亀山早苗の恋愛コラム

「都合のいいオンナ」が、男に振り回されるだけの恋から醒めた理由

安いホテルに連れ込まれたり、車の中でしか関係をもたなかったり、まれにはトイレに呼び出されたり……。男に振り回されるだけの恋でも、私のことが必要だと思ってくれるはず、とついつい自分にとって都合のいい考え方をしてしまうのだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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男に振り回される恋愛=大恋愛と勘違いしがち

男に振り回される恋愛

男に振り回される恋愛

不倫なのに安いホテルに連れ込まれたり、車の中でしか関係をもたなかったり、まれにはトイレに呼び出されたり……。そんな話題があるたびに、「どうしてそんなところへ行くのか」「不倫相手の女性もおかしい」と非難されるものだ。

だが、女性の中では、既婚者であってもあくまでも「恋愛」。だから、今は大事に扱ってくれなくても、いつか私のことが必要だと思ってくれるはず、いや、既婚者だからバレないようにこうするしかないのだろう、とついつい自分にとって都合のいい考え方をしてしまうのだ。
 

支配されたいわけではないけれど

男の言いなりになる「都合のいいオンナ」は、男に支配されるのが好きなのではないか、心のどこかに被支配欲求があるのではないかと他人は考えがちだ。

「私の場合は、まったくそういうことではありませんでした」

そう言うのはユミエさん(34歳)だ。この1年間、10歳年上の既婚男性とつきあってきたが、ようやく彼の「呪縛」から逃れたという。そしてその呪縛は、彼女自身が創り出していたものだったことも最近になってわかってきたそうだ。

「知り合ってすぐ、彼には『ボクと一緒に未知の世界へ行かないか』と言われたんです。最初はどういう意味かわかりませんでした。でもそれは『不倫だけどつきあって』ということだったんです。彼は芸術関係の仕事をしているステキな人だったから、つきあえるとわかってワクワクしました。私も似たような職場にいるので、彼のことは以前から知っていたし尊敬もしていた」

ところが彼は、けっこう特殊な性癖をもっていた。「きみがイヤなら断っていいんだよ」と言われたが、彼女には断るという選択肢はなかった。彼の求めに応じてさまざまなことをした。それが彼女の彼への愛情だったのだ。

「彼の言うなりというより、彼が望むことに応えること。そうすることで彼との関係が深まり、ふたりの絆が強くなる。そう信じていたんです」

一般的な性的関係を逸脱していることもあったが、それさえも彼女はクリアしていく。自分の本来の嗜好を見失ったが、それでも彼と一緒に“未知の世界”へと歩みを進めている実感があった。

「今思えば、彼に振り回されていました。夜中に店に呼び出されて行ってみると、彼は酔っていて送っていくだけ、ということもあった。それでもよかったんです、当時は。自分が彼の役に立っているという充実感があった」

恋の魔法とでもいったらいいのだろうか。この魔法にかかると夢と現実の区別がつかなくなる。そしてそれこそが、「恋」なのかもしれない。
 

唯一無二の関係に

彼に振り回されれば振り回されるほど、こういった女性は「自分だけが彼の理解者」だと思い込む。そしてそこに自身の存在意義も感じていく。

「私も不倫の彼にどっぷりはまったことがあるんです、3年もつきあっていました。別れて2年たちますけど、今思っても、あれは大恋愛だったと思っています」

サキコさん(37歳)はそう振り返る。不倫だから大事にされると思っていたのだが、一回り年上の彼の態度は違った。言いたいことを言い、したいことをした。とある雑居ビルのトイレで関係したことさえある。彼女は彼についていくのが精一杯だったが、不思議な満足感があったという。

「たまに、『サキコだけだよ、オレのことをわかってくれるのは』『こういうのが唯一無二の関係なんだ』なんてぽろっと言うんですよね。またそれにほだされて、次にワガママを言われても喜んで聞いてしまう。その繰り返しでした。私しか彼とはつきあえない。本気でそう思っていましたね」

ところがあるとき、彼女は彼に他にも女性がいることを知ってしまう。彼に近い人と知り合って、彼がいかに女癖が悪いかを聞かされたのだ。もちろん、その人は彼とサキコさんの関係は知らない。

「そのとき、どう言ったらいいのかなあ、目から鱗というか自分の体からいろいろなものが落ちていくのがわかったんです。彼という名のやはり呪縛なんでしょうか。目が醒めたというか。あれ、私、何をしているんだろうと思いました。彼が私のために何かしてくれたことってあったっけ。いつも彼の要望を私がきいて叶える一方通行だったんじゃないか、と」

心の中で何かがガラガラと音を立てて崩れ落ちていった。大恋愛だと思っていたのが誤解と錯覚だったと気づいたのだ。

彼女は彼から離れていった。彼は何度か連絡を寄越したが、彼女の気持ちを察したのだろう、ふたりは疎遠になった。

別れて2年。今でも彼女はあの頃の自分の甘酸っぱい気持ちを思い出すことがあるという。

「むちゃくちゃな男だったけど、私もあのむちゃくちゃさが当時はおもしろかったんですよね。私にとっては消したい過去ではありません」

騙されたとは思っていない。今はまだ少し生々しいが、いつか「楽しかった思い出」に変わるはずだと彼女は力強く言った。

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