「日常」が始まってホッとする……
お正月は他のイベントより、ずっと「家族でいること」が強いられる日々かもしれない。家族で帰省した人もしなかった人も、いろいろ「もやもや」しているだろう。日常生活が戻ってホッとしている妻たちは多いようだ。
ケース1. 帰省を子供のインフルでドタキャンしたら……離婚の危機!? リオさんの場合
思いがけなく離婚の危機を迎えかけたのは、リオさん(39歳)だ。5歳年上の夫と結婚して10年。8歳のひとり息子がいる。本来なら夫の実家に帰省するはずだったが、年末、息子がインフルエンザにかかってしまい、帰省は見送った。
「私は心の中で、息子よ、よくやったと思っていました(笑)。だって夫の実家に帰省したらお金はかかるし、ひたすら台所で手伝い続けなければいけないし。帰省しなくていい立派な理由ができたのでうれしかったですね」
ところが夫はへそを曲げたまま。ひとりで帰ればいいとリオさんは言ったが、夫としてはあくまでも家族そろって自分の家に戻りたいらしい。結局、自宅に残って3人で正月を過ごした。
「ところが元日の夜、夫が突然、『本当はオレの実家に帰らずにすんでホッとしてるんだろ』と難癖をつけてきた。まあ、本当のことですから、正直に『そりゃ、夫の実家に行きたい妻はいないでしょ。家政婦のように働かされるし』と言ってしまったんですよね」
そこから夫が「きみは冷たい」などと言いだし、それを言うなら私の実家に対するあなたの態度も同様とリオさんが言い返すなどいつしか言い争いになっていった。
「結局、ふたりとも自分の実家にもっと寄り添ってほしいという気持ちは同じなんだなと私は客観的に思ったんですが、夫としては『妻が夫に従うのが当然』と思っている。今度は私がそこを突き始めたので夫が激怒、お正月はずっとけんかをしていました。このまま休みが続くと、離婚しようという意見だけが合致しそうな雰囲気になっていました。ただ、話を詰める前に休日が明けたので、なんとなくなし崩しになった感じです」
共働きの忙しい日々が戻った瞬間、夫婦関係も以前と同じように少しずつ譲り合い、協力しあう態勢も戻った。休みがあと数日あったら関係はもっと険悪なものになっていったに違いないとリオさんは言う。
ケース2. 夫婦がそれぞれの実家へ帰ることにした、ショウコさんの場合
夫婦がそれぞれの実家に戻って正月を過ごすという実験的な試みをしたのはショウコさん(43歳)。12歳と10歳の子にはどちらへ行きたいか選ばせた。「おとうさんとおかあさんは、お休みが一緒にとれなくて両方のおじいちゃんの家には行かれない。きみたちはどちらを選んでもいいんだよ、と。すると上の娘は私と一緒に、息子は夫の雰囲気などを鑑みて場を読んだのか、『じゃあ、僕はおとうさんと』って(笑)。ちょっとかわいそうでしたけど、それぞれの実家に帰ることじたいは私は大正解だったと思っています」
ただ、夫の実家に電話をしたり義母にプレゼントをもっていってもらったりと、ショウコさんとしては心を尽くした。それでも行けば「嫁」として、より大変な思いをするため、今年は楽だったと笑う。
「私の実家の両親には、どうして息子も連れて来なかったのかと責められました。そして夫の両親は、なぜ嫁が来ないのかと怒っていたようです。夫は『次は一緒に行こうね』って。日和るなと言いたいですよね。うちはうちで、それぞれの実家へ行くスタイルでもいいんじゃないかと私は思っているので」
夫と数日間、離れていたことで、ショウコさんは心身ともにストレスなく過ごすことができた。夫がいかに日頃から自分のストレッサーになっているのかを再確認した日々でもあった。
ショウコさんにとっては、日常が戻るというのは、夫へのストレスがまたたまっていくということでもある。
「今のところは仕方がないとあきらめているところもあります。だけど今回、夫と離れてみて、いつかこうやって私にも自由な日々が来ることは確信できた。日常生活に戻ってうれしいわけではないけれど、子どもたちが巣立つまではがんばろうと少しだけ新たな気持ちになりましたね」
ストレスはあっても日常が続けば、いつか子どもは大きくなっていく。そして子どもたちが成人したとき、自分には自由を選択する権利ができる。ショウコさんはそう考えているのだそう。
さまざまな正月休みを経て、女性たちはいっそう強くなっていくのかもしれない。「今の家族のありよう」を永遠の形だとは思わず、変化のひとつだととらえている女性たちが増えているのではないだろうか。