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コロナショックが年金に与える影響は?

FP深野康彦さんとマネーライターの清水京武さんがコロナウイルスが家計に与える影響について解説します。今回はコロナショックと年金の関係について解説していただきます。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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新型コロナウイルス感染拡大が続いています。このまま終息が遅くなった場合は、世界経済に対する影響はどのぐらいのものになるのでしょうか?『マネープランクリニックラジオ・2020年の家計防衛』の収録時にFP深野康彦さんにインタビューしました(収録日時・2020年3月26日)

 

日銀が株価を支えるためにETFを買っているのは間違い?

深野康彦さん:皆さんこんにちは。ファイナンシャルプランナーの深野康彦です。

清水京武さん:マネーライターの清水です。深野先生、よろしくお願いいたします。コロナショックシリーズということで、今回は年金などへの影響について考えてみたいと思います。現在(2020年3月末時点)日銀が株価を支えるために、ETFを大量に買って株価の暴落を抑えているようです。ETFを買うと年金に影響が出るのではないか、という話が出ていますね。そのあたりの不安も含めて伺いたいのですが、いかがでしょうか?

深野さん:まず簡単にETFについてご説明します。ETFというのは上場投資信託と呼ばれる、投資信託の一種です。日経平均株価、トピックス(東証株価指数)などの指数に連動するかたちで株式をパッケージにして、それを証券化して売買が行われているというものです。それを金融緩和の一環として、日本銀行が買い入れているということです。「日銀が株価を支えるためにETFを買っている」ということですが、実はこれは間違いなんです。

確かに日銀はETF、あるいはREIT(不動産投資信託)と呼ばれるものを買っています。これは金融緩和の一環として、買っているんです。 金融緩和というのは、ETFを買うことで世の中にお金をばらまいて、世の中の通貨の量を増やすことです。ただし日銀は、これまで株価が下がっている局面でETFを購入してきているんです。だから日銀が株価の下支えをしているのではないか、と捉えていますが、基本的には株価を見て動いているのではなくて、世の中の景気が悪くならないよう出回る通貨の量を増やして景気の下支えをしている、ということになります。実際は金融緩和のやり方のひとつと思ってもらえば結構です。

清水さん:ETFの購入が巡り巡って、私たちの年金に影響を与えるということはあるのでしょうか?

深野さん:それはほとんどありません。本日は3月26日ですが、既にいくつかの週刊誌の見出しを見ると、こんな記事が出ています。世界的に株価が暴落気味なので、我々の年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がかなり大損をしたのではないか、我々の将来の年金がカットされてしまう、と。

それはほとんどないと思います。というのは、GPIFが運用したお金が我々に払われているわけではないんです。我々現役世代が払っている厚生年金、国民年金の保険料と税金が、今の高齢者の年金受給に回っています。単純に我々が払ったものが、そのまま高齢者の年金として出ていっているかたちになります。

ただしそれだけでは、残念ながら年金額を全額賄うことができないので、一部分はGPIFが運用しているお金から出ているんです。ただそれは、全体の割合で数%です。年金を支払っているうちの5割もがGPIFで賄われているということではないんです。

そもそも年金の仕組みをしっかりと理解されていないがために、どうしてもGPIFの運用成績が悪いと我々の年金がどうにかなってしまう、という報道がされるんですね。 ただしGPIFは四半期ごとに運用成績を公表しているのですが、いいときもあります。もちろん今回は悪い成績が出ますが、基本は長期で運用されているものなんです。

例えば家計の運用資産でも、今はマイナスかもしれないけれど長く見れば結局プラスになることってあります。 それと同じに考えればいいので、その時々に起こった現象で安心だとか、逆に危ないという考え方はおかしなことなんです。これからそういう報道がかなり増えると思います。そこにまずは惑わされないことが重要ですね。
 

コロナショックで株価が急落したから年金額が一気に減ってしまうということはない

清水さん:そうすると、報道やネットニュースなんかで、GPIFが枯渇してしまうのではないかとか、年金が半分になってしまうのではないか、なんていうことが言われるかもしれませんが、そういうことはあり得ないと。年金額が減ったり増えることはあるかもしれないけれど、大幅に減ったりなくなることはあり得ないということが、事実としてあるということですね。

深野さん:例えばGPIFの資金が枯渇するかということですが。GPIFは国内外の株式、あるいは債券などで運用します。GPIFが枯渇する場合というのは、それらの価値が0になるということです。それはないじゃないですか。

ただし株にしろ債券にしろ、価格が上がったり下がったりするので、それによって運用成績がプラスになったりマイナスになったりすることは、致し方ないことです。我々が家計で株式などを持っていれば、年に一度我が家の資産を棚卸しして、今年は株が上がったから資産が大きく増えたとか。 あるいは、株が下がったから資産が大きく減った、ということもあり得ますよね。GPIFを家計に例えるのは100%正しいわけではないですが、でも考え方は同じなんです。過度に心配する必要はありません。 これからさまざまな報道、ワイドショー、週刊誌なんかで取り上げられるかもしれませんし、センセーショナルな言い方をするかもしれませんが、それに惑わされないようにしてほしいです。

ただし年金の支給額自体に関しては、残念ながら将来的に減額というのはあり得ます。それはGPIFの運用成績が悪いからではなくて、今急速に高齢化が進んでいるので、年金保険料を納める人よりも、受け取っている人がどんどん増えているわけです。その結果、残念ながら年金財政を維持するために、将来的に少し減額していかざるを得ないというのが今の状況です。 だから今の年金制度を維持するために、年金額が調整されることは今後もあり得ます。

それは毎年行っていることですからね。ただし、今回のコロナショックで株価が急落したから年金額が一気に減ってしまうということは、ないと思っていただければ結構だと思います。 またよく言われるのが、「将来的に年金額が0になるのでは?」ということですが、先ほど言った通り年金の一部は我々の税金で賄われています。例えば昨年、消費税が8%→10%に引き上げられましたが、その分も実は我々の社会保障に回っています。

税金で穴埋めされている部分は、景気が良かろうが悪かろうが、あるいは株式市場が上昇しようが下落しようが、その部分だけは必ずもらえます。だから、0になるということも実はありえないんです。

年金は仕組みが複雑でなかなか理解されていないので、どちらかというとそこを逆手にとって危機をあおる人もいるわけです。 ですから年金に関しては、正しい知識を持って制度を理解していただくことが一番重要です。それはもしかしたら、厚生労働省に苦言を呈さなくてはいけないかもしれませんね。年金制度をもう少し分かりやすく説明してくださいよと、国に求めてもいいのかなという気はします。 ひとまず今回のコロナショックでは、我々の年金がかなり大きな影響を受けることはないと思っていただければと思います。

清水さん:分かりました。皆さんも年金が減るとか、GPIFが枯渇するなんていう心配をする必要はないということで、冷静に捉えていただきたいと思います。深野先生、ありがとうございました。 

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