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コロナ後の新しい海外旅行、5つのトレンドと注目の国

まだまだ落ち着きを見せない新型コロナウイルスの感染拡大ですが、これからの海外旅行はどのような方向性に進むのでしょうか。予断を許さない状況にありながらも、新しい動きが少しずつ出始めています。

中原 健一郎

執筆者:中原 健一郎

海外旅行ガイド

2020年、新型コロナのパンデミックがもたらした影響はあらゆる業界に及びましたが、とりわけ旅行業界は甚大な損害を被ることになりました。これからの観光産業がどう変化していくのかを考えるのは非常に難しいことですが、良い材料がほとんどないなかで「トレンド」という明るい言葉を使って、「コロナ後の海外旅行、5つのトレンド」をできるだけ前向きに考察してみたいと思います。感染対策が第一ですが、国内のGo To トラベルキャンペーンも始まったところで、観光産業の「その先」に一足早く目を向けてみましょう。
 
 

トレンドその1┃安・近・短

2020年以降、当面の海外旅行はカバン1つの「安い、近い、短い」が主流になりそう。小さな計画でどれだけ大きく楽しめるかはアイデアと考え方次第!

2020年以降、当面の海外旅行はカバンひとつの「安い、近い、短い」が主流になりそう。小さな計画でどれだけ大きく楽しめるかはアイデアと考え方次第!
 

この傾向は2001年のNY同時多発テロの後など、以前も何度か指摘されたことがありますが、今後数年は一層この傾向が顕著になるでしょう。遠くまで出向いて、何かあったら帰ってこられなくなるという懸念が付きまとうからです。

今回のコロナ禍では欧米が最大の被害を出しました。ヨーロッパはEU統合の証しとも言える域内移動の自由を諦め、各国が国境を閉鎖する事態にまで追い込まれました。

すでにEU域内での国境移動は段階的に再開され、7月1日からは日本を含むごく一部の国に対して、観光での入国を認めている国もありますが、まだまだ情勢が流動的すぎてかつての自由なヨーロッパ旅行には程遠い状況です。さらにアメリカ方面は、感染が「止まるところを知らない」と表現してよいかもしれません。
 
当面の海外旅行は直行便を使って5~6時間程度までで行けるアジア方面が主流になるでしょう。


◆【これから注目の国】ベトナム
ベトナム最大の見どころを言われる世界遺産ハロン湾。海上にそびえ立つ奇岩の間をクルーズ船で巡る。ハノイから日帰りも可能。

ベトナム最大の見どころと言われる、世界遺産ハロン湾。海上にそびえ立つ奇岩の間をクルーズ船で巡る。ハノイから日帰りも可能

日本から一番近い東南アジア、ベトナムは首都・ハノイから東京まで、風向きによっては4時間くらいで着いてしまう近さです。また夜行便にちょうど良い距離で(時差2時間)、復路は深夜出発して目覚めたら日本ですので、3日間の短い旅行でも現地で丸2日を確保できます。

ベトナム航空、全日空、日本航空に加えて、近年ベトナムのLCC「ベトジェットエア」も関空や成田へ就航しました。早期の通常運航再開が待ち望まれます! (往復航空券の目安、3~5万円)

ベトナムはコロナ防疫を概ね成功させた国のひとつです。7月5日までの人口10万人あたりの感染者数は0.4人、死者は1人も出ていません。比較までに、日本は同感染者数15.3人、同死者数0.8人となっています(ちなみに被害の大きいアメリカでは同感染者数864.1人、同死者数39.5人となり、イギリスでは同感染者数429.7人、同死者数66.3人、スペインやイタリアも近い規模の感染状況です。データは日本経済新聞サイトから計算、以下全て同様)。
 
現在、日本政府はベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドとの交渉を他国に先駆けて進めており、6月25日からはビジネスチャーター便もベトナムに運航されています。日本の感染状況が心配ではありますが、比較的早い往来の再開が期待できると思います!
 
 

トレンドその2┃健康

今後の海外旅行はこれまで以上に健康を意識することになりそう。健やかに生活を営むことの大切さをコロナで再確認することに。

今後の海外旅行は、これまで以上に健康を意識することになりそう。健やかに生活を営むことの大切さをコロナで再確認することに
 

多くの人の健康への関心が高まることはコロナの必然的結果です。海外旅行においては、大気汚染で空が濁ってしまうような場所へは、いくら世界遺産がたくさんあっても人々の足は向かわなくなるでしょう。

人の動きが変わるということは、そこに商機も存在します。少し話がそれますが、コロナで壊滅的損害を受けた日本のインバウンド復興のカギは、この「健康」が一つのキーワードになるような気がします。

日本は世界一の長寿国として有名ですし(2018年WHOによる)、日本食が健康に良いことも世界に知られています。例えば「ヘルス・ツーリズム」のような形で官民挙げて世界にアピールできれば、そこにインバウンド回復へのひとつの道筋が生まれるのではないでしょうか。


◆【これから注目の国】タイ

タイは独特の健康法で女性にも人気の国です。タイ古式マッサージや、痛気持ちいいツボ押しのお店はタイの街中を歩くだけでたくさん見つけることができます。人々の生活のなかに根付いているからなんでしょうね。

女性ならちょっとリッチに、アロマの薫り芳しいエステに身を委ねるのもいいですし、「ルーシーダットン」と呼ばれるタイ式ヨガに挑戦する人も。
 
ワット・ポーにある黄金大仏様のお背中。足裏の紋様はツボ! ではなく108の宇宙観を現している。マッサージの総本山としても有名なお寺

ワット・ポーにある黄金大仏様のお背中。足裏の紋様はツボ! ではなく108の宇宙観を現している。マッサージの総本山としても有名なお寺
 

巨大な涅槃仏で有名なバンコクのワット・ポーは、タイ式マッサージの本場としても有名です。施術を受けるだけでなく、この際基礎的な施術法を習得してみるのはいかがでしょうか? 数日かかりますが、パートナーと一緒に学べば、あとはタイに行かなくても家でずっとマッサージ三昧です!
 
夫婦でマッサージをマスターしたら、お籠り生活が楽しく過ごせるかも!

夫婦でマッサージをマスターしたら、お籠り生活が楽しく過ごせるかも!


万一またいつかステイホームが必要になったとき、陰鬱な毎日を健康で楽しい自粛生活へ変える妙薬になりませんか?! もちろんタダで(笑)

先述の通り、タイも早期の往来再開を期待できる国のひとつだと思います(7月5日までのタイの人口10万人当たり感染者数4.6人、同死者数0.08人。往復航空券の目安、3~5万円)。

ワット・ポー、マッサージスクールのHPはこちら

 

トレンドその3┃安全

我々の辞書に定員という文字はない! とは言わないけれど……国によって制度や文化は様々、慣れない外国人には危険の誘因になることも。

我々の辞書に定員という文字はない! とは言わないけれど……国によって制度や文化はさまざま。慣れない外国人には危険の誘因になることも
 

先述した「安」といえば「安い」のことでしたが、これからの安は安いだけでなく「安全」が加わります。

これまで海外旅行花盛りを謳歌してきた日本人にとって、海外へ行くのは国内の延長のような感覚だった人が多かったかと思います。しかし、外国では文化や制度の違いから起こるトラブル、強盗、麻薬、そしてさまざまな感染症……。いずれも日本ならリスクは少ないものが多く存在します。
 
コロナの潜在的リスクのなかでの旅行となるわけですから、今後の海外旅行は、必然的に自身の安全への意識が高まることになります。身の安全は、基本は自己責任ですから、これを機会にコロナ同様「海外を正しく怖がる」習慣が広がるといいと思います。


◆【これから注目の地域】台湾

こう言っておいてなんですが、台湾こそは国内の延長のような安心感で行けてしまう日本人にとっては本当に旅行のしやすい場所です。双方の入境が再開すれば、一気に日本人旅行者が集まりそうな気がします!
 
まるで日本の里山の温泉地のような風情。台湾中西部の関子嶺温泉

まるで日本の里山の温泉地のような風情。台湾中西部の関子嶺温泉
 

ITを駆使した台湾の防疫政策は顕著な成功例として世界から注目を集めました(7月5日までの台湾の人口10万人当たり感染者数1.9人、同死者数0.03人)。
 
人々も親日的で見どころも多く、近くて安全な台湾旅行で日本のアウトバウンド復活の狼煙を上げましょう!(往復航空券の目安、3~4万円)

 

トレンドその4┃自然

今や「3密」という言葉を知らない人はいないでしょう。これまで「連絡を密に」とか、「密」はわりとポジディブな言葉として使われてきましたが、コロナで一転、「密」は嫌われもののような扱いになってしまいました(今年の漢字に選ばれそうな気がします)。
 
都会の日常生活で密を回避するのはなかなか難しい……写真はウガンダの首都カンパラのオールドタクシーパーク

都会の日常生活で密を回避するのはなかなか難しい……写真はウガンダの首都カンパラのオールドタクシーパーク


今後の海外旅行は可能な限り密を避ける傾向がしばらく続くはずです。となれば都会より地方、そして大自然のなかへの回帰がトレンド化するのは自然なことだと思います。2020年後半は海や山のレジャーを志向する人が増えるのではないでしょうか。


◆【これから注目の国】マレーシア

マレーシアと聞いて真っ先にビーチを想像する人は少数派かもしれませんが、海岸線の長い国だけに、海のレジャーは意外と充実しています。知名度があまり高くないためか、特にマレー半島東側は沿岸から少々ボートで島に渡るだけで、観光客が少なく透明度の高い素朴なビーチがたくさん存在しています。
 
純白のパウダーサンドが眩しい、マレーシア東海岸沖の素朴で小さな島、ラワ島。喧噪を忘れてゆるやかな時間に身をゆだねる。

純白のパウダーサンドが眩しい、マレーシア東海岸沖の素朴で小さな島、ラワ島。喧噪を忘れてゆるやかな時間に身をゆだねる


モンスーンの影響で半島東側は10月頃までが乾季、逆に11月頃からは西側のペナン島などが乾季になり、ほぼ年間を通してベストシーズンが存在するのもマレーシアのビーチの魅力です。
 
ペナン島へ行ったら名物の屋台料理にもいろいろ挑戦してみよう!

ペナン島へ行ったら名物の屋台料理にもいろいろ挑戦してみよう!


マレーシアは3月から4月の早い段階で感染増加に見舞われましたが、その後の対策により着実に感染を封じ込め、6月下旬以降は概ね1日数人程度の感染に抑えています。ベトナムやタイに一歩遅れつつも、日本の状況が落ち着けば、早期の往来再開の候補に入ってくるはずです。(7月5日までのマレーシアの人口10万人当たり感染者数27.4人、同死者数0.4人。往復航空券の目安、6~7万円)。
 

トレンドその5┃新しい価値観

西ヨーロッパ、NY、シンガポール、東京など、今回のコロナ禍では最も先進的とされてきた国や都市が多大な被害を被ったのは文明の皮肉なのでしょうか?
 
幸いにも今回被害を最小限に食い止められたのは医療インフラが発達しているとは言い難いアフリカの国々でした。
 
外出を制限され、人と会うのもままならなくなりました。お洒落をすることも美味しい料理店を訪ねることも難しくなりました。まるで先進国の特権であるかのごとく享受し、誇示していたはずなのに、一転してマスクを買うために長い行列に並ぶことになりました。
 
このコロナ禍で、我々の多くが信じてきた物質的な価値観に一石が投じられたのは間違いないように思えます。巣ごもりの最中に、人生の本当の価値や幸せって何だろう? って考えてしまった人は、ぜひメンタルリセットを兼ねて海外の異文化世界に身を投じてみてください。
 
アラブ首長国連邦の首都アブダビにあるシェイク・ザイード・グランド・モスク。純潔を尊ぶイスラム教徒を象徴するかのような白亜の壮麗な祈りの場所

アラブ首長国連邦の首都アブダビにあるシェイク・ザイード・グランド・モスク。純潔を尊ぶイスラム教徒を象徴するかのような白亜の壮麗な祈りの場所


自分たちとは違う幸せの形、それを見つけることは心の豊かさに繋がります。そんな経験を海外旅行に求める人が、これから増えていくのではないかと思います。

◆【これから注目の国】ヨルダン

ヨルダンはシリアやイラク、イスラエルなどに囲まれながら、穏健なイスラム教国として抜群の安定感を保つ中東の国です。イスラム教国はもちろん、西欧キリスト教国、アジア・アフリカ諸国、そしてイスラエルにまで門戸を開けている、世界平和のためには不可欠な存在の国だと思います。
 
イスラム教は絶対的なアッラー(神)に帰依する宗教です。東洋の仏教には無常という考えがあり常なるものは無いというのが根本的な考え方としてありますが、イスラム教の人々には絶対的な存在に寄り添うからこそ得られる自信、心の安らぎがあるような気がします。
 
切り立った崖の向こうにペトラ最大の見どころ「アル・ハズネ」が見える。映画インディー・ジョーンズのロケ地としても有名。

切り立った崖の向こうにペトラ最大の見どころ「アル・ハズネ」が見える。映画『インディー・ジョーンズ/最後の聖戦』のロケ地としても有名


ヨルダンはそんなイスラム教を肌で感じられるだけでなく、雄大な自然と歴史文化遺産を擁する観光国でもあります。大人気の世界遺産「ペトラ遺跡」、世界有数の透明度を誇る紅海への出口「アカバ」、砂漠ツアーやの死海の浮遊体験まで、魅力的な観光地がいっぱいです。
 
海抜マイナス400m、あまりの塩分濃度のため、魚の住めない死海。ここでしか味わえない特別な浮遊体験を! 死海の塩や泥を使ったエステも。

海抜マイナス400m、あまりの塩分濃度のため、魚の住めない死海。ここでしか味わえない特別な浮遊体験を! 死海の塩や泥を使ったエステも


治安も概して良く、人情深いアラブの風情を堪能できるヨルダンは中東諸国のなかではかなり防疫に成功しています(7月5日までのヨルダンの人口10万人当たり感染者数11.5人、同死者数0.1人)。

しばらくかかるかもしれませんが、いずれ国境が再開すれば首都のアンマンへは、中東のほとんどの主要都市から直行便が復活するでしょう。日本からはUAE乗換のエミレーツ航空、エティハド航空などが候補になるはずです(往復航空券の目安、7~8万円)。

 
今回のコロナ禍による移動の減退は人類史に残るほどのものかもしれませんが、それでも人類の歴史から旅がなくなったことは一度もありません! 形は変われど、早くまた新しい旅が人々の心を潤す日が来ることを願って止みません。
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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