2020年アメリカ大統領選を左右する“隠された事情”
トランプ大統領VSバイデン元副大統領の激突
2020年、世界が最も注目するテーマのひとつが、再選を目指すドナルド・トランプ大統領に民主党の元副大統領ジョー・バイデン氏が挑む構図となったアメリカ大統領選と言えます。
「他国の指導者のことなど興味ない」という人もいるかもしれませんが、決して無視できません。なぜなら、日本の政策はアメリカの方針とは切っても切れない関係にあり、誰が大統領になるかで今後の日本のあり方が大きく影響を受けることになるからです。
今回は関係者等への独自取材をもとに、大統領選の行方を読み解いてみたいと思います。
本当に「暴君」VS「穏健派」なのか?
まずトランプ氏、バイデン氏2人の人物像から見てみましょう。マスコミの多くはトランプ氏を「暴君」、バイデン氏を「穏健派」と報じていますが、本当にそうでしょうか?
トランプ氏が「暴君」と言われるのは、部下を簡単にクビにするエピソードが元になっています。しかし、彼の元関係者に直接取材したところ、それは事実とは異なるとのことです。トランプ氏は「オブジェクト指向」で人事を行っているというのです。
トランプ氏は究極の「オブジェクト指向」
「オブジェクト指向」とは、みんなで仲良く仕事をするといったプロセスではなく、「目的達成」を第一義とする考え方です。人を「好き嫌いでクビにする」のではなく、「目的の遂行が可能な人を厳しく選別するやり方」といったほうが正確と言えます。バイデン氏は本当に穏健派か?
一方、バイデン氏が「穏健派」と言われるのは、オバマ政権時に副大統領を務めたことと無関係ではありません。副大統領はあくまで大統領を支える立場ですから、そもそも地味なイメージになりがちですが、彼の場合はトランプ氏を上回る77歳という高齢です。穏健派か否かよりも健康不安のほうが気になりますが、そんな彼が候補者として選ばれたのは、民主党支持層にとって都合がよかったからです。
民主党は富裕層を基盤としている
民主党の予備選をリードしていたのはバーニー・サンダース氏でした。「民主社会主義者」を掲げるサンダース氏は、「平等な社会」「人権が尊重される社会」への改革を打ち出し、貧困層や学生らを中心に絶大な支持を集めました。それは2016年の前回選挙も同じでしたが、民主党は二度にわたりサンダース氏を撤退に追い込みました。なぜなら、サンダース氏の目指す「弱者に優しい社会」とは、民主党を支持する富裕層にとって都合が悪かったからです。その証拠に、予備選でサンダース氏が票を伸ばすたびに、ウォール街は警戒し、株価を下げました。これは、サンダース氏が大統領になれば自分たちの既得権が脅かされると、ウォール街が判断していたことを意味するものです。
そこで民主党は他の富裕層寄りの候補者を撤退させ、バイデン氏に票を集めて大統領候補としました。
ところが、バイデン氏に決まった後に想定外の出来事が発生しました。
バイデン氏に勃発した問題とは?
朝日新聞(5月2日付)等でも報じられているように、バイデン氏に女性へのセクハラ疑惑が持ち上がったのです。バイデン氏はこれを否定しましたが、彼にはかねてから別の深刻な問題がささやかれていました。それは少女に対する異常な性的嗜好の疑いです。
アメリカのメディアが報じていますが、具体的には少女の髪の匂いを嗅ぐというもので、支持者の集会でその行為をしている映像が証拠として報じられています。
これはトランプ氏にとっても願ってもない「敵失(=敵の失策)」。つまり、ライバルの自滅行為です。前回の大統領選でも、ヒラリー・クリントン氏が国家の重要機密を私用メールでやりとりした件を攻め立てたように、相手に弱点が見つかれば徹底的に叩くのが彼のやり口ですが、そんなトランプ氏が今回の件については沈黙し、話題にすらしていません。
それにはわけがあります。
「憎たらしいほど機を見るに敏」なトランプ氏
トランプ氏が沈黙しているのは、相手に致命傷を与えられるタイミングを見計らっているからだと考えられます。その根拠はカジノの街、アメリカ・ニュージャージー州アトランティックシティで見つけることができます。トランプ氏は不動産経営者であるのと同時にカジノ経営者でもあり、かつてこの街で大きなカジノを経営していましたが、前回の大統領選を前に撤退しました。
現地ではトランプ氏を悪く言う人がいるのも事実です。でもよく話を聞けば、それは彼が「憎たらしいほど機を見るに敏」であり、「タイミングの判断に妬ましいほどのセンスを持っている」ことに対する羨望であることが分かります。
以下の写真は私が実際に現地に足を運んで撮影してきたものです。かつて若者で賑わっていたカジノの街には、もはや高齢者の姿しかありません。
海からの風に吹かれ、目抜き通りを歩いているのは老人ばかり。
かつて賑わっていたレストラン街は人影を探すのも困難なほど。
シャトルバスの待合室も老人ばかり。
若者から見放された街には成長が望めません。トランプ氏はこの惨状をいち早く予見し、撤退を判断したと考えられます。
トランプ氏が所有していた建物の一部。「TRUMP」の文字がまだわずかに残っている。
トランプ氏はいつ攻撃に転じるのか?
機を見るに敏なトランプ氏が、バイデン氏の疑惑を攻撃材料として封印しているのは、言うべきタイミングを待っているからだと考えるべきでしょう。では、封印を解くのはいつなのか?
それは大統領選投票日の直前と見るべきです。
なぜなら、疑いが事実か否かにかかわりなく、スキャンダルが大々的に取り上げられるのが投票日に近ければ近いほど、バイデン氏には弁明の時間が残されず、回復不能なダメージを負ったまま投票が開始されるからです。
「交渉の達人」「駆け引きの名人」と言われたトランプ氏にとって、この手の戦術は「イロハのイ」です。コロナ対策を粛々と進めながら、トランプ氏は虎視眈々と絶好のタイミングを探っていることでしょう。