2019年の消費増税に伴って、値上がりしたはがきと書簡の差額分に1円切手が使われる機会も増えています。今回は長い歴史のある「前島密1円切手」についてご紹介します。
現在の1円切手はフランス製
2019年11月時点で販売されている1円切手は、2015年2月2日発行の切手です。当初は国立印刷局印刷製造の、凹版印刷の一種であるグラビア印刷でした。しかし、フランスのカルトール社が競争入札で落札したため、2017年12月上旬から流通し始めた1円切手は、凸版印刷からブランケットに移して紙へ転写するドライオフセット印刷となりました。ルーペを使えば判別できるので切手収集家は区別して収集しますが、 両者は同図案のため郵便局では2015年2月2日発行の同じ券種として扱っています。
なぜ前島密が切手図案に残り続けるのか
可愛らしい郵便切手が登場するなか、1円切手だけは68歳頃の前島密の写真図案が使われ続けています。1871年の郵便創業当時、彼は地方の有力者たちの自宅などを郵便局として提供してもらい、いわば国家事業のフランチャイズとして郵便局のネットワークを全国展開させました。このような功績から、現在でも1円切手の図案はそのまま使われています。前島密の伝記『鴻爪痕』を読むと、インターネットやICT技術の発展にも通じる議論が見られ、その先見性に驚かされます。 前島密は政府や財界の中心にありながら、偉ぶらずに素朴で質素な生活を貫いていました。新潟県上越市の生家跡「前島記念館」の近くには彼の書画が伝わる家も多く、地元の人と気さくに交際していた様子が伺えます。
こうした姿勢が郵政人の美徳にも通じ、郵便局のシンボルとして生き続けているのです。郵便局に出かけることがあれば、いつもの切手に加えて、「前島密1円切手」を購入されてはいかがでしょうか。
DATA
日本郵便 | 前島密1円切手