メディアに取り上げられてはいるものの、まだまだ知られていない男性更年期。本人も「更年期」とは自覚していないことが多々あり、周りからは「怒りっぽくなった」「暗くなった」と敬遠されてしまいがち。
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どこか上の空、夫の様子がおかしい

「ちょうどコロナ禍になったころから、夫の様子がなんだかおかしいとは思っていたんです」

そう言うのはルリコさん(49歳)。夫は6歳年上、結婚して20年になる。

「夫はものすごく子煩悩で、遅く帰っても、当時、高校生と中学生だった子どもたちと話すのを楽しみにしていました。子どもたちも『もう、明日、試験なんだから邪魔しないでよ』と言いながらも夫との団らんを楽しんでいた。そんな夫が、子どもに話しかけられてもどこか上の空という状態が続いたんです」

調子が悪いのかと聞いてみても、「いや、大丈夫」と言う返事。心配ごとがあるなら話してねと言うと「うん」と素直に言うものの、やはり浮かない様子が続く。

「コロナ禍が進んだ一昨年夏前だったかな、仕事には行っているけど、残業も飲み会もほとんどないから定時で帰っては来る。でもあまりしゃべらないし食欲もなさそう。このままではいけないと病院に行くことを勧めたんです。不眠もひどかったみたいで、夜中にふと目を覚ますと、夫がベッドに腰掛けてぼうっとしていることがあったんです。それを見たら、この人、大丈夫かしらと怖くなりました。近所のかかりつけの医院から大きな病院を紹介されて、あちこち検査したけど大きな病気はなくて……。結果は男性更年期でした」

男性更年期とは、加齢による男性ホルモン(テストステロン)の減少によって引き起こされる症状のこと。女性の場合は閉経前後、女性ホルモンが激減してホットフラッシュが起こったり精神的にも不安になったりする。男性更年期も似た症状なのだが、テストステロンは20代をピークに徐々に減少していく。40代後半以降、加齢やストレスなどから急激に減少することがあると心身のバランスが崩れて変調をきたしてしまう。

男性機能の低下、頭痛やめまいといった身体症状、無気力、イライラ、性欲減退などの精神症状があらわれることもある。

「夫の場合、テストステロンがかなり減少していたみたい。やはりコロナ禍で仕事がうまくいかなかったり、人と集えなくなったりしたことが男性ホルモンに悪影響を及ぼし、更年期症状に拍車をかけたらしいです」

医師と話し合って、テストステロンを少し補充してみることになった。同時にウォーキングなどの軽い運動を取り入れて様子を見た。しばらくすると気分が軽くなったようで、以前のように子どもたちと話す時間が増えた。
 

妻から勧められて受診する男性は多い

更年期症状が出ると生活習慣病のリスクが高まることも知られている。テストステロンはそれだけ男性にとって重要なホルモンなのだ。医師からそれを聞いたルリコさんの夫はウォーキングに少しランニングも取り入れて筋力をつけるようにした。筋肉がつくとテストステロンが増加するからだ。

「最近、ようやく体調が落ち着いてきたみたいです。夫自身も、男性更年期についてはよくわかっていなかったみたい。私も自分の更年期のことは気にしていましたが、男性にも実際にいろいろな症状が出るんだと初めて知った。でも病院に行くことを勧めてよかったと思っています」

実際、妻から勧められて受診する男性は多いという。更年期を疑ったら、総合病院であれば泌尿器科で検査が可能だ。

「私は最初、うつ状態なのかなと思ったんです。男性更年期とうつは見極めがけっこうむずかしいんですって。だからこそちゃんと診てもらったほうがいいですよね。夫の場合、確かに気分は沈んでいたけれど、倦怠感や集中力のなさに自分でも嫌になっていたそうです。ただ、コロナ禍ということもあって、自分ががんばらないからだ、情けないと感じていたみたい」

年齢を重ねれば、女性も男性も更年期による不調に陥ることはあり得る。症状は個人差が大きいし、周りと比べるものでもない。自己判断で大丈夫だと決めつけたり、もっとがんばらなければと無理をしたりするのは禁物。

「夫も私も、最近では『年齢を受け入れたほうがいいね』と話しています。まだ若いと思っていても体は正直なんですよね。受け入れてしょぼくれるのではなく、受け入れた上で運動したり食事に気をつけたりしながら、少しでも老いを遅らせる。そんな向き合い方をすればいいんじゃないか、と」

40代半ばを過ぎたら女性も男性も、更年期を意識したほうがいいのかもしれない。不安を募らせるより賢く対処していくことが重要だ。


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