アラフィフ～バブル世代の恋愛観
40代後半から50代前半をアラウンドフィフティという意味でアラフィフというが、バブル時代を体感したかどうかで、恋愛観にも大きな差異があるのではないだろうか。バブルを知っているアラフィフたちに話を聞いてみた。
今も「ディスコ」で踊って……
バブル絶頂期の80年代後半に20代前半を過ごしたコズエさん（54歳）。大学時代からアルバイト先では先輩たちに奢られまくり、大手企業に就職すると毎週末をディスコで過ごした。
「なんだかわからないうちにバブルに飲み込まれていた感じですね。ただ、楽しかったのは事実。ディスコに行ってもだいたい誰かが奢ってくれたし帰りも誰かが送ってくれた」
彼女は今も、復活したバブル時代のディスコへ行って踊っている。「あのころ」の服も持っていて今も着られるというからすごい。
「同世代が集まって話していると、今といちばん違うのは恋愛観のたくましさですね。私はバブル崩壊直後に結婚して、ひとり娘が独立したところですが、彼女たちは恋愛に消極的。もっと人生を楽しめばいいのにと思います」
コズエさんは復活ディスコで知り合った男性と恋に落ちたこともある。周囲の友だちには心配されたが、恋に溺れはしたものの、自分を見失うことはなかった。
「自分の恋の始末くらい自分でつけられますから。相手にも奥さんがいて疑惑をもたれたんです。私は奥さんに待ち伏せされて殴られて……。かなりドロ沼でしたけど、私は最後まで認めず、彼に別れを告げました。認めなかったのは逃げたわけではなくて、奥さんの気持ちを考えたから」
本気で好きだったから、彼女自身も不本意な終わり方に落ち込んだ。だが、「恋愛って、そういうものでしょ」と自分に言い聞かせるように言う。
「始まりはお互いの合意が必要だけど、終わりは一方の気持ちで決まる。合意は必要ないんです。恋愛ってお互いの心だけで成立する理不尽なものだから」
だからこそ恋は楽しいとも彼女は言った。
「バブル時代は、一夜の恋なんかもよくしました。明らかに過ちというのもあったけど（笑）。ただ、そういうことを経て、自分で自分の気持ちを整理するのがうまくなったような気はしますね」
恋愛以上の楽しみはない
バブルを知る女たちは、バブル崩壊も知っている女たちだ。「にわかで起業した人とか、バブル崩壊とともにいなくなった人たちがたくさんいました。実は当時つきあっていた彼も、バブル崩壊後、会社がたちゆかなくなって実家に帰ってしまったんです」
そう言うのはマキさん（53歳）だ。8歳年上の彼は東京の一等地に事務所を構えていたが、「人材関係の仕事とは聞いていたけど、実態は何をしていたのかよくわからなかった」という。
「なのになんだか金回りがよくて。私とつきあいながら他の女性とも遊び放題。当時の私としてはつらい恋でした」
それでもクリスマスイブを一緒に過ごせたから、私が本命に違いないと自分を慰めたりもした。
「バブル崩壊で彼が行方不明になって、その後、私はごく普通の結婚をしました。子どもが生まれたころ、彼から連絡がきたんです。最終的に実家にたどり着いた、と。やり直したいと言われたけど私は返事をしませんでした。何度か連絡は来ましたね。彼はまだあのころをひきずっていると感じた。私は新たな道を歩んでいるのにね」
女は変わり身が早い。よくいえば適応能力が高いのだ。マキさんはふたりの子を育て、自らも新たな資格を得て、仕事と家庭を両立させながら楽しんでいる。
「ナイショだけど、最近、10歳年下の彼ができて。彼にも家庭があるからオトナの関係です。結婚と恋愛は別ですからね。この年になると、もう最後の恋愛だと思うんです。恋愛至上主義って年下の友人からはバカにされるけど、それのどこが悪いのよって思う。恋愛ほど楽しいことはこの世にないと思うから」
あっけらかんとした彼女の笑顔が、いい意味でしたたかでたくましい。バブルを知る女たちは、その下の年齢の女性たちに比べて欲張りだ。自分の欲を隠さない。すがすがしささえ感じられる。
