切手収集

もうすぐ70年を迎えるロングセラー「前島密1円切手」

郵便局では日本郵便の父、前島密の図案の1円切手が販売されています。実はこれ、昭和から変わらずに使われ続けている唯一のデザインなんだとか。切手収集家の板橋さんが、「前島密1円切手」にまつわる奥深い歴史について教えてくれました。

板橋 祐己

執筆者:板橋 祐己

切手収集ガイド

 
前島密1円切手と郵便局のレシート

切手、葉書という名称をつけたのも、郵便の父と呼ばれる前島密
 

郵便局で販売されている1円切手には日本郵便の父、前島密の図案が採用されています。このデザインになったのは郵便創業80年にあたる1951年4月のこと。書体や国名表記などマイナーチェンジはしたものの、昭和の切手デザインが令和まで継続した唯一のものです。

2019年の消費増税に伴って、値上がりしたはがきと書簡の差額分に1円切手が使われる機会も増えています。今回は長い歴史のある「前島密1円切手」についてご紹介します。

   

現在の1円切手はフランス製

前島密1円切手のフランス・カルトール社銘版部分

前島密1円切手のフランス・カルトール社銘版
 

2019年11月時点で販売されている1円切手は、2015年2月2日発行の切手です。当初は国立印刷局印刷製造の、凹版印刷の一種であるグラビア印刷でした。しかし、フランスのカルトール社が競争入札で落札したため、2017年12月上旬から流通し始めた1円切手は、凸版印刷からブランケットに移して紙へ転写するドライオフセット印刷となりました。

ルーペを使えば判別できるので切手収集家は区別して収集しますが、 両者は同図案のため郵便局では2015年2月2日発行の同じ券種として扱っています。

 

なぜ前島密が切手図案に残り続けるのか

可愛らしい郵便切手が登場するなか、1円切手だけは68歳頃の前島密の写真図案が使われ続けています。1871年の郵便創業当時、彼は地方の有力者たちの自宅などを郵便局として提供してもらい、いわば国家事業のフランチャイズとして郵便局のネットワークを全国展開させました。

このような功績から、現在でも1円切手の図案はそのまま使われています。前島密の伝記『鴻爪痕』を読むと、インターネットやICT技術の発展にも通じる議論が見られ、その先見性に驚かされます。
切手に登場した前島密像と関東大震災前の逓信省本庁

前島密像(前島密切手の第1号)と関東大震災前の逓信省本庁 郵便創業50年記念3銭切手1921年発行
 

前島密は政府や財界の中心にありながら、偉ぶらずに素朴で質素な生活を貫いていました。新潟県上越市の生家跡「前島記念館」の近くには彼の書画が伝わる家も多く、地元の人と気さくに交際していた様子が伺えます。

こうした姿勢が郵政人の美徳にも通じ、郵便局のシンボルとして生き続けているのです。郵便局に出かけることがあれば、いつもの切手に加えて、「前島密1円切手」を購入されてはいかがでしょうか。

 

DATA
日本郵便 | 前島密1円切手
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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