耳・鼻・喉の病気

メニエール病の検査・診断基準・治療法

【耳鼻科医が解説】メニエール病が疑われる場合、平衡機能検査、眼振検査、聴力検査などの検査結果とそれまでの病歴から診断を行います。メニエール病とわかった場合、内服薬、鼓室内注入療法、中耳加圧療法、高圧酸素治療による治療を検討することになります。各治療法の効果・デメリット・注意点を含め、解説します。

坂田 英明

執筆者:坂田 英明

耳鼻科医 / 耳・鼻・喉の病気ガイド

メニエール病が疑われる場合の検査法・診断基準

メニエール病の検査方法と診断基準とは?

めまいや難聴などの再発を繰り返すメニエール病。正式に診断するための検査方法・診断基準は?

メニエール病が疑われる場合、以下のような検査を行います。
  • 平衡機能検査……目をつぶって立った状態や足踏みをしてふらつきを見ます
  • 眼振検査……フレンツェル眼鏡または赤外線CCDカメラで目の動きを見ます
  • 重心動揺検査……検査台の上に立ち目を開けているとき、目をつぶっているときの身体のふらつきの状態を見ます
  • 聴力検査……難聴の程度を見ます
  • 自律神経機能検査
  • 採血検査 
メニエール病かどうかは「病歴」と「検査結果」から、総合的に判断して診断を行います。

■病歴からのメニエール病の診断(学会が定めた診断基準です)
1. 発作性の回転性(時に浮動性)めまいを反覆する
2. めまい発作に伴って変動する蝸牛症状(耳鳴・難聴)がある
3. 第8脳神経以外の神経症状がない(第8脳神経とは聴神経、前庭神経(めまい)を意味します)
4. 原因を明らかにすることができない
1、2、3、4が存在する時はメニエール病を疑う(90%)
 
■検査からのメニエール病の診断
1. 聴力検査においてメニエール病に特徴的な難聴を認める
2. 平衡機能検査で内耳障害の所見を認める
3. 神経学的検査でめまいに関連する第8脳神経以外の障害を認めない
4. 耳鼻咽喉科学的検査、内科学的検査、臨床検査学的検査などで内耳障害の原因を認めない
 
病歴でメニエール病が疑われ、かつ検査にて1~4があれば、確実にメニエール病であると診断します。間歇期の検査で病歴を満たすが検査で陽性所見がなく、かつ否定所見もない場合は、ほぼ確実にメニエール病であると考え、経過をみて診断することになります。

両側メニエール病の診断も片側性と同様に行います。
 

メニエール病と症状が似た病気

メニエール病と症状が似ていて間違いやすいため、検査により鑑別が必要な主な病気としては、以下のようなものがあります。
  • めまいを伴う突発性難聴
  • 良性発作性頭位めまい症
  • 前庭神経炎
  • 前下小脳動脈塞栓症
  • 小脳梗塞
 

メニエール病と診断された場合の治療法……各効果・デメリット・注意点

メニエール病と診断された場合、内服、星状神経節ブロック、鼓室内注入療法(一部の施設のみ)、中耳加圧療法(保険診療)、高圧酸素治療( ※メニエールの場合は自費診療)による治療を検討することになります。

■メニエール病治療のための内服薬
  • 治療薬……ベタヒスチンメシル酸、アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物、イソソルビドなど
  • 漢方薬……柴苓湯、五苓散などはむくみを取り除くもの。
内服による治療は薬を服用するだけですので、負担が少ない点がメリットと言えるでしょう。腸からの吸収を考えると粉のほうが吸収されやすいです。一方で、局所(内耳)には吸収されにくい点はデメリットと言えます。
 
■鼓室内注入療法
ステロイドを鼓膜に注入して内耳に浸透させ、内耳のむくみを取る治療法です。内服と異なり、局所(内耳)に吸収されやすい点はメリットですが、自費治療となり、まれに鼓膜に小さな穴が残ってしまうことがあります。
 
■中耳加圧療法
中耳を加圧して血行を良くし、内耳のむくみを取る治療法です。保険診療で自宅で行うことが可能である点がメリットですが、月に1回必ず受診する必要があります。
 
■高圧酸素治療
全身の血行を改善することにより内耳のむくみを取る治療法です。全身の血行改善ができる点はメリットです。耳鼻科疾患においては突発性難聴の場合は保険診療となる治療法ですが、メニエール病の場合は自費診療です。
 

メニエール病は完治するのか? 治療経過・再発が不安な方へ

メニエール病はめまい、耳鳴り、難聴の発作を繰り返すのが特徴なので、完治には時間がかかります。再発による発作はいつ起きるか分からないので、まずは予防することを心がけましょう。今メニエール病らしき症状が出ている方や、メニエール病と診断されて不安を感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、生活習慣、生活リズムを整えていけばメニエール病は改善していきます。時間はかかる一方で必ず治りますので、あきらめないでください。

■参考
日本めまい平衡医学会
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