更年期の症状ではない性交痛
性交痛に悩むのに年齢は関係ない?
更年期の女性だけでなく、若い世代でも性交痛の悩みを抱えている方は珍しくありません。セックスの後に毎回出血を伴う痛みがある20代の患者さんの例は、前回記事でもご紹介した通りです。また、閉経後も女性性を楽しむ上で、性交痛の悩みには適切に対処していくことが大切です。
今回は性交痛を我慢したまま放置するべきではない理由と、改善のための簡単なセルフケアの方法をご紹介します。
性交痛を我慢したことが原因でセックスレスになることも
性交痛があっても深刻な病気が原因でないなら、自分が我慢すればよいと考えてしまう方が多いようです。しかし毎回痛みや出血があると、どうしてもセックスを避けたくなってしまいます。性交痛を抱えていたことで、セックスレスの悩みを抱えるようになってしまうリスクもあるのです。結婚前のカップルやディンクスにとっても深刻な悩みですが、産後の女性の場合でも起こりえます。育児の疲れからセックスをしたい気持ちになりにくいのに加え、産後の女性ホルモンの減少によって産前よりも濡れにくくなってしまい、性交痛に悩んでしまうパターンです。
いずれの場合もパートナーに痛みを訴えにくく、我慢しているうちにセックス自体を拒否する形になってしまい、セックスを楽しめない状態からセックスレスになってしまうことは稀なことではありません。
性交痛改善に有効なセルフケアマッサージ
性交痛の原因は様々ですが、デリケートゾーンもケアを怠ると劣化してしまいます。特に現代女性は睡眠時間が短く、生活サイクルが不規則な方が多いです。ストレス社会で交感神経が興奮しがちなため、デリケートゾーンの冷えも慢性化し、性交痛の原因となっている方も多くみられます。そのような原因で性交痛を感じている女性に有効なのが、下半身全体を温めてあげることとマッサージです。硬くなったデリケートゾーンを潤わせ、柔らかくしてあげることは性交痛の改善につながります。
性交痛改善にセルフケアが有効と考えられる患者さんに対しては、お風呂上がりのデリケートゾーンマッサージ(Dケア)を指導しています。
■自宅でできる性交痛改善のためのマッサージ法
- 恥骨からおへそ・わき腹に向かって、下から上にやさしくマッサージしましょう
- 太もものつけ根をグルッと内から外にマッサージしましょう
- ひざから太ももの付け根まで、太ももの内側をギュッと押し上げるようにマッサージしましょう
- デリケートゾーンケア(Dケア)は、まず左右の小陰唇から。保湿剤もしくはオイルをつけた人差し指中指で優しくはさみこみ、上下にマッサージしましょう
- 陰核(クリトリスの部分)は、最初は包皮の上からしっかり保湿剤もしくはオイルでタッチするようにケアする。包皮が柔らかくなってきたら、人差し指中指で軽く剥きあげてみましょう。痛みを感じたら無理に剥かず、周囲の皮膚をマッサージしましょう
- 膣とお尻の穴の間を会陰部といいます。ここは縦方向ではなく、横方向に指を動かし保湿剤を塗り込みます
- 左右の大陰唇は小陰唇と同じように、保湿剤もしくはオイルをつけた人差し指中指で優しくはさみこみ、上下にマッサージしましょう
- 性交痛を和らげるDケアは、エストロゲンが入ったオイルなどを使用するのもよいでしょう
■Dケアの注意点
- 大陰唇と小陰唇の溝は垢が溜まりやすい部位です。お風呂でしっかり清潔に洗いましょう。
- 膣の中は、デーデルライン桿菌という善玉菌によって守られています。ニオイや乾燥が気になるからといって、一般的な石鹸でちつの中を洗浄することはやめましょう。なぜなら、石鹸によって善玉菌が殺菌されて、かえってニオイの原因の悪玉菌の侵入を許してしまうことがあるからです。
何歳からでも遅くない! 性交痛改善のための第一歩を
若い世代はもちろん、閉経を迎え人間としての自由を謳歌できるすばらしい時期を迎えられた方にとっても、セックスも含めた人生の過ごし方は大切です。生きている充実感が変わってくるといっても過言ではありません。95%の女性が、51歳±5歳の年齢で閉経します。人生50年の時代ならいざしらず、現代は閉経後40年は女性性を楽しめる時代です。セックスは性的快楽の他にも、ストレス解消、不安を和らげる、不眠の改善など、女性の心身にとって最高のギフトとなります。しかし、性交痛があると心からセックスを楽しむことができません。そして、閉経して生理に悩まされないセックスライフを楽しめるタイミングから性交痛に悩まされるのは辛いものです。
ですから、性交痛を感じる前から、日々のお手入れの一環としてDケアを取り入れ、デリケートゾーンの若さを保ちましょう。もし性交痛を感じても、今日から自分でできるケアは、たくさんあります。性交痛改善は何歳からでも遅くありません。自分にあった予防法・改善法をぜひ見つけてください。