なぜ科学の視点はおもしろいのだろう
1.私たちをとりまく社会が見えてくる足でかせぐベテラン刑事のカンと新人刑事の情熱が謎を解いた刑事ドラマ。やがて鑑識の比重が高まり、指紋認証と防犯カメラが犯人をとらえ、気がつくと法医学、プロファイリング、さらには嗅覚や寄生虫、文書解読や交渉術が真犯人を教えてくれようになった。科学の視点が謎を解明し、捜査にエキスパートがかかわることで、社会の今と新たな課題を現実として受け止めることができて新鮮だ。
2.科学の世界は広い 尽きることのない専門性
未知の専門家がやってきては、私たちの知らない知識で複雑怪奇な事件を解明してくれる、こんなに興味深いことはない。しかも、謎解きを支える科学の視点は細分化と進化を続けている。常に新しい分野が謎解きに参入するため、好奇心は早々に尽きることはない。
3.綿密な内容の背景には私たちが知らない知見がある
インターネットの時代、物語の整合性や専門用語の正確性を確認することは容易い。科学でアプローチするドラマは、原作や脚本が実に骨太で「雰囲気」に流されるようなこともないため、説得力をもって大人の視聴を満足させている。
科学の視点で謎を解く、何度でも観たい作品を振り返る。
スタイリッシュな空気をまとって挑む、最強の女性たち
『きらきらひかる』(1998年/フジテレビ系)
個性豊かな4人の女性の闘い方がクールだ。司法解剖の現場から見えてくる、厳しい現実に向き合う強さと、飲んで食べておしゃれしての日常を生きることの愛しさが時おり切なく、この4人だからこその世界観は今見ても心が動く。科学を描く作品の新しい可能性を実証した作品でもある。
「実に興味深い」難題を物理学で解明する東野圭吾の名作
『真夏の方程式』(2013年/フジテレビ系)
映画化もされた東野圭吾原作の人気シリーズ。主人公の湯川学(福山雅治)は人に興味がない風変りな物理学者。しかし、彼が関わる事件から浮き上がる哀しみに、彼が出す応えは常に胸を打つ。不可思議な現象やあり得ない事象を、大学での実験や調査で解明する過程はみどころたっぷりだ。
科学の匂いを感じさせない人間ドラマ
『臨場』(2009年/テレビ朝日系)
「拾えるものは、根こそぎ拾ってやれ」が口ぐせの検視官・倉石義男(内野聖)。スリリングな展開と目を見張る科学の進化というよりは、倉石の眼力が真実を引き寄せているかのような濃厚な人間ドラマ。謎の背景にある切実な人生に涙することも多い横山秀夫の名作を堪能できる。
未来に貢献する科学の姿勢が清々しく気持ちいい
『アンナチュラル』(2018年/TBS系)
舞台は不自然な死を解明するUDIラボ。エキスパートとして自分の仕事をまっとうする姿勢と、法医学が未来に貢献するという信念が、強く気負いなく垣間見え心を打たれる。視聴者の感情を煽り、加速させ、考えさせるコントロール力が絶品。複層的な脚本に新時代のドラマが見える快作だ。
風変りな科学捜査
『スニッファー 嗅覚捜査官』(2017年/NHK)
超人的な嗅覚を武器に風変りな事件コンサルタントとして活躍する華岡信一郎。車や音楽など大人テイストの洗練された美しい映像で楽しめる。鼻のメンテや、刑事の小向達郎(香川照之)との会話もおかしい。危機一髪のスリリングさも楽しめ、極上エンターテインメントとしても逸品だ。
2020年4月24日には、DNAが謎を解明する『らせんの迷宮~DNA科学捜査~』(金曜夜8時~/テレビ東京系)が始まる。大人に人気のドラマ時間として注目の、テレビ東京”金曜8時のドラマ”で新しい科学を学べそうだ。