2020年は「リモート介護時代」の幕開けに

2020年に私が注目しているのは、ズバリ「リモート介護」。リモートとは「隔たった」という意。つまり、「離れた場所から家族を見守ったり、支えたりすること」です。
 
介護というと食事や入浴、排泄などの行為を手助けするイメージがあるかもしれませんが、近年ではその概念も変わりつつあります。  
 
児童向けの介護入門書『介護というお仕事』(小山朝子著/講談社/2017年)で「介護とは誰かの助けが必要な人の心と体を支えること」と説明しました。この背景には、脳の機能が低下しても日常生活の動作は行える認知症の人が増えてきたことも挙げられます。

 

全国の施設で急速に広がったオンライン面会

新型コロナウィルス感染症の影響で、高齢者が暮らす介護施設では利用者と家族らが面会できない期間が長く続きました。こうした状況のなか「オンライン面会」を導入する動きが全国で急速に広がりました。このオンライン面会は、まさに施設の職員と家族がタッグを組んで実現した「リモート介護」といえます。

山口県周南市で有料老人ホームなど複数の施設を運営する「こもれびの杜グループ」は2020年4月下旬から予約制でオンライン面会を導入。担当の大西孝往さんは「skypeによる面会を1回あたり約10分で行っています。利用したご家族は『親の顔が見られただけで安心した』と大変喜んでおられます」とのこと。
 
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コロナ禍により介護現場のリモート化が加速した(写真提供:こもれびの杜グループ)
 

一方、長崎県島原市の特別養護老人ホーム「淡淡荘」では、家族の使用者が多かったことからLINEを使うことにしたといいます。同施設の増田繁一郎施設長に伺ったところ、「施設が広いため、生活するフロアが異なる利用者同士が交流するときはタブレットを使い、Zoomでやりとりをしています。オンラインでの交流に当初は不思議そうな表情を浮かべた人もいますが、問題なく会話をしていました」と述べていました。
 
正直なところ、日々介護現場を訪れるなかでPCやネット環境の整備を二の次にしている事業所が少なくないと感じていました。しかし、新型コロナウィルス感染症の感染管理が、期せずして介護現場のリモート化を加速させるという副次効果をもたらしたように思います。
 

人感センサーが事故を予防し、職員の負担も軽減

すでに介護施設で行われてきた「リモート介護」として、真っ先に思い浮かぶのが夜間の見守りの際などに利用する「離床センサー」です。2000年2月に東京ビッグサイトで開催された大規模な介護機器の展示会「CareTEX2020」の会場でも、見守り支援機器は来場者の関心を集めていました。
 
利用者の転倒や、ベッドからの転落などを未然に防ぐために活用されてきた離床センサーですが、従来はベッドの周辺の床などに利用者の体重がかかるとアラームが鳴るタイプが主流でした。

しかし、近年では熱や温度に反応し、離れたところから利用者の動きを検知し通知する「人感センサー」や、ベッドの上での利用者の動きをセンサーで検知し、離れた場所からシルエット化された画像や映像を確認する「シルエットセンサー」などが開発されています。
 
検知・通知の機能のみだった離床センサーが時代とともに進化し、現在ではアラームが鳴った際の状況を分析するほか、データを蓄積し未来の状態を予知できる機器として現場で活用されています。
 
前述の「淡淡荘」でもこうした機器を導入しており、増田施設長いわく「事故の発生が激減した」とのこと。加えて人手不足の状況にある介護職員の負担軽減や業務の効率化に繋がることが期待されます。国でもこうした介護支援機器の開発や普及を推進しており、全国の各自治体ではその費用を補助するなどの取り組みをしています。       
 
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15年以上前からペーパーレス化を進めてきた特別養護老人ホーム
「淡淡荘」。「いろいろな情報をいろいろな場所から見られるよう整備を進めています」と施設長。「淡淡荘」でのオンライン面会の様子 

 

親が鍵を閉め忘れてもリモート操作ですかさずフォロー

在宅介護の現場でも「リモート介護」の環境を構築できるサービスが登場しています。
 
実家にひとりで暮らす母がいる私は、2000年からソニーが提供するスマートホームサービス「MANOMA」を導入しました。IoT機器とアプリが連動し、さまざまな機能が備わっています。その機能のひとつ、「室内コミュニケーションカメラ」は離れて暮らす親の暮らしぶりをスマートフォンで確認できます。

さらに「Qrio Lock」や「開閉センサー」によって玄関のドアや窓の鍵が空けっぱなしになっていないかが確認でき、万が一、鍵が開いていたらリモート操作で親に代わって鍵を閉めることもできます。
 
ただし、こうした環境を高齢者宅で整えるには、やはり「人」によるサービスの付加価値が必要だと実感しています。

諸外国の例を挙げると、フランスで見守りサービスを導入する際には配達員が高齢者の住まいにパソコンを設置し、端末の使い方を教えるなどの支援を行っているのだとか。
 
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鍵の開閉は「Qrio Lock」で確認。親が閉め忘れていたらリモート操作でフォローできる


ちなみに民間調査会社の富士経済は見守りサービスの市場規模は2025年に17年比93.8%増の124億円になると予測しています。
 
では、実際にアラフォー世代が離れた場所で暮らす親のリモート介護を始めるにあたって何をすればよいのか、その3ステップを記しておきます。
 
step1
施設に入居している祖父母や親戚がいたら「オンライン面会」を体験してみる
 
step2
まずは「我が家」をスマートホーム化して機能に慣れておく

step3
親の「不安」を聞き、リモート操作で解決できることがないかを検討する
 
アラフォー世代にとって、「介護」というとまだ少し先の話で「荷が重い」と感じている人もいるかもしれません。でも、付かず離れず親を見守る「リモート介護」なら、「気軽に始められそう」と感じる人もいるかもしれません。
 

「介護×テクノロジー」の新時代を見据えて

私は以前、施設のご利用者のプライバシーは厳重に守りつつ、施設の一部にカメラを設置しリモートで確認することの是非を問う原稿を書いたことがあります。読者からは賛否両極端の意見がありました。なかには、「介護は利用者と職員の信頼関係のもとに行われる行為。リモートで監視するようなシステムを導入することは我々介護職員を信頼していないということだ!」という意見や、「カメラを設置して日頃の様子を第三者に見てもらうことは賛成する。私達はいつ誰が見ても恥じないケアをしており自信がある」といった声もありました。

介護人材不足の解消や介護をする側の負担軽減、虐待防止、安全確保といった貢献が期待できるIT・AI・IOTといった最新テクノロジーは、介護現場で今後ますます注目されていくでしょう。しかしながら、介護の核心は「テクノロジーでは獲得できない何か」にあるようにも思います。

多用な価値観を有する現代社会において、「介護×テクノロジー」の事象が経済的な側面のみならず、倫理的な側面も含めて各々の現場で検討され、活用されていくことを期待します。
 
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