痛み・疼痛

「セックスで痛い」のは病気?性交痛とは

【性交痛外来を設けるペインクリニック医師が解説】セックスで痛みを感じる「性交痛」は、セックスのある40代以上の女性のうち59.1%が悩んでいるといわれています。性交痛の原因となる主な病気と、病気ではない性交痛の原因、治療法・改善法について、医師の視点から解説します。

富永 喜代

執筆者:富永 喜代

医師 / 痛みの治療・麻酔ガイド

性交痛の症状は、40代女性の半数以上にある

性交痛とは?

性交痛とは? 40代女性の半数以上が感じているセックスの痛みの原因と改善法


私は痛みの専門家として、また、自身が更年期である「いち女性」として、クリニックで性交痛について治療を行っています。「性交痛」は、性交がある40代以上の一般女性のうち、59.1%が感じているほど。半数以上の女性が訴えているのですから、決して珍しいお悩みでありません。
 
私が院長を務める富永ペインクリニックでは性交痛外来を設け、適切なセルフケアを行うことで、誰かに知られることなく性交痛を改善する方法を推奨しております。「年だから仕方がない」とあきらめてしまうのではなく、自分にあった改善方法を知り、より健やかなナイトライフをお過ごしいただくために、まずは性交痛の基本からお話しします。

<目次>  

性交痛とは

性交痛とは、性交や挿入を伴う性行為の時に感じる痛みです。性行痛と表記されることもありますが、正しくは性交痛です。女性が抱えているセックスに関する悩みの中で多いのが、実はこの性交痛です。病院での診察では、原因から治療できるよう問診や血液検査、エックス線検査などを行います。
  • 挿入する時が痛い
  • 挿入後に激しく動かされた時が痛い
などの痛みに悩んでいる女性はたくさんいます。でも、パートナーに気を使ってしまって女性だけが痛みを我慢しているケースは少なくありません。
 

性交痛の原因となる病気……子宮内膜症や子宮筋腫など

セックスをするたびに激痛がある、濡れるけれど痛い、腟の奥の方が痛い、下腹部が痛い……などという場合は、婦人科系の感染症や炎症が原因で性交痛が起こっている可能性があります。
  • 子宮内膜症
  • 子宮筋腫
  • クラミジア感染症
  • カンジダ外陰腟炎
主に以上のような病気があると、性交痛を感じる可能性が高いです。
 
性交痛があり、もし
  • 痛みが強い
  • 下腹部の痛みが強い
  • 痛みが継続する
  • セックスをしている時以外でも痛む
  • 排尿、排便時に痛む
  • 生理痛が重い
などの自覚症状がある場合は、病院を受診されることをおすすめします。
  

病気ではなくても濡れにくさなどが原因で性交痛が起こるケース

もし上記のような器質的な疾患が見つからないのに性交痛を感じる場合、様々な原因が考えられます。セックスの仕方に改善点がある場合もあれば、腟や外陰部の問題、焦りや不安・落ち込みなどの精神的な問題がある場合もあります。特に多い性交痛の原因は「濡れない」「濡れにくい」というものです。
 
治療が必要な病気ではなくても、セックスのたびに痛みを我慢し続けて、「痛いから嫌だな……」と思ってしまうと、余計に濡れにくくなったり、腟が収縮してさらに痛くなってしまったりしまいます。また、痛みを我慢し続けることで、セックス自体が苦手になってしまったり、パートナーへの愛情が薄れてしまったりするケースもあります。
 
性交痛の改善には女性だけではなく、男性側の理解や配慮も必要です。痛みがある、違和感があるといった悩みは2人で共有し、痛く感じないように相手を思いやるセックスを楽しむ事で、より愛情を深めていきましょう。感じにくさや濡れにくさに悩んだ時には、うるおい不足をサポートするローションやゼリーを活用するという方法で痛みのない気持ち良いセックスを二人で楽しみたいですね。
 
もしも
  • 我慢できないほどの痛みがある
  • 濡れているのに痛い
  • 腟の奥や下腹部が痛い
といった症状が続き不安な場合は、やはり医師の診察を受けて性交痛を改善するのがおすすめです。
 

性交痛の治療法・改善法

性交痛の原因にもよりますが、病院で行う性交痛の治療法としては、女性ホルモン補充療法があります。更年期障害の治療薬として保険適応です。
 
また、性交痛の改善のためには、まずは無理をしたり我慢をしすぎたりしないことが大切。自分でできる改善法として、ローションやジェル、サプリメントなどを使ったセルフケアを選ぶ人も増えています。
 

性交痛で病院を受診する場合は何科を受診すべきか

当院はペインクリニックで性交痛外来を開設しています。一般的には、産婦人科を受診するべきでしょう。女性外来を設けている泌尿器科などもお勧めです。
 

現在セックスによる痛みに悩んでいる方へ

性交痛外来では挿入に伴う痛みを治療しています。性交痛にはいくつかタイプがあるのですが、更年期以降、女性は濡れにくくなり、挿入時痛を発症する人が増えていきます。当院で行った調査でも更年期以降の女性2人に1人が性交痛を感じていることがわかりましたが、これまでの日本社会では、中高年以降の性の情報が極めて少なく、特に女性の性交痛はなかったことのように蓋をされてきたのではないでしょうか。
 
当院の性交痛外来では、明るくローションの使用を指導しています。Dケア(デリケートゾーンケア)、セルフプレジャー指導、ローション指導は、性交痛外来にとってとても大切な指導だからです。

女性の中には購入することも恥ずかしい、と感じる方もいらっしゃいます。確かにローションだけで性交痛を完治することは難しいのですが、有効なアイテムの一つです。パートナーとのセックスでいきなり使用するのには抵抗がある方は、まずはセルフプレジャーで試してみる方法もおすすめです。私は研究の一環としてネットでローションを取り寄せて、どの使い方がいいか、お湯で溶いてみて粘稠度を調べたり、各社の味を比べたり、独自の研究を進めています。
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自分の身体は、自分のものです。主体性を持って、自分が気持ちいいと感じる自由な快感を求めることは、ごく自然なことです。人に相談しづらい悩みだからこそ、性交痛解消のために、ローションなどのアイテムを上手に活用していくことも、方法の一つです。
 
セックスは、感じたことを伝え合うことで安心と信頼感がうまれ、より強く感じあえます。しかし、痛みはパートナーには見えません。もっと愛したいと願っても、痛みが気持ちに水をさしてしまう場合もあるのです。性交痛にお悩みの方は、まずは自分に合う性交痛の改善方法を知ることで、より自分らしい気持ちよさを追求し、愛を深め合うことにつなげていきましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
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