加齢性難聴とは……早い人は40代から耳の聞こえに変化

きこえにくい

60代から顕著になる加齢性難聴ですが、40代から進行する人も……。耳のきこえが悪いと感じたら、注意が必要です

会議や友達との会話などで聞き返すことが増えた、雑踏の中でアナウンスが聞き取りにくくなった……。明らかに聞こえないわけではないけれど、何となくきこえが悪くなったと感じることはありませんか? もしかしたらすでに加齢に伴う難聴が始まっているかもしれません。

加齢性難聴は一般的に老人性難聴と言われることもあり高齢者のものだと思われがちです。たしかに一般的には60歳代からが顕著に増える症状ですが、早い人ですと40代から徐々に難聴が進行することもあります。いずれにしても、誰でもいつかは直面する問題なのです。
 

難聴の原因……なぜ年を取ると耳が遠くなるのか

そもそも「きこえ」とはどのような仕組みによる機能でしょうか。音はまず耳に入ります。これは「聞く」になります。英語で言えば「hear」ですね。耳に入った音は次に脳で「聴く」ことになります。漢字を見てみると「十四の心の耳」で聴くとなり、単に耳で「聞く」とは意味合いが異なってきます。英語で表わすと「listen」となり助動詞のtoが入ります。toが入るとそのあとには必ず名詞が入ります。「listen to voice」「 listen to music」など、つまり受動的に聞くのではなく、能動的に聴き入ることとなります。

さらに音は脳に入ると最初に脳幹という場所を通過します。脳幹とは意識とは関係なく生命のコントロールセンターであり、飲み込む(食べる)、呼吸する、睡眠などの自律神経と密接に関係しています。

次に音はいよいよ大脳に到達します。その前に大脳辺縁系というところと密接に情報交換します。ここは、よろこび、不安、うつ、不眠、ストレスなどを司る「扁桃体」と記憶の倉庫である「海馬」がある部分で、とても重要です。

突然ですがみなさんはコオロギが鳴いたら何を想像しますか? 日本人なら大抵の人は「ああ、秋だな」と感じることが多いと思います。これに対して海外の方は、ただのnoise(雑音)と感じることがほとんどのようです。この違いは扁桃体と海馬の関係しており、同じ音でも人によって捉え方が違ってくるためです。最初はただの音情報がいろいろな場所で影響をうけ最後に大脳で認知してから言語として感じることになるのです。

さて、話を戻します。難聴の原因のほとんどは耳ですが、脳ともかなり密接に関係していることがおわかりいただけたと思います。最近の研究では加齢性難聴の原因は、遺伝子と活性酸素による内耳障害ということがわかってきました。
 

難聴の予防法……個人でできることは活性酸素による内耳障害の防止

では加齢による難聴はどう予防したらよいのでしょう。年齢や遺伝子については個人の努力ではどうにもなりません。できることは活性酸素による内耳障害を防止することです。具体的には、
  • カフェインの過剰摂取をしない
  • 有機溶剤は付けない(毛染め)、吸い込まない
  • 飲酒は適度に
  • 有酸素運動を行う
  • カロリー制限をしてメタボコントロールする
  • 騒音暴露に注意(イヤホンなど大音量刺激は避ける)
  • 睡眠コントロール(不眠、無呼吸などの問題がある場合は改善する)
これらのことを意識して、少しでも内耳障害の防止につなげていきましょう。
 

難聴の治療法・治し方・対応法……適切な補聴器使用が大切

難聴の治療は大きく急性期の「突発性難聴」と、慢性期の「加齢性難聴」の2つに分けられますが、加齢性難聴は残念ながら現在の医学では基本的には治すことができません。そこで日常生活に支障を出さないための対応法として、補聴器が必要になってきます。しかし日本では補聴器が必要な人のうち、約14%の人しか使用していないという統計があります。それは補聴器の見た目や、耳にフィットする補聴器の探し方がわからないこと、高額であることなどのマイナスイメージがまだ根強いためかもしれません。

そして、加齢性難聴を含めた難聴は、ただ単に音が耳に入らないということだけではないのです。上のきこえのメカニズムでも解説した通り、耳のきこえは、自律神経や認知症など大脳とも密接に関係しています。2017年、有名な科学雑誌であるLancetに、認知症の原因の65%は遺伝子が関与しており、残りのリスクファクターは、中年期の難聴が他の病気よりもっとも関与するという報告が掲載されました。高齢化社会を迎えた今日、この問題をすべての方に知っていただき、耳のきこえから全身の健康についても考えていただければと思います。
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