旦那が死ねばいいのに……と思うようになった妻の理由
夫に何も期待しなくなったら危ない
変わらない夫を「諦める」とき破綻する
多くの妻たちが見据えていたのは、近い将来、または熟年になってからの離婚です。子どもが自立したあと、晴れ晴れと「仕返しのような離婚」を切り出す――ここで夫婦関係は名実ともに破綻を迎えますが、私はその前段階である妻が「諦め」に到達した状態で、すでに夫婦関係は破綻していると考えます。結婚生活における妻たちの感情の変化に注目してみると、妻たちの多くは、妊娠中から子が生まれて間もない一番ナーバスな時期、いわゆる産後うつになりやすい時期に、「離婚したい」や「死んでほしい」と一度は思っているよう。
この時点では妻の感情は轟々とうずまく台風のごとく悲しみや怒りがメインで、裏を返せばまだ夫に希望を持っています。その後、妻は子どもの世話が第一優先となり、夫にまつわる負のエピソードを溜めながら余裕のない日々を送ります。
妻は育児の苛酷さを「共有できない」「共感できない」夫へ折に触れて要望を出していますが、夫の態度が相変わらずだとどうなるでしょう。徐々に怒ることもバカバカしくなって慣れてしまい、最終的に「夫という存在を諦める」に行き着くのです。
諦めてしまえば、夫に対して希望や要望はわきません。子どもの手が離れるまで、粛々と省エネモードでやりすごし、離婚を切り出すタイミングを待つという姿勢になります。
経済力の格差……一桁違った場合は躊躇か
今回ヒアリングした妻たちの就業状況は、正社員、自営業、社会人学生、夫が高年収の専業主婦でした。前者2人は現在夫の方が年収は高いとはいえ、子育て期が抜ければ同等の経済力を持てるであろう妻たちです。よって2人は経済力が足かせになることなく離婚に前向きであり、社会人学生の妻もスキルアップと年収アップが見込まれるため、同じく離婚を現実的なものとして捉えていました。一人でも子を育てていける経済力があると妻がジャッジできれば「離婚は怖くない」といえそうです。
夫の年収が数千万円の専業主婦の方は、唯一離婚を考えていないとおっしゃっていました。その理由は「生活の質が低下するため」という想定内のものと「夫が今より幸せになってしまうため」という予想外のものであり、経済状況が一般家庭より潤沢だからこそ、より悩ましいのかもしれません。
コミュニケーション不全に気付かない夫
一方、あくまで妻側の話から受けた印象ですが、産前産後に失った信頼を取り戻せなかった夫たちの傾向としては、一人をのぞき「妻を必要としていなさそうに思える」「妻に無関心」でした。例えるなら妻に対してネグレクト(子どもの虐待用語で、子どもの存在を無視して必要なケアを怠ること)を行っているような関係性です。また独身時代と同じように自由な生活をし、妻をお世話係と思っている様子も感じられます。彼らは職場での評価はおおむね高そうなので、外の顔と内の顔の差が激しい傾向にあるのかもしれません。
残念なことに、夫は妻の心情をまったく知らない、または少ししか感じ取っていないと推測されます。夫たちも妻へ不満があるかもしれませんが、それらは妻に伝わっていません。もともと妻に関心が薄いこともあり、コミュニケーション不全を起こしていることにさえ気付かないのかもしれません。
死を願われない夫になるために
妻たちも好き好んで夫の死を願っているわけではありません。ですから夫を諦めてしまう前に信頼関係とパートナーシップを築けるかどうかが明暗を分けそうです。大前提として、妻という存在を無視しないことが不可欠です。恋愛感情を持ち続けることは無理だとしても、ともに生活する仲間として、子どもを育てるパートナーとして夫と妻は対等にある立場だと認識し、お互い何を思って何を考えているか、気軽に話せる関係性を作っておくことが理想です。
特に産前産後の時期は、今後の50年を左右するのは今だと腹をくくり、妻の心身に徹底的に寄り添うことを実践してはいかがでしょうか。寄り添い方が分からないなら、妻に何をしたらよいかを聞き、仕事以上の緊張感をもって主体的に動ければベストです。
「仕事以上の緊張感」とは大げさなような気がしますが、特に第一子の誕生とともに初めて赤ちゃんに接する妻の神経はかなり敏感になっています。産後のダメージがある身体に、赤ちゃんの命を守らなくてはいけないという使命感が宿り、昼夜休めない労働環境にいるようなものですから、通常よりも感情的になるのも当然です。子育てという労働を半分ずつに分けられないのなら、せめて気持ちに寄り添わないと、妻から「敵」判定されても仕方がありません。
頻繁にいわれることですが、夫婦は身近な他人です。友人や職場の人間関係よりも生活に密着している分、丁寧に扱う必要のある存在なのかもしれません。夫だけに限らず、妻も伝える努力を放棄しないで、お互いの存在を認められる関係性を築いていけたらと願います。
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