中高生でも珍しくないピル服用……高校生までは大半が保護者と受診
「〇〇ちゃんも飲んでるらしいよ!」 もし子供にピルを飲んでみたいと相談されたらどうすべきでしょうか
親と一緒にピル処方のために受診される場合、服用目的は、月経移動や月経痛の緩和などが中心です。一方で、避妊目的でピル服用を希望されている場合は、親と一緒には受診しないケースが多く、親には内緒にしたいから全ての診療を自費で……と希望されることもあります。
海外ではピルが無料の国も……日本でのピル使用率はわずか4%
ピルを服用できる生殖年齢において、日本のピル普及率は非常に低く、女性の約4%です。これはドイツやフランスに比べると10分の1です。海外では、10代向けのクリニックや日本でいう大学の保健センターのようなところである「ユースクリニック」で、ピルが無料で手に入ったりします。海外留学中にピルと出会って、帰国してそのままピルを継続希望と受診なさるケースは結構あります。海外でピルの服用を始められた患者さんの場合、(学生さんの場合に限りですが)ピルは非常に安価または無料で手に入るものというイメージになるためか、皆さん、日本に戻られてからピルの値段に驚かれます。
中高生の多様なピル服薬の理由……避妊目的ではない様々なメリット
「ピル」と聞くと避妊目的のイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、中高生が純粋に避妊だけの目的でピルを希望されるケースは、まだ非常に少ないです。主に、月経不順の治療・月経痛の緩和・過多月経の改善・月経前症候群の改善・月経移動などの目的で服用されます。ひどい月経痛があって、検査したら内膜症が見つかり、治療のためにピルを服薬されているケースもあります。また、中学3年生や高校3年生の方が、受験が終わるまでピルで月経をコントロールしておきたいという目的で処方を希望されることも増えてきました。
ピルの効果は、避妊だけではないのです。上記のように、
- 月経に関する様々なトラブルの改善
- 過多月経による貧血の改善
- ホルモン異常によるニキビの改善
- 将来的な内膜症や不妊の予防
- 卵巣がんや子宮体がんの予防
中高生のピル服薬の安全性・副作用・親が注意すべきポイントはあるか
10代の場合、例えば先天的な心臓疾患があるとか、遺伝的に血栓症リスクがあるといったケースを除ぎ、ピルによる重篤な副作用が起きることは非常にまれです。大人の場合は喫煙習慣があるためにピルを処方できないケースもありますが、中高生ではそれもありません。10代でピルの禁忌として引っかかってしまうとしたら、前兆を伴う片頭痛がある方です。10代でもひどい片頭痛の方はいらっしゃり、この場合はピルが処方できません。
ピルの副作用として一番多いのは吐き気ですが、飲み始めに見られることが多く、1~2週間継続するうちにほとんどの方は症状がなくなります。その他に、不正出血・頭痛・むくみ・だるさ、などが飲み始めに見られる場合があります。
親が注意するとしたら、これらのマイナートラブルが飲み始めに出ていないかを気を付けてあげることくらいです。本人が自分の意志で決めて、自分の意志で飲むことが重要なので、むしろ親があれこれ口を出さないようにしましょう。
中高生の娘がピルを服薬を望むとき、母親がすべき対応は?
ピルの効果や副作用については、医師から客観的に伝えた方がいいので、本人がピルを飲みたいと言ったら「まずは婦人科で相談してみよう」と言うのがベターです。婦人科は、いきなり内診したりしない病院を、親がセレクトしてあげる必要があります。親から避妊について言われることに抵抗がある人も多いと思いますので、避妊や性感染症についても医師から説明してもらった方がいいでしょう。また、「ピルは副作用がある」「ピルは太る」「危険な薬なのでは?」「遊んでる人が飲むもの」などピルに対して誤解している方もまだいらっしゃいますので、これらの自分の思い込みも含めて親の価値観や偏見を伝えることは、絶対にしない方がいいです。ピルの服薬について親に相談したり伝えたりするということは、本人は勇気をもって言っているので、まずは自分の体のことをきちんと考えて、自らピルという選択をしたことを認めてあげることが重要です。もし、親がピルに対してよい印象がないのであれば、まずは自分が正しい知識を身につけてから子どもと会話しましょう。
また、診察室に親がついてくることを嫌がる方もいらっしゃいます。あらかじめ、一緒に診察室に入っていいか、医師との話は本人とだけの方がいいか、本人に確認しておいた方がいいでしょう。婦人科系のトラブルがある10代の方で、一番多いパターンが、本人の意志を確認せずに親が一緒についてきて、医師の質問に対してもほとんど親が答えてしまうパターンです。このような対応は、娘のことを「一人の自立した大人の女性」として信頼して扱っていないということになり、それが婦人科のトラブルにつながっていることも少なくありません。