がどうこう言うことではないと自分に言い聞かせて。結婚してすぐに妊娠したんですが、夫はそれっきり私に触れなくなった。安定期に入っても抱きしめてもくれなかった。冷たいわけじゃないんです。『子どもに何かあったらどうしようと思うと、きみに触れることができない』と。出産直後に夫の浮気を知りました。体が変わっていく妻が怖かったんだと白状しましたけどね」

夫婦が揉めているのがわかったのだろう。義母が登場、「男の浮気くらい大目にみなさい」とタカコさんを一喝したという。

「義母にとって、息子は最愛の人。しかも彼とセックスはできない。だから彼が浮気しても痛くも痒くもないわけです。私が嘆くのを見て、楽しそうでしたからね」

とはいえ、義母は産まれた子のめんどうを非常に的確に見てくれた。家事も完璧だった。ただ、夫の浮気騒動はそれからも断続的にあった。そんな中、2年後、その3年後にタカコさんは出産、3人の子の母となった。

 

揉めに揉めてきたけれど

だが、子どもの育て方については義母とたびたびぶつかった。抑えつけたがる義母と、自由にさせたいタカコさんとの間でバトルが勃発すると、夫は逃げるだけだった。

彼女は夫とじっくり話し合った。父親としてどうあるべきか。

「いいかげん逃げるのやめなさいよ、と私が絶叫したこともありました。さすがに義母も夫もビビったみたいです。子どもに関してだけは私の意見を通させてもらった。でもうち、経済はしっかり義母が握っていましたから、なかなか大変でした」

同居するにあたって、義母は「私はあなたの家政婦じゃないの。だから私に責任ある仕事をさせてちょうだい」と面と向かって言った。それが家計のやりくりだった。夫もタカコさんも給料は全額、義母に預けて管理されていたのだ。

夫は明細書も母に渡していたが、彼女は明細は「プライバシー」だとして渡さなかった。その代わり、給与が振り込まれる銀行のカードは義母が持っている。

「会社に頼んで残業代などは別の銀行に振り込んでもらっています。せっかく働いているのに、自分で自由になるお金をもっていないなんて意味がない。そのお金でけっこう救われたところがありますから」

二番目の子が突然、ダンスを習いたいと言ったとき、義母と夫は大反対。だが、タカコさんは内緒のお金を使ってダンスを習わせた。やりたいことをさせてやりたかったのだ。

義母は今年85歳。だが老いてますます元気で、今も家計のやりくりは義母の仕事だ。いちばん上の子は就職して自宅を離れ、二番目と三番目は学生で同居している。

「実は義母が、家計のやりくりをして相当な額のへそくりを持っていることが判明しまして。昨年、ちょっと入院したときに保険の証書を探してと頼まれたので義母の部屋に入って引き出しを開けたら、いきなり現金の束が目に入りました。通帳もあったので、こっそり見たんですが、なんだかわけのわからないところに振り込みもしている。のちにそれはとある新興宗教だとわかりました。私たちが必死に働いたお金がそんなところに流れているのかと思ったら、けっこう絶望的な気分になりました」

それについても家族で一悶着あった。彼女はやめさせたいと言い切ったが、夫や子どもたちは「好きにさせれば」という意見だったのだ。

「そのときふと思ったんですよね。私の味方は誰もいない、と。子どもたちはけっこう義母をかばうし、夫ももちろんそう。気づくといつでも私が悪者になってる。あんたたちを義母と夫から守ってきたのは私なのに、という意識が強いんだと思います」

そんなふうに思ったのは、ちょうど職場でも出世争いに敗れた時期と重なったからかもしれないとタカコさんは言う。

「職場にも家庭にも味方がいない。安らげる場所がない。そうやって嘆く男性の気持ちがよくわかります。最近はけっこう飲み屋に入り浸ることも多くて……」

がんばっても報われないことって多すぎますよね、とタカコさんはつぶやき、大きなため息をついた。

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