感染症

コロナの症状は?新型コロナウイルス感染症の症状・注意点

【医師が解説】「コロナウイルス」はよくあるウイルスが原因の風邪の10~15%を占めるありふれたものです。しかし突然変異すると「MERS」「SARS」のような恐ろしい感染症になることがあります。そもそもコロナウイルスとはどのようなウイルスか、また、現在騒がれている新型コロナウイルス(COVID-19)で報告されている症状はどのようなものか解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

コロナの症状は? 風邪の10~15%を占めるコロナウイルス
新型ウイルスに変異したものは危険?

コロナウイルス

よくある風邪の原因ウイルスでもあるコロナウイルス。稀に突然変異し、脅威になることがあります

「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)の感染拡大が連日報道されていますが、そもそも「コロナウイルス」自体は珍しいウイルスではありません。通常のコロナウイルス感染症は、一般的に「風邪」と診断される呼吸器感染症です。気道粘膜に感染することで、咳、鼻水、高熱などの症状を引き起こします。コロナウイルスは、風邪の原因ウイルスの10~15%を占めると考えられています。毎年冬に流行のピークが見られ、ほとんどの人が6歳までに感染し、多くは軽症で済みます。

なお、「コロナウイルス」という名称は、電子顕微鏡で観察すると王冠(ギリシア語で「コロナ」)のような形をしていることから名づけられました。少し専門的な話になりますが、プラス鎖の一本鎖RNAを遺伝子に持つ、表面に突起があるウイルスです。

コロナウイルスは、人だけでなく、様々な動物に感染します。イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ニワトリ、ウマ、アルパカ、ラクダなどの家畜、シロイルカ、キリン、フェレット、スンクス、コウモリ、スズメからも、それぞれの動物に固有のコロナウイルスが検出されており、いずれも感染した動物に、主に呼吸器症状や下痢などが見られます。多くは種固有のもので、特定の動物がかかるコロナウイルスは、人を含む他の動物に感染することはありません。人に感染するのは、人に感染するコロナウイルスです。

しかし何らかの理由で遺伝子変異が起こると、それまでは他の動物しか感染しなかったようなウイルスが人に感染することがあります。これが新型ウイルスです。これまでに突然変異で生まれた新型コロナウイルスで引き起こされた病気として、「MERS(中東呼吸器症候群)」や「SARS(重症急性呼吸器症候群)」があります。

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)は、MERSやSARSに比べれば症状は軽いものの、通常のコロナウイルスよりも肺炎を起こしやすいものであることが分かってきました。
 

新型コロナウイルスの症状……咳・発熱が主症状・重症肺炎も起こしやすい

新型コロナウイルスの主な症状としては、他のコロナウイルス感染症と同じく、咳や発熱などの呼吸器症状が報告されています。通常の風邪による咳や発熱と違う点は、MERSやSARSのような重症肺炎を引き起こしやすいという点です。重症化した肺炎により、呼吸困難などの症状が見られることがあり、命に関わることがあります。しかし、MERSやSARSに比べれば重症肺炎を起こす可能性は低いです。詳しくは国立感染症研究所の「コロナウイルスとは」もあわせてご覧ください。無症状であることもありますが、発熱、咳、呼吸困難、下痢、関節痛、筋肉痛、味覚・嗅覚障害があります。ウイルスに対する免疫反応の過剰になるサイトカインストームを起こすと重症化しますし、血栓、凝固異常を起こすことも報告されています。
  • 発症から1週間まで…約80% 軽症(風邪症状、嗅覚味覚障害)なら自然治癒
  • 発症から1週間後から10日まで…約20% 肺炎になって、呼吸困難、咳、痰がみられ入院
  • 発症から10日以降…5% 重症肺炎などで人工呼吸管理 2~3%は致死的
変異した新型コロナウイルス(COVID-19)に対して、人は免疫がありません。感染拡大のために、ワクチンを中心に各国で様々な対策が取られています。

感染の危険性が高いのは、換気が悪く、密室である空間で、近距離で長時間の会話などの濃厚接種であるとされています。ただ、100%感染するわけではありません。ただ、そうした場所がクラスター(小規模な集団発生)になっております。変異株が発生することによって、感染拡大が起こってしまっています。
 

新型コロナウイルスの症状があり不安……病院受診時の注意点

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による咳や発熱などの症状は、多くの風邪でも見られるものです。

院内感染を防ぐために、各医療機関で感染対策を行いながら、新型コロナウイルスの検査を行っています。
  • 「37.5℃以上の発熱または呼吸器症状があって、発症前14日以内に新型コロナウイルス感染者と濃厚接触した人」
  • 「医師が新型コロナウイルス感染症を疑う場合」
に抗原検査、PCR検査が行われています。

濃厚接触の定義は、
  • 新型コロナウイルス感染症が疑われるものと同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内などを含む)があった
  • 適切な感染防御(マスク、メガネなど)なしに新型コロナウイルス感染症が疑われた人を診察、看護、介護した
  • 新型コロナウイルス感染症が疑われるものの気道分泌物、体液などの汚染されたものに直接触れた可能性が高い
  • マスクなどの感染予防せずに、1メートル以内で15分以上接触した場合
とされています。しかし、変異株によっては、15分以内でも濃厚接触の可能性があります。
 
  • 高齢者、肥満、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)の基礎疾患がある方や透析を受けている方
  • 免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方
  • 妊婦の方
などは重症化しやすいので注意が必要です。

現在は、各医療機関で院内感染予防のために、発熱外来にて検査している状況ですので、発熱、濃厚接触の可能性がある場合は、必ず医療機関に伝えるようにしてください。

コロナウイルスに対しては特効薬はなく、多くは自然治癒しますので、陽性者の隔離から、肺炎などを重症例に対する診断と治療になっております。しかし、変異株によって、急変する例もあることから、軽症例で重症化のリスクの高い例には、抗体療法で行われるようになっております。

コロナウイルスの遺伝子検査(PCR)が保険適応であることから、検査できる医療機関が増えています。抗原検査はクリニックでも検査可能です。検査自体も100%ではないのですが、結果については注意する必要があります。詳しくは「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査法…PCR検査・抗体検査・抗原検査の違い」をご参照ください。

抗体検査については、既に感染したかどうかを検査するには有効な方法ですが、この抗体がウイルスに対する効く抗体(中和抗体)かどうかが大切になります。中和抗体でない場合、再感染する恐れがあるからです。
 

新型コロナウイルスに感染する危険性

コロナウイルス感染症は、感染させてしまう期間は「発症2日前から発症後7~14日間程度」ですが、時間が経つにつれて感染力は減っていきますので、発症後10日かつ症状軽快後72時間経つと感染力がないと判断されています。感染から発症までは14日までで、多くは4~5日程度です。感染力が強いのは発症者です。一方で、無症状の人からの感染も、発症者よりは少ないもののゼロではありませんので、注意が必要になります。特にデルタ株の出現で無症状の人からの感染も増えております。

濃厚接触にならないために、換気をして、マスクをして、しっかりと手洗いをすることになります。
 

新型コロナウイルス感染症についてまず見るべき情報源

「新型コロナウイルス感染症」は中国武漢市から発生し、日本では2020年2月1日に指定感染症に指定されました。日本を含む様々な国に拡大しています。発生状況などの最新情報は、厚生労働省のサイトで日々情報提供されていますので、リアルタイムでの正確な情報としては、「新型コロナウイルス感染症について」を確認するのがよいでしょう。現在は、各都道府県にて電話相談窓口があり、その中で、開設日時や時間は様々ですので、お住いの市町村のホームページ、保健所のホームページでもご確認ください。

あわせて、上記でも触れた国立感染症研究所の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報」などでも、正確な情報がまとめられています。
 

新型コロナウイルスの治療の可能性

新型コロナウイルスに対する特効薬は現段階ではありません。現段階で使用されている薬です。
  • レムデシビル……エボラウイルスなどのRNAウイルスのRNAを合成する酵素を抑制する薬で静注薬
  • ファビピラビル(アビガン)……インフルエンザウイルスなどのRNAウイルスのRNAを合成する酵素を抑制する薬で内服薬
  • カシリビマブおよびイムデビマブ(ロナプリーブ)…ウイルスが人の細胞に侵入するのを防ぐ働きがある抗体を、発症から時間の経っていない軽症例に対して投与し、ウイルス量の減少や重症化を抑制する効果があります。ただ、高価であるために、リスクのある患者に使用されます。
さらに免疫を調整する薬として、
  • デキサメタゾン…ステロイドで抗炎症効果が高い。炎症による重症化を防ぐ
  • バリシチニブ(オルミエント)…免疫抑制薬。レムデシビルとの併用。
があります。現時点では、保険適応になっている薬は、カシリビマブおよびイムデビマブ(ロナプリーブ)、デキサメタゾンとレムデシビル、バリシチニブになっております。今後、増えてくる可能性があります。
 

未知の感染症流行でパニックになる前に……

未知の感染症が見つかった場合、まずは正確な情報を知ることが第一です。新しく発生した感染症の場合、当然ながら最初ははっきりと分かることが少ないです。正確な情報は、情報の検証がしっかり行われた上で公開されますので、感染症の拡大状況という事実と情報提供までに時間差があることも、ある程度は仕方がないと考えるべきでしょう。不正確な情報を信じてしまうことの方が危険です。

感染症の感染経路は、飛沫感染、飛沫核感染、空気感染、経口感染、糞便感染、血液感染、性行為感染などです。ウイルスについての情報が少ない段階でも、これらの感染経路についてしっかりと理解しておくのがよいでしょう。医療機関では感染症の標準予防策として、感染症の有無に関わらずすべての患者さんのケアに際して、患者の血液、体液(唾液・胸水・腹水・心嚢液・脳脊髄液等すべての体液)、汗を除く分泌物、排泄物、あるいは傷のある皮膚や粘膜を、全て「感染の可能性のある物質」とみなして対応することになっています。この考え方を頭に入れて、普段から手洗いをしっかりとすることが感染症対策の基本です。

不安を煽る情報は鵜呑みにしないことです。不確かな段階で不安を煽り何かを販売するような情報は詐欺のこともありますし、ただの情報でも、発信者の承認欲求を満たしたり、炎上商法的なものであることも少なくありません。間違った情報によって、逆に健康に被害になることがあります。

まずは落ち着いて、厚生労働省を始めとする公的機関からの情報を押さえ、適切な行動を取ることが重要です。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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