41歳、独身。人生に疲れました
結婚、仕事、恋愛、友だち、趣味……人生にはさまざまな楽しみと苦悩があるが、「もうすべてから降りました」と言うアラフォー女性たちが少なくない。
非正規でしか働けない
「大学を出て入った会社で、ひどいイジメに遭ったんです」
ヨウコさん(41歳)は、そう言ってため息をついた。彼女が配属されたチームは女性の先輩が4人、男性が2人。トップも女性だった。
「女性の先輩が4人つるんで、トップの女性を突き上げ、男性たちと私にばかり仕事を回す。新人なのに夜11時くらいまで働かされました。トップの女性もかばってはくれなかった」
夏過ぎには心身共に不調となり、秋には退職した。そこから半年、病院に通ってようやく社会復帰しようとしたが、なかなか仕事が見つからなかった。しかたなく非正規で働くようになる。
「いつか正社員になれるかも、いつか結婚するかもと思いながら、あっという間に時間がたってしまいました」
何もしなかったわけではない。非正規で働きながら、他の会社の中途採用にも積極的にアプローチしてきたし、30歳になると結婚相談所にも登録した。
「親がうるさいから結婚相談所に登録したんです。私自身は、どうしても結婚したいというわけではなかったけど」
自分が脱落しているような気がして、学生時代の友だちとの集まりにも顔を出すことができなかった。
「何だか人生、うまくいってないなあと思うようになりました」
介護要員となってしまった現在
ヨウコさんには3歳離れた妹がいる。妹は高校を卒業して専門学校に通い、そこで得た技術を生かして就職した。仕事で知り合った同い年の男性と28歳のとき結婚。今では仕事をしながらふたりの子を育てている。「私から見ると、人生、うまくわたった子ですね。その妹が『おねえちゃんのことは恥ずかしくて人に話せない』とよく言っていました。別に悪いことをしたわけではないのに……。親も妹の結婚式には出なくていいみたいな言い方をして。頭にきたから出なかったんです、本当に」
そこで家族との関係は崩壊したとヨウコさんは思っている。両親とはずっと同居しているが、妹の結婚を機にほとんど会話もなくなった。
だが1年前、定年後も働いていた父が倒れ、入院した。母親も看病疲れで体調を崩し、圧迫骨折が見つかった。そうなると一気に家のことがヨウコさんの肩にかかってきた。
「仕事をしながら父の転院先を探したり、家で療養している母の食事の支度をしたり。妹は以前は母を頼ってよく来ていたんですが、両親が倒れてからはまったく寄りつかなくなりました。私も彼女に頼るのは悔しいので連絡はとっていません」
父の転院先は決まったが、母は相変わらず療養中で心身ともに弱ってきたため、やたらとヨウコさんを頼りにするという。
「今さらと思いますが、誰かがやらないといけないから私がやるしかないんですよね。もう恋愛も結婚もできないし、仕事もこのままだろうし。先に何の希望もありません」
ヨウコさんの表情は暗い。母をなんとか地域の支援センターにつなげたいのだが、母は他人が家にくることを極端に嫌う。
「私の一生、これで終わるのかなと思うと本当に精神的にきついです。逃げ場がない。よく寝たきりの親を殺す人の話を聞きますが、気持ち、わかります」
それでもなんとかしないといけないと思ったのだろう。その後、彼女は母親をなんとか自治体につなげ、要介護3となったと報告してくれた。
ひとつずつ解決していけば、彼女自身にも先の希望が見えてくるかもしれない。それを心から願うしかなかった。どんなに一生懸命がんばっていても、今の世の中は落とし穴だらけなのだ。