韓国人元アイドルの遺書に思う、「自分を愛する」って?
韓国の元アイドルグループ『KARA』メンバーだったク・ハラさんが自ら命を絶った。遺書めいたメモには「自分を愛せなくてごめんなさい」と書かれていたという。痛々しい言葉である。
「自分を愛せなければ人も愛せない」
生き方のヒント的な本には、よくそんな指南がある。だが、自分を愛せなくて苦しんでいる人はたくさんいるし、自分を愛せなくても生きていけることもあるのではないだろうか。
親との関係、失恋……自分を好きになれなかった
自分を愛せないのはなぜなのか。逆に、自分を愛するというのはどういうことなのか。自撮り写真をたくさんアップしていて、「いかにも自分大好き」であろう人はよく見かけるが、彼らは本当に自分を愛しているのだろうか。そう考えていくと、自分を愛することがどういうことかわからなくなっていく。
「私は母からの過保護、過干渉に苦しんできました。母の口癖は、『あなたはひとりじゃ何もできないんだから』『本当にダメな子ね』。そして母がすべて先回りして世話を焼く。おかしいと気づいたのは大学に入ってからでした。それがイヤで社会人になってからひとり暮らしを始めましたが、東京の家賃は高すぎる。忙しさもあって、この時代に栄養失調で倒れてしまったんです」
そう言うのはカホルさん(32歳)だ。実家に戻り、「やっぱりひとりじゃ何もできなかったね」と言われたとき、母を真剣に恨んだという。
「それなら結婚して早く家を出ようと思いました。27歳のとき、職場の男性とつきあうようになったんですが、何かあると私が『どうせ私はダメだから』と言っていたみたい。自分では気づかなかった。彼に『自分のことが嫌いなの?』と聞かれて初めてわかったんです」
結局、彼とはうまくいかず、彼女はひとりに戻った。
愛せなくても認めることはできる
その後、彼女は再度ひとり暮らしを始めた。自分で自分の生活をきちんとマネジメントし、精神的に自立していこうと決めたのだ。
「友だちに、『自分のこと愛してる?』と聞きまくったりもしました。考えたこともないという人もいれば、自分のことなんて大嫌いという人もいておもしろかった。自分のことが嫌いだと言った友人は、他人にはとてもやさしいんですよ」
世間で「自分を愛せない人間は他人も愛せない」といわれているのは、少し違うなと彼女は実感したという。
「29歳のときに知り合った彼ともそういう話をしました。彼は他人を否定しないタイプだけど、『自分のことが好きとか嫌いとか思ったことはない。自分は自分、それだけでいいんじゃない?』と。それを聞いて目から鱗が落ちました。自己愛って、強すぎてもいやらしいし弱すぎてもいけない。私は私。それ以上でもそれ以下でもない。そう思えばいいんだと開き直れたんです。その後、母にも『私は私。私はおかあさんではないから、私の人生を歩く』と宣言しました」
彼女がたどり着いた「自分を愛すること」の意味とは
ものごとをシンプルに考える彼との出会いで、彼女は「自分を愛すること」の意味を初めて納得することができた。
人間には長所もあれば短所もある。長所が短所になることもあれば、短所が長所に転ずることもある。自分の一部分は好きでも、他のところはイヤだと思うこともあるだろう。全面的に「自分を愛する」のは、理想論に過ぎない。人はなんとか自分自身と折り合いをつけて生きているものなのではないだろうか。
カホルさんは現在、彼と一緒に住んでいる。シンプルな彼とは言いたいことを言い合い、何でもシンプルに解決していく。
「私は私、彼は彼。そう思っていると気が楽です。自分を愛しているかどうかはわからないけど、自分のことも彼のことも尊重はしたい。そっちのほうが重要かな」
紆余曲折を経て、そこへたどり着いた彼女の言葉が重い。